調達・購買クラウドサービスの支出管理機能について解説
ビジネス・スペンド・マネジメント(BSM:Business Spend Management)は、その名前の通り「企業の支出管理」を行う経営管理手法のことを指します。
昨今のDX推進の潮流、支出の最適化(コスト削減)、内部統制基準の改訂により、調達・購買システムなどの支出管理業務のDXを進める企業が増えてきています。
内部統制基準として改訂前までは、売上、売掛金、棚卸資産に関係する業務プロセスの評価が求められてきており、調達・購買プロセス、支出管理プロセスについては対象とはなっていませんでした。
しかし、企業の経営環境の進化により、新たなリスクへの対応が求められてきており、不正リスクへの考慮の重要性、情報システムのセキュリティ確保の重要性が重視されてきています。
そのため、内部統制を強化するため、調達・購買管理システム及び支出管理機能についての導入を検討する企業が増えています。
その一方で、支出管理機能はどのようなものか、安全なのかについて疑問を持っている人も多いかと思います。
この記事では、調達・購買管理の支出管理機能に特化して、その仕組みやメリットについて解説します。
支出管理業務(スペンドマネジメント)とは
支出管理業務(スペンドマネジメント)とは、支出(支払い)に関する一連の業務プロセスです。
自社の支出を正確に把握し、業務の効率化、支出の最適化だけでなく、支払いの遅延や失念は取引先に損害を与え信用を大きく損わせるため、支出管理業務は企業の信頼を左右する重要な役割を担っています。
支出管理業務の具体的な業務内容
多くの企業では経理担当が支出管理業務を担当しているでしょう。支出管理業務は、以下の3つのステップで進行していきます。
- 請求書の回収
- 支払管理表の作成
- 振込・転記・消込
それぞれ順番にみていきましょう。
請求書の回収
発注や外部サービスの依頼といった、あらゆる請求書を集めるフェーズです。
請求書には支払いの期日や支払い方法が記載されているため、モレなく回収して期日までに手続きを踏まなくてはなりません。
支払管理表の作成
支払管理表の作成では、請求書の内容が適切かをチェックして管理表に入力します。
請求書のルールは取引先によって異なるため、情報を一元管理しておくことが重要です。
振込・転記・消込
支払管理表が作成できたら振込作業に移ります。振込作業が完了しだい出金伝票に記載、最後に取引と支払いが一致していることを確認して消込作業を行います。
以上が、支出管理業務のおもな流れです。
支出管理業務の課題
これまでの支出管理業務には、以下の3つの課題がありました。
- 業務が煩雑になる
- 人為的ミスが発生する
- 書類の管理に費用と手間がかかる
それぞれ順番にみていきましょう。
業務が煩雑になる
支出管理業務は業務フローが多く、ひとつひとつの処理が煩雑です。
請求書の回収ができていなければ担当部署に連絡したり、振込の件数が多ければ確認に時間がかかったりと、業務量が肥大化しているケースも珍しくありません。
そのため、経理担当者には大きな負担がかかっています。
人為的ミスが発生する
請求書や支払管理表に手作業で入力すると、人為的ミスが発生するのは自然な流れです。しかしミスが発覚すると、取引先に迷惑をかけてしまいます。
たとえば誤って請求書の原本を廃棄してしまった場合、取引先の経理担当に再発行を依頼することになるでしょう。お金に関するやりとりは厳しい目で見られるため、相手方からマイナスの印象を持たれる可能性があります。
書類の管理に費用と手間がかかる
処理が完了した請求書は、紙で保管すると管理と費用の手間がかかります。管理には、おもに下記の費用や環境が必要です。
- 保管ファイル代
- 保管キャビネット代
- 保管スペース
ひとつひとつの金額は小さくても、長期目線で見ればまとまった金額となるため、管理費は早期に削減すべきコストです。しかし紙ベースの資料を電子データ化するのにも費用がかかり、手をつけられていないケースもあります。
支出管理機能とは
支出管理機能とは、支出管理業務を効率化する機能です。ここからは、支出管理システムの仕組みや使い方、安全性について解説します。
支出管理機能の仕組み
まずは、支出管理機能ついて解説します。
現状は、取引先(サプライヤー)が作成した紙又はメールでの請求書ファイルを回収し、情報登録、支払いへと進みます。
一方で、支出管理機能では取引先(サプライヤー)が請求書作成機能で作成した請求書をデータで受領することができます。そのため、支払いまでの間に経理が入力する手間は不要です。また紙やPDFデータで受け取った場合でも、AI-OCR技術を利用して自動でデータ化することができます。これまで支出管理業務にかかっていた工数を大幅にカットすることが可能です。
支出管理機能の使い方
支出管理機能の使い方はとても簡単です。クラウド型であれば、インターネット上からサービス提供元のサーバーにアクセスするだけで利用可能となります。インターネット環境さえあれば、新たに設備を用意する必要はありません。クラウド型は職場以外からでもアクセスできるため、経理のリモートワーク推進にも効果的です。
また既存の会計システムを変更する手間もかからないため、自社のサーバーに新システムを組み込むよりも導入のハードルは低いといえます。
支出管理機能の安全性
支出管理機能の安全性は、大切な個人情報を預ける上で重要なチェックポイントのひとつです。多くのクラウドサービスなどの支出管理機能には強固なセキュリティが施されており、個人情報も厳重に管理されています。
一般的に、下記のセキュリティ対策に力を入れています。
- 不正アクセスの防止
- アクセスログの管理
- 通信の暗号化
- データのバックアップを実施
- 潜在的な脆弱性リスクを軽減するため、不要なサービスやアカウントの削除
- ハードウェア機器の障害対策
- 災害や不審者侵入などに対するデータセンターの物理的な対策
日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが着実に進んでおり、大手企業の導入実績も増加中です。安全性が気になる場合は、システムの資料に具体的なセキュリティ対策についての説明があるか、調べてみましょう。
支出管理機能を活用するメリット
ここからは、下記3点の支出管理機能を活用するメリットについて解説します。
- 業務を効率化できる
- 情報を一元管理できる
- 自動化により人為的ミスや不正を防止できる
それぞれ順番に見ていきましょう。
業務を効率化できる
支出管理機能を利用すると、業務を一気に効率化できます。これまで手作業だった業務の多くが自動化され、経理担当の手間がかからなくなるからです。
また金融機関との連携により、振込業務も自動化されます。クレジット決済可能なサービスであれば、品目にも制限がかかりません。
情報を一元管理できる
エクセルで情報を管理している場合は、別々のシートに情報が入力されている可能性もあり、情報の再利用には不向きといえます。しかしシステムに登録された情報は、クラウド上で一元管理できます。そのため、さまざまなファイルを開けて探したい情報を検索する手間は、一切かかりません。
また、紙のデータであれば紛失や盗難の恐れがありますが、支払管理システムであればその心配もなくなります。クラウド管理によって、データのバックアップが自動で行われていると考えると良いでしょう。
自動化により人為的ミスや不正を防止できる
入力や処理を自動化できるため、ミスなく業務を遂行できるのも大きなメリットです。また人が介入する箇所がなくなれば、不正も起こりにくくなります。
さらに支払管理システムによっては、指定した購入額以上になるとアラートで警告してくれる機能もあります。手数料の振込も最適化してくれるので、二重に支払う心配がありません。
まとめ
支出管理機能は、支払管理業務を飛躍的に効率化できるツールです。業務量に悩む企業や経理担当の強い味方といえるでしょう。是非この機会にクラウド型調達・購買システム(支出管理機能)の活用をご検討ください。