相見積もりを成功させるための完全ガイド|流れと注意点をチェック
相見積もりとは、取引先の候補となった複数の企業に対して、同内容の見積もりを依頼することをいいます。
多くの企業で用いられており、適切な取引先を見つけるために重要な工程です。
この記事では、相見積もりの流れや注意点、依頼時・回答時のメッセージ例文などをご紹介します。
企業間で見積もりを取る際は、個人で依頼するときとは異なる、重要な注意点もあります。
相見積もりの担当となった方は、ぜひご覧ください。相見積もりとは
相見積もりとは、取引先の候補となった複数の企業に対して、同内容の見積もりを依頼することをいいます。
「合見積もり」や「あいみつ」と表記される場合もありますが、意味するところは変わりません。
費用とサービス内容を比較し、最適な取引先や、より有利な条件で契約できる取引先を見つけるためには欠かせない業務です。
中には相見積を取得することがサプライヤーに対して失礼に当たるのではないかと不安に感じる方もいるようですが、相見積をい取ること自体はマナー違反になりません。
ただし、良好な関係をしながら条件を調整するためには、見積の取り方や流れなど注意すべき点を押さえる必要があります。
相見積もりの種類
相見積もりを取るといっても、見積もりの内容に応じて大きく2種類に分けられます。
概算見積もりと正式見積もりについて確認し、どちらの方法で依頼をするか、方向性を決めておきましょう。
概算見積もり
概算見積もりは、おおむねの金額を提示してもらう見積もり方法です。
事業の規模感や相場を確認するために用いられることが多い傾向にあります。
ただし、概算見積もりによって提示された金額の精度は、おおむね-25~+50%とブレが大きい傾向にある点に注意しましょう。
またプロジェクトの初期段階で活用される「超概算見積もり」という見積もり方法もあります。
超概算見積もりで提示される内容はさらに大まかな内容にとどまり、金額精度は-50~+100%程度になる傾向にあります。
正式見積もり
正式見積もりは確定見積もりとも呼ばれ、正確に金額を提示するために詳細を記載した見積もりです。
作業内容・工程・単価・数量などを盛り込んで作成され、精度は-5~+10%程度と言われています。
正式見積もりは、正式な発注の一歩前の段階に依頼する傾向にあります。
相見積もりを取るメリットとデメリット
相見積もりの取得には、メリットとデメリットがあります。
さまざまなプロジェクトで相見積もりが取られている目的・メリットと、把握しておきたいデメリットについて確認しておきましょう。
相見積もりのメリット
相見積もりを取ると、下記のメリットが得られます。
- 適切な価格で契約しやすくなる
- 説明・提案の有無や、アフターサービス、レスポンスの速さを含めて検討でき、最適なサービス選択がしやすくなる
- 特定業者への不公正な発注を予防し、ガバナンス強化ができる
相見積もり時に金額を比較すれば、自社のケースにおける適切な価格帯を知り、適切な契約が可能です。
また相見積もり時の説明や提案の有無、アフターサービスの有無、担当者のレスポンスの速さなどを確認すれば、不安なく取引できる取引先を見つけやすくなるでしょう。
くわえて、社内担当者に対して相見積もりを義務化しておけば、担当者の一存による、特定業者への不公正な発注を予防できることも大きなメリットです。
相見積もりのデメリット
相見積もりを取るデメリットとして、下記の3点が挙げられます。
- サプライヤー全社の相見積もりが出そろうまでに時間がかかる
- やり取りのなかでトラブルが生じる可能性がある
- 相見積もり結果を比較・検討する時間が必要
相見積もりでは、見積もりを依頼したサプライヤー全社からの結果が出そろわないと検証をはじめられません。
そこから社内で比較・検討する必要があり、実際に契約をしてプロジェクトをはじめるまでには時間がかかります。
またやり取りをするなかで意思伝達・条件面などでトラブルが生じる場合もあるでしょう。
相見積もりを取得する場合は、コミュニケーション上のトラブルに注意しつつ、スケジュールに余裕をもって着手する必要があります。
相見積もりの流れ
相見積もりの際は、基本的に、下記の5ステップで進めます。
それぞれで着手する内容について確認しておきましょう。
- 目標を明確化する
- 企業選定をする
- 見積書の依頼をかける
- 結果を比較・検討する
- 結果を通知する
目標を明確化する
はじめに、プロジェクトでその取引先候補に期待する役割、依頼の目的について決めておきます。
依頼する物品に関連する要件を整理し、リストアップをしておきましょう。
要件を細かく設定しておかないと、相見積もりの条件が一致しなくなり公平な比較ができなくなるため、慎重に決める必要があります。
要件をはっきりさせたら、その内容を仕様書として落とし込みます。
相見積もりを依頼された取引先候補が、スムーズに内容を理解できるよう、情報を整理しておきましょう。
企業選定をする
相見積もりを依頼する企業を、複数選定しましょう。
既存の取引先のなかから選定するだけでなく、市場調査・業界情報・インターネット検索・調査会社の情報なども検討し、取引が望ましいと思われる企業を絞り込みます。
情報が少なく選定が難しい場合は、必要に応じてRFI(Request for Information:情報提供依頼書)やRFP(Request for proposal:提案依頼書)の作成も検討しましょう。
ただし、RFIやRFPを活用する場合はより多くの時間が必要になるため、スケジュールの余裕が必要です。
詳しくはこちら:見積業務・見積管理業務を効率化するには?管理のポイントも解説
見積もり書の依頼をかける
選定した取引先候補企業に対し、実際に見積もり書発行の依頼を出します。
依頼方法としては、メール・電話・FAXなどが活用できます。
複数ある手段のなかでも、情報が残る点やスピード感から、メールを用いるのがメジャーです。
結果を比較・検討する
相見積もりの結果が出そろったら、社内で内容の比較と検討をします。
その際、とくに重点的に確認しておくべき情報として、下記の3つが挙げられるでしょう。
- 金額の内訳・・・内訳の粒度、内容が重複している箇所の有無、金額の妥当性 など
- 条件の内容・・・納期・納品場所・支払期日・支払方法・特記事項 など
- 見積もり書の有効期限
金額に関しては「内訳がどれくらい細かく設定されているか」「わかりやすく明瞭か」「重複して記載されている料金がないか」などを確認しましょう。
また条件面では、自社が対応できる範囲内にあるか、特記事項としてなにがあるかをチェックする必要があります。
見積もり書の有効期限は、通常、市場価格の変動を見据えて1~3ヶ月を期限とする場合が多いものの、より短く設定するケースもあるため注意しましょう。
さらに、取引先の比較検討時には、書面の内容だけでなく、対応の印象・アフターサービスや付随サービスの有無、ディスカウント割引の有無などを確認し、総合的な判断を下す必要があります。
単独の物品では割引が適用されないものの、複数の物品を注文すると割引されるケースもあるため、多角的に検討しましょう。
見積もり結果を比較・検討するのは大変な作業ですが、購買管理システムや見積もりシステムを活用すると簡単に一覧化できる場合もあります。
効率化に進めたい場合は、ツール・システムの機能も使って進めましょう。
結果を通知する
取引先が決まったら、見積もりを依頼したすべての企業に対し、結果を連絡します。
見積もりを作成した企業は結果を待っているため、トラブルを防ぐためにも、失注企業に対しても必ず連絡しましょう。
また契約先に決めた企業に対しては、内容の認識に相違がないか、細かくすりあわせもしておく必要があります。
相見積もりの注意点
企業間でやり取りする相見積もりの場合、個人で依頼する相見積もりと同様の感覚で着手してしまうとトラブルにつながる恐れがあります。
ここでは、企業間で相見積もりをやり取りする際に把握しておきたい、4つの注意点についてご紹介します。
- 条件は細かく同一のものを設定する
- 相見積もりを依頼していることを明記する
- 交渉の際に他社の結果を持ち出すのはNG
- マナーを守ったやり取りを心がける
条件は細かく同一のものを設定する
相見積もりを依頼する際は、あらかじめ細かな要件を決めておく必要があります。
取引先候補となる企業すべてに同じ条件で見積もりを出してもらわなければ、公正な比較ができなくなってしまうためです。
また質問事項のやり取りをせずに済むよう、どの物品(種類・色・型番など)をいくつ、いつまでに、など詳しく明記しておきましょう。
相見積もりを依頼していることを明記する
相見積もりを依頼する場合は、はじめに「相見積もりを依頼している」「複数の企業へ見積もりを依頼している」ことを明記する必要があります。
相見積もりとして依頼していることをあらかじめ知らされていない場合、不快に思う担当者もいるため、必ず断りを入れましょう。
交渉の際に他社の結果を持ち出すのはNG
個人で相見積もりを取ったときには、他社の見積もり結果を材料に交渉する方もいらっしゃるでしょう。
しかし、とくに企業間でやり取りする場合は、望ましくないため避ける必要があります。
見積もりを提出した企業にとっては、勝手に他社へ単価・作業料を流出させられた形になり、情報管理面で信用を落とす行為となってしまうためです。
また他社の見積もり結果を提示して値下げ交渉をする場合、価格を聞いた取引先候補企業は談合をしたと判断され、罪に問われる可能性が生じます。
談合とは、入札(※)の関係者が相談して、競争せず受注価格を決めてしまうことを指すことばです。
公的機関に対し、民間企業同士で価格を相談して落札者を決めてしまうことを指すケースが多いものの、場合によっては相見積もりにおける交渉にも適用される可能性があります。
※参加者のなかから、もっとも有利な条件を提示した事業者と契約する方法
自社・取引先双方にとってリスクのある行為になるため、他社の見積もり結果には言及せず、自社・取引先候補企業の1対1で交渉を進める必要があります。
マナーを守ったやり取りを心がける
企業同士のやり取りのため、マナーを守ってやり取りする必要があります。
相見積もりを取っていることを事前に伝えたり、失注企業にも連絡を入れたりするのもその一環です。
今回は見送りとなった失注企業も、今後取引する可能性がないわけではありません。
今後の取引も見据えて、マナーを守り、好印象を抱けるコミュニケーションを心がけましょう。
相見積もりのメッセージ例文
相見積もりを依頼するにあたり、依頼時と結果通知の際にそれぞれメッセージを送る必要があります。
ここでは、依頼時の例文と失注企業へのメッセージ例文をご紹介するため、悩んだら参考にしてください。
相見積依頼時の例文
お世話になっております。 ○○会社の○○と申します。
弊社では、現在、貴社製品の△△の購入を検討しております。 つきましては、下記の条件にてお見積もり書をいただきたく存じます。
l 製品名:△△(型番:□□□) l 数量:○○個 l 納期:〇月〇日(〇時まで) l 回答期限:〇月〇日(〇時まで)
また、こちらの見積もりは複数の企業様へお送りしている点、ご了承ください。 ご多忙のところ恐縮ですが、以下の住所、私宛に見積もり書をご送付いただきますようお願い申し上げます。 何卒よろしくお願いいたします。 |
お世話になっております。 〇〇会社の〇〇と申します。
このたび、弊社で〇〇のプロジェクトを進める運びとなり、貴社製品△△の購入を検討しております。 それにともない、下記の条件にてお見積もりをいただきたくご連絡を差し上げた次第です。
l 製品名:△△(型番:□□□)、〇〇(型番:△△) l 数量:△△を○○個、〇〇を△△個 l 納期:〇月〇日(〇時まで) l 回答期限:〇月〇日(〇時まで)
本案件は、複数の同業他社にも見積もりを依頼しております。 お見積もりの内容を参考にさせていただき、改めて結果をお伝えさせていただく予定です。 ご多忙のところ恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。 |
失注企業に対するメッセージ例文
「今回は見送りになったものの、またの機会に」と、将来の取引も見据えて回答を送ります。
尽力してもらったお礼も忘れずに記載し、今後の取引も見据えたメッセージを送りましょう。
お世話になっております。 〇〇会社の〇〇と申します。
先日は、△△のお見積もり書をご提出いただきまして、ありがとうございました。 社内で慎重に検討いたしましたが、予算面の都合により、今回は見送らせていただくこととなりました。 ご多忙のなかご対応いただいたにもかかわらず、申し訳ございません。
今後またご依頼させていただくこともあるかと存じますので、そのときは、何卒よろしくお願い申し上げます。 |
お世話になっております。 〇〇会社の〇〇と申します。
先日は、△△のお見積もり書を作成・提出いただき、誠にありがとうございました。 社内で慎重に検討をいたしましたが、納期の面での調整が難しく、今回は見送らせていただくこととなりました。 ご対応いただいたにもかかわらず、申し訳ございません。
またの機会に、何卒よろしくお願い申し上げます。 |
相見積でトラブルになったときの相談先
相見積もりに際して、注意をしていても企業間トラブルに陥ってしまう場合があります。
そのときには、下記へ相談できます。
- 企業法務に強みを保つ弁護士事務所
- ひまわりほっとダイヤル(全国共通電話番号「0570-001-240」、またはオンライン申し込み)
- 中小企業庁管轄窓口(都道府県等中小企業支援センター、中小企業電話相談など)
ひまわりほっとダイヤルは、日本弁護士連合会と弁護士会が提供する相談窓口で、初回30分は基本的に相談料無料で利用できます。
弁護士との面談を予約できるため、どの弁護士へ相談すればよいか分からない場合は活用してみましょう。
相見積もりをスムーズに進めるなら「intra-mart Procurement Cloud」
相見積もりの際は、工程が多いうえ気を遣うことも多く、たいへんだと感じた方もいらっしゃるでしょう。
業務の工程を効率化し、スムーズに進めるために、ぜひ調達・購買管理システムをご活用ください。
「intra-mart Procurement Cloud」は、ソーシングから支払いまでをワンストップで対応できる、クラウド型の調達・購買システムです。
機能のひとつに、見積もり依頼機能を搭載。
相見積もりの結果をまとめた比較表を自動作成できる機能があるため、見積もり管理業務を効率化できます。
ほかにも下記の機能を搭載しているため、見積もり担当者の負担を軽減するのに役立つでしょう。
- 購買申請依頼機能
- 添付ファイル登録機能(社内共有用、サプライヤー共有用など)
- 簡単品目登録、登録リストダウンロード機能
- 複数社への見積もり依頼一括作成・送信機能
- 一覧画面による見積もり業務の進捗管理機能
- サプライヤーとのチャット機能 など
詳細は「intra-mart Procurement Cloud」または「見積もり依頼機能詳細」からご確認ください。
まとめ
相見積もりとは、取引先の候補となった複数の企業に対して、同内容の見積もりを依頼することをいいます。
概算見積もりや正式見積もりがあるため、プロジェクトの進捗に応じて使い分けましょう。
また、相見積もりにはいくつかのポイントと注意点がありました。
ご紹介した内容を参考に依頼するとともに、必要に応じてツールやシステムも活用しながら進めましょう。