【簡単解説】検収書の基本知識から作成方法・注意点まで徹底解説
検収書とは、簡単に説明すると検収に合格したことを示す書類のことです。
検収完了後には検収書を作成し、販売者へ送付する必要があります。
しかし、さまざまな書類を作成していると納品書や受領書・領収書との違いがわからなくなってしまい、入力ミスにつながる可能性があります。
そこで本記事では、検収書の基本知識と役割について説明したうえで、ほかの書類との違いや検収書の作成方法と注意点をご紹介します。
検収書に関する業務効率化についても解説しているため、検収書をミスなく作成するのはもちろん、業務の負荷を軽減したい方もぜひ参考にしてください。
検収の基本知識とその重要性
検収書について理解を深める前に、検収の基本知識とその重要性について解説します。
一般的な流れも説明するため「検収とはなにか?」を知りたい方は参考にしてください。
検収とは?
検収とは、発注した商品やサービスが、発注時の条件(発注数量、仕様、動作状況、納期、梱包など)を満たしているかを確認する作業のことです。
具体的な内容は、以下のとおりです。
・品質保証:発注した商品やサービスが、契約内容通りの品質であることを確認します。
・トラブル防止:納品物に不備があった場合、早期に発見し、対応することで、後々のトラブルを未然に防ぎます。
・取引の明確化:検収を行うことで、取引内容を明確にし、双方の認識を一致させます。
例えば、機械のメーカーが部品を発注した場合、注文した物・サイズ・デザイン・色・数量などが間違いないか、製品に破損や不良がないかを確認します。
このように検収は、受け取ったものが内容と一致しているか、品質に問題がないかをチェックするプロセスです。
検収の重要性
検収は、企業間の取引において非常に重要なプロセスであり、バイヤー側においても以下のメリットを得られます。
○品質保証
・不良品や不適合品が市場に出回ることを防止する
・問題を早期に発見して、トラブルや被害を最小限に抑えられる
・サプライヤーへのフィードバックを通じて、将来的な品質を向上させられる
・数量不足や不良品の発生などの問題を早期に確認して、対策できる
・検収結果をサプライヤーに伝えて、製品の品質改善や納期短縮に役立てられる
○会計基準
・正確な仕入れ計上により財務状況が正しく反映される
・財務基準に準拠した正しいタイミングでの費用計上が可能になる
・支払期日を正確に管理し、キャッシュフロー管理を効率化できる
○内部統制
・検収担当者と発注担当者を分けることで不正取引を防止する
・文書を適切に管理することで監査対応をスムーズに対応する
これらのメリットにより、業務効率化・品質向上・法的リスクへの対策に加えて、企業としての信頼性向上にもつなげられます。
また、検収を通じて密に連絡を取り合うことで、サプライヤーとの関係性強化につなげられる側面もあります。
検収の一般的な流れ
検収は、以下の6つのステップで行われます。
1.納品:受注者は、発注者に商品やサービスを納品します
2.受領:発注者は、納品された商品やサービスを受け取ります
3.検査:発注者は、納品された商品やサービスが契約内容を満たしているかどうかを検査します
4.検収:検査の結果、問題がなければ検収が完了します
5.検収書の発行:発注者は、検収書を作成し、受注者に送付します
6.支払:発注者は、検収書に基づいて、受注者に代金を支払います
ただし、ERS(Evaluated Receipt Settlement)と呼ばれるシステムを導入することで、上記の流れの一部を自動化できる場合があります。
ERSについては、後ほど詳しく解説します。
検収書の概要と交付の目的
検収後に発行するのが「検収書」です。
この章では、検収書の概要と交付の目的について説明します。
また、検収書と同じような時期に発行したり混同されたりしがちな書類との違いについても解説します。
「発行する書類が多くてどれが何かわからない」とお悩みの方は参考にしてください。
検収書とは?
検収書とは、納品物が検収に合格したことの証として発注者が受注者に交付する書面のことです。
検収書に記載されている内容は、以下のとおりです。
・どのような契約に基づいて取引が行われたのか
・どのような商品やサービスがいつ、どこに、どれくらいの数量で納品されたのか
・発注した製品が問題なく検収されたのか
なお、検収書には、紙媒体のものと電子媒体のものがあり、近年では電子帳簿保存法の改正により、電子データとして発行・保存されるケースが増えています。
そのため、取引先に合わせて対応できるよう、準備を整えておくとよいでしょう。
検収書とそのほかの書類との違い
検収書と間違われたり混同されたりしがちな書類には「納品書」「受領書」「支払い通知書」があります。
どれも同じようなタイミングで発行する書類ではありますが、目的などが異なります。
納品書との違い
納品書とは、受注者(販売者)が発行する書類です。
納品した商品やサービスの内容(品名、数量、価格など)を記載しています。
検収書との違いは、発行する主体です。
納品書はサプライヤー(受注者)が発行するのに対し、検収書はバイヤー(発注者)が発行します。
受領書との違い
受領書とは、バイヤー(発注者)が納品物を受領した際に受注者に交付する書面のことです。
受領書には、受領した品目や数量、受領日時などが記載されます。
検収書との違いは、発行のタイミングと目的です。
受領書は商品やサービスが物理的に届いた時点で発行されることが多く、品質や内容の確認を含む検収が実施される前に発行されることが少なくありません。
一方、検収書は、検収が完了し、商品やサービスに問題がないことを確認した後に発行されます。
つまり、発行の順番は受領書の方が先です。
ただし、業界や企業によっては、検収完了の意味で受領書が発行されることもあります。
その場合、検収書と受領書が明確に区別されていない場合もあるため、不安なときは担当者に確認を取るとよいでしょう。
支払い通知書との違い
支払通知書とは、バイヤー(発注者)が検収完了後にサプライヤー(受注者)に支払う金額と支払い方法を通知する書類です。
検収書の違いは、発行の目的と記載内容です。
検収書は、納品物が契約内容を満たしていることを証明するため品名・数量・価格などが記載されますが、支払い通知書は、具体的な支払い金額や支払い方法が記載されます。
ただし、検収書を請求書の代わりにする場合もあり、その場合、検収書の内容を踏まえて発注者側で報酬額の計算と支払いが行われ、その内容が記載されることになります。
検収書を交付する目的
検収書を発行する目的は、主に以下の3つです。
・クレーム・トラブルの防止:検収書に署名・捺印することで、発注者(バイヤー)・受注者(サプライヤー)間の認識の齟齬(そご)を防ぎ、後々のトラブルを回避できます
・売上計上の基準:受注者側は、検収書を発行することで、売上を計上するタイミングを明確にできます
・請求書発行の省略:基本契約で「検収書の発行により、支払義務が生じる」旨の取り決めをすることで、発注者は受注者からの請求書を受け取らずに支払処理を進めることができます。この場合、受注者は請求書発行の手間を省くことができます。
検収書の作成における注意点
検収書を作成する際は、商品と記載内容の一致・数字の誤りの有無・見積書の内容との一致を確認することはもちろん、以下の2点についても注意しましょう。
・不備があった場合の対応方法を用意する
・業界や企業ごとのルール・慣習を把握する
以上の2点に注意して検収書を作成すれば、取引先相手と良好な関係を維持したまま、取引を継続できるようになります。
不備があった場合の対応方法を用意する
例えば、記載ミスなどによって再発行が求められたときなど、発行側に不備があった場合の対応方法を用意することが重要です。
信頼を失わないよう丁寧に対応するために、お詫びの文面にはどのような文言を記載するかあらかじめ決めておくとスムーズに対応できるでしょう。
お詫びの文面を作成するときには、本文に謝罪の言葉と今後の対応について記載します。
記載ミスのある書面を送ってしまっている場合は、必ず破棄を依頼しましょう。
【お詫びの文面の例】
「納品書に誤りがございましたこと、大変申し訳ございません。
つきましては、訂正した検収書を再発行し、メールに添付させていただきます。
お手数をおかけいたしますが、お手元の納品書との差し替えのうえ、誤りのある納品書は破棄していただきますよう、お願い申し上げます。」
なお、謝罪メールを送っても気づかれていない場合もあります。
メールの見落とし防止と記載ミスのある書類を破棄してもらうためにも、メール送信後に一報入れるとよいでしょう。
業界や企業ごとのルール・慣習を把握する
業界や企業によっては、検収書の内容にルールが設けられていることもあります。
例えばプロジェクト管理をしている業種の場合、プロジェクト別に分割して経理処理するために請求書を案件別に分けてもらうよう依頼を受けるケースがあります。
検収書の発行をもって請求書の発行を省略することになっている場合は、このようなケースに対応できるようにしなければいけません。
また、検収書は一般的に、企業が発行した証として押印される慣習があります。
そのため、検収書を作成する場合は押印を必ずしておきましょう。
検収書の記載項目と作成方法
検収書には、必須記載項目があります。
1つでも欠けると「不備がある」とみなされるため、記載漏れがないか確認したうえで発行しましょう。
また、検収書の作成には照合作業も必要です。
目視で確認したり、Excelやシステムを利用したりしてチェックします。
検収書の必須記載項目
検収書の必須記載項目は、以下の9つです。
・検収書発行日:検収書が作成された日付
・発注者情報:発注者の会社名・部署名・担当者名・住所・連絡先
・受注者情報:受注者の会社名・部署名・担当者名・住所・連絡先
・件名:取引内容を簡潔に表すタイトル(例:「〇〇システム開発業務検収書」)
・発注番号・発注日:発注書に記載されている発注番号と発注日
・納品期日:契約書に記載されている納品期日
・納品場所:実際に納品された場所
・商品項目:納品された商品やサービスの名称、数量、単価、金額
・合計金額:納品された商品やサービスの合計金額(税込み)
検収書は法的に要件や書式が定まっているわけではありませんが、テンプレートなどを使用するととても便利です。
必要な要件が網羅されているため、記載漏れを防止できます。
発注内容との照合方法
数量や単価などの発注内容と照合する作業を、検収照合といいます。
具体的には、自社が管理している売上明細や出荷明細と、取引先が持っている検収通知を比べて確認する作業です。
・品名:発注した商品やサービスの名称が正しいか
・数量:発注した数量と納品された数量が一致しているか
・単価:発注時の単価と納品時の単価が一致しているか
・金額:発注金額と請求金額が一致しているか
・納期:発注時に指定した納期どおりに納品されたか
・品質:発注した商品やサービスの品質が基準を満たしているか
照合の方法としては、目視で確認するアナログ的な方法から、Excelを使用してチェックしたり、システムを利用してチェックしたりする方法があります。
システムを使用することで効率的なチェックが可能ですが、最終的には目視で確認することも重要です。
特に、専門知識が必要な場合などは、担当者がしっかりと確認する体制を整える必要があります。
電子検収書の作成方法
検収書は、電子帳簿保存法で電子化が認められており、電子取引が可能な書類です。
電子化によって業務の効率化が進むほか、コストの削減も期待できます。
そのため、取引先から電子化した検収書の電子検収書を求められる可能性があることを想定し、準備しておくことが必要です。
作成するには以下の要件があるため、あらかじめ機能が備わっている専用システムを導入するとスムーズに利用が開始できるでしょう。
・真実性の確保:電子検収書が改ざんされていないことを証明するため、タイムスタンプや電子署名などの技術を用いて、作成者や作成日時を明確にする必要があります。
・可視性の確保:電子検収書の内容を、いつでも確認できるようにしておく必要があります。具体的には、検索機能を備えたシステムで保存したり、PDFなどの形式で出力できるようにしておく必要があります。
電子取引に関する詳しい要件は、電子帳簿等保存制度の特設サイトをご覧ください。
国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
検収書に関する業務の効率化
検収書の作成や発行には、購買管理システムの利用が便利です。
検収書を自動作成したり、承認フローの電子化が可能になるため、作成から発行までの手順にかかる負担が軽減されます。
また、検収データを活用したり支払いを自動化したりすることも可能です。
さまざまな業務に関する負担軽減が期待されるため、ぜひ検討してはいかがでしょうか。
検収書の自動作成
購買管理システムなどの専用システムを利用すれば、検収書を自動作成できるようになります。
システムは、発注情報や納品情報を連携させることで検収に必要な情報を自動入力し、担当者の負担を大きく軽減することが可能です。
また、システムには検収書だけでなく、発注書の自動作成や納品書の管理などを一元的に行う機能も搭載されています。
そのため、購買業務全体の効率化につながるでしょう。
承認フローの電子化
購買管理システムなどに申請・承認機能が搭載されていれば、承認フローの電子化が可能です。
電子化をすることで、以下のメリットが得られます。
・承認スピードの向上:上長が外出や出張中でも、システム上で承認できるため、承認待ち時間が大幅に短縮
・承認状況の可視化:承認の進捗状況をリアルタイムで確認できるため、どこで止まっているのか、誰が承認していないのかが一目で確認可能
・一括承認機能:複数の検収書をまとめて承認できるため、承認作業の効率が大幅に向上
・ペーパーレス化:紙の検収書が不要になるため、印刷コストや保管スペースを削減
なお、モバイル承認機能があれば、外出先や出張先でも手元で承認作業を行えるようになります。
承認にかかる待機時間が短くなるため、業務の効率化につながるでしょう。
検収データの活用
購買管理システムなどのシステムを利用すれば、検収データを分析して活用できます。
これまでどのような商品・サービスを購入したのか、納期・品質などはどうだったか分析することで、取引先を多面的かつ客観的に評価することが可能です。
また、購入時期と数量などを分析することで、時期によってどのような傾向があるかも把握でき、今後の購買計画や改善活動・不正防止対策などに役立てることもできます。
ERS(Evaluated Receipt Settlement)の導入
ERS(Evaluated Receipt Settlement)とは入庫請求自動決済と呼ばれ、購買発注情報と納品情報(検収情報)をシステム上で照合し、支払処理を自動化する仕組みです。
簡単にいえば、検収すれば自動的に支払までが完了するシステムのことです。
ERSでは、発注時の何をいくついくらで購入したかという情報と、検収時の何がいくつ届いたかという情報を照らし合わせることができます。
ERSを導入することで、以下のメリットがあります。
・請求書照合の省略:請求書と納品書を手作業で照合する必要がなくなり、業務効率が向上
・価格・数量差異の防止:システムが自動的に照合するため、人為的なミスによる価格や数量の差異を防止
・支払処理の迅速化:支払処理が自動化されるため、支払遅延を防ぎ、良好な仕入先との関係を維持
またERSは購買管理システムとの連携により、さらに幅広く購買管理業務の効率化に効果を発揮します。
購買管理との連携は、それぞれのシステムや環境によって異なるケースがあるため、ベンダーに相談して検討するとよいでしょう。
まとめ
検収は、品質保証・トラブル防止・取引の明確化という重要な目的を果たすだけでなく、企業の信頼性向上やコスト削減にもつながる重要なプロセスです。
また、検収の証拠となるだけでなく、取引先との信頼関係を築く上でも重要な役割を果たします。
正確な検収書を作成し、電子化やシステム活用によって業務効率化を図ることで、よりスムーズで信頼性の高い取引を実現できるでしょう。
検収を仕組み化してスピーディかつ正確に行うには、購買管理システムのようなシステムの導入が効果的です。
例えば「intra-mart Procurement Cloud」では、発注から検収までの購買管理の一連の業務を効率化し、工数を削減するための機能を搭載しています。
長年シェアNo1を維持していることからもおわかりいただけるように、多くの企業に導入されている国内製のシステムです。
専門性の高いスタッフがサポートしており、無料でのトライアルにも対応しているため、検収業務の改善や購買業務の効率化を検討されている企業様は、ぜひご相談ください。