SAP管理会計の徹底解説:業務効率化から経営貢献まで

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SAP管理会計
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SAPの管理会計モジュール(SAP CO)を導入すれば、管理会計におけるコスト削減・業務効率化・リスク低減などのメリットが得られます。

 

しかし、管理会計やSAPに関して正確な知識をお持ちでない場合、効果的な管理会計の手法やSAPの設計方法の理解は難しいでしょう。

 

SAP COは、他のシステムなどとの連携をすることでさらに業務効率の改善やコスト削減の効果が得られるため、理解を深めることは会社の経営に直接影響するほど重要なことです。

 

そこで本記事では、管理会計の意味からSAP COの役割・導入メリットなどについて解説します。

ほかのシステムとの連携についても解説しているため、経営分析や効果的な経営戦略を立てたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。


管理会計とは?

管理会計とは、自社の経営に活用するために社内向けにまとめる会計のことです。

管理会計によって現状を可視化し、情報がタイムリーに把握できれば、迅速な意思決定が実現できます。

管理会計の主な業務

管理会計の主な業務は、以下の4つがあります。

 

  1. 予算管理:企業活動の目標を設定し、目標達成のために必要な資金配分を計画します。さらに、予算の実績がどのように消化されたかの実績についての管理も行います。実績と予算を比較して、差異分析を行うことで、問題点の早期発見と改善につなげることが可能です。

 

  1. 原価管理:製品やサービスの原価を把握し、適切な価格設定やコスト削減策を検討します目標とする販売価格と利益から逆算して、目標原価を設定(原価企画)したり、実際にかかった原価と原価企画との差異を比較・分析したりするなどの施策も実施します。

 

  1. 経営分析:企業の財務状況や経営成績を分析し、経営上の問題点や改善点を明らかにします。

 

  1. 資金繰り管理:預金の出入りを管理し、資金不足による経営危機を回避します。資金調達計画・資金計画・資金繰り予測などを通じて、資金繰りの安定を目指します。

 

管理会計業務を行うことは、企業の経営改善や的確な意思決定につながります。

管理会計と財務会計の違い

管理会計は自社の経営に活用するため社内向けにまとめる会計とである一方、財務会計は株主や取引金融機関など社外の利害関係者に提出する会計のことです。

 

つまり、同じ「会計」でも提出先が異なります。

 

管理会計を行うと、会社の経営状態が明確になり目標や成長戦略が立てやすくなる点がメリットです。

例えば、原価計算によって製品・サービスごとに収益性を把握したり、経営目標管理に向けた進捗を確認することで経営の効率化や改善のための資料として活用したりすることができます。

 

一方、財務会計は企業の財務状態を外部に公表するためのものです。

株主や債権者などに財務会計を提出することで企業の透明性を確保し、資金調達に利用したり、経営者自身が自社の財務状況を把握したりするなどに役立てられます。

SAPの管理会計モジュールの役割

管理会計を効率的に行うために多くの企業に導入されているシステムの一つが、ドイツに本社を置くSAP社が提供するSAPです。

 

SAPは、財務会計・管理会計・販売管理・在庫管理・生産管理などさまざまなモジュールで構成されています。

モジュールとは、簡単にいえば特定の業務領域にまとめられた機能群のことです。

 

そのなかで、管理会計モジュールは(SAPCO)は、企業の内部向けの会計情報を管理し、経営判断を支援するための重要な役割を担っています。

 

SAPの管理会計モジュール(SAP CO)の役割は以下のとおりです。

 

・製品原価管理:製品を作るための原価を計算します。

材料費・人件費・光熱費など項目別に費用を細かく分けて計算することで、製品1つあたりの正確な原価を計算します。

 

・原価配賦:会社の電気代や清掃費用など、部門に関係なく会社全体にかかる費用について、それぞれどの部署がどのくらい使ったのかを計算して割り振ります。

 

・損益の把握:部門ごとや製品ごとなど、さまざまな視点で利益と損失を計算し、経営判断の材料にします。

 

SAPの管理会計モジュールの導入により、緻密かつ正確に経営分析のためのデータを把握できます。

SAP管理会計導入のメリット

SAPの管理会計モジュール(SAP CO)を導入すれば、以下4つのメリットが得られます。

意思決定の効率化や戦略的な経営戦略の立案が可能になるため、経営判断に活用できるデータが欲しい方には特におすすめです。

 

・コスト削減

・業務効率化

・リスク管理

・経営貢献

 

コスト削減

SAP COを導入することで、コスト削減を実現できます。

主なコスト削減効果は以下のとおりです。

 

・原価管理の高度化:原価の自動化・標準化によって属人性を排除することによりリアルタイムに原価情報を把握可能

 

・在庫管理の最適化:在庫の過剰や不足を防止して在庫保管コストを削減

 

・生産計画の精度向上:精度の高い需要予測により無駄な生産を削減

 

・購買業務の効率化:発注書の作成・承認・送付などの作業の自動化による間接コストの削減

 

・購買データの分析:購買データを分析することで無駄な支出を特定

 

会計管理の効率化と自動化を実現し、さらに自動化により精度を高めることで、コスト低減につなげることが可能です。

業務効率化

SAP COの導入により、業務効率の大幅な向上にもつながります。

 

主な業務効率化につながる項目は、以下のとおりです。

 

・予算管理の効率化:予算編成・実績管理・差異分析などのプロセスをシステム化することで、作業時間を大幅に短縮

 

・承認フローの自動化:紙ベースでの承認フローを電子化し、承認待ち時間を短縮

 

・購買履歴の一元管理:購買履歴を簡単に検索して参照できるようにすることで、取引履歴を参照しながら効率的な購買業務を実現

 

・リアルタイムのデータ分析:最新のデータに基づいた分析が可能であるため、状況の変化に対して柔軟な対応が可能

 

結果的に従業員の負担軽減につながります。

リスク管理

3つ目のメリットは、リスク管理ができることです。

 

主なリスク管理の項目は以下のとおりです。

 

・サプライヤーリスクの管理:サプライヤーの顧客情報・納期遵守率・価格などを一元管理して取引リスクを可視化

 

・購買プロセスにおける不正防止:複数の見積比較や承認フローの厳格な管理によって購買プロセス全体の透明性を向上

 

・財務リスク管理:為替や金利の変動などの財務リスクを分析して、企業の財務体質を強化

 

・販売リスク管理:需要の変動や競合企業の動向を分析

 

これらの管理により、安定的な事業運営に役立てることができます。

経営貢献

4つ目のメリットは、経営に貢献できることです。

 

・迅速な意思決定のサポート:マネジメント層が、経営の判断のために必要な情報をリアルタイムに取得可能

 

・正確かつ的確なデータ:製品別・顧客別・地域別など、必要にあわせてニーズを正確に抜き出せるため、データに基づいた経営判断が可能

 

・業績評価の精度向上:部門別・製品別・プロジェクト別の成果を正確に把握

 

・内部統制の強化:購買プロセスや予算管理プロセスをシステム化して、不正行為やコンプライアンス違反のリスクを低減

 

SAP COが企業の経営陣にとって強力な意思決定のサポートになるでしょう。

購買管理におけるSAP管理会計の活用

購買管理では、SAPの管理会計モジュール(SAP CO)が以下のように活用できます。

業務効率化はもちろん、さまざまなリスク回避にもつながるでしょう。

 

・予算超過の防止

・購買コストの可視化

・データ統合による効率化

・不正防止

・リアルタイムの情報提供

予算超過の防止

1つ目の活用方法は、予算超過の防止です。

 

SAP COは、購買データと予算データをリアルタイムに連携し、予算対実績の差異を常に監視します。

これにより、予算超過のリスクを早期に検知し、アラートを発信することが可能です。

 

つまり、購買担当者はアラートに基づいて迅速に状況を把握することで、適切な対策を講じることができます。

 

例えば、特定のプロジェクトや部門で予算超過の兆候が見られた場合、SAP COは自動的にアラートを生成し、関係者に通知します。

これにより、予算超過の原因分析、追加予算の申請、あるいは購買計画の見直しといった対応を迅速に行うことが可能となり、予算管理の精度を改善できます。

購買コストの可視化

2つ目の活用方法は、購買コストの可視化です。

 

SAP COは、購買データと原価計算データを統合し、購買コストを詳細に分析します。

これにより、品目別・サプライヤー別・部門別など、さまざまな切り口でのコスト分析が可能となり、コスト削減の余地を特定することが可能です。

 

例えば、特定の品目の価格が高騰している場合、SAP COは代替となる商品の検討や、サプライヤーとの価格交渉といった対策を提案します。

また、特定の部門でコスト超過が頻発している場合、購買プロセスの見直しや購買担当者の教育といった改善策を提示します。

データ統合による効率化

3つ目の活用方法は、データ統合による効率化です。

 

SAP COは、購買依頼から発注・納品・請求処理までの購買プロセス全体を自動化が可能です。

また、購買データと会計データを統合することで、二重入力や転記ミスを防止できます。

 

つまり、手間・時間をかけることなく正確にデータを入力できるということです。

 

例えば、購買依頼が承認されたときに、自動的に発注書を作成してサプライヤーに発注書データを送付するように設定できます。

SAP COで、その後の請求書の照合や支払いまで自動化させることも可能です。

不正防止

4つ目の活用方法は、不正防止です。

 

SAP COは、購買プロセス全体を可視化し、誰がいつどのような購買を行ったかを明確に記録します。

これにより、不正行為やコンプライアンス違反のリスクを低減するほか、企業の信頼性向上を目指すことも可能です。

 

例えば、特定の従業員が特定のサプライヤーから高額な商品を繰り返し購入している場合、SAP COは自動的にアラートを生成し、監査担当者に通知します。

これにより、不正行為の早期発見と防止が可能です。

リアルタイムでの情報提供

5つ目の活用方法は、リアルタイムでの情報提供です。

 

SAP COは購買データと市場データを分析し、最適な購買戦略の立案を支援します。

また、サプライヤーの評価・選定、契約管理、パフォーマンス管理といったサプライヤー管理業務を効率化し、サプライチェーン全体の最適化を図ります。

SAP管理会計と他のシステムとの連携

SAPの管理会計モジュール(SAP CO)は、ほかのシステムと連携することで、より効果的な活用が可能です。

連携方法としては、EDIIDocBAPIAPIETL/EAIなどがあります。

EDIとの連携によるサプライヤーとの連携強化

EDIは、企業間で標準化されたフォーマットを使って、オンラインで発注書や請求書などをやり取りする仕組みです。

 

SAP COとサプライヤーのシステムをEDIで連携することで、紙やFAXで行っていた受発注の業務を電子化できます。

さらに発注データの自動送信・請求書データの自動取り込み・受発注の状況のリアルタイム確認なども可能であるため、業務効率化や納期遅延リスクの低減などの効果が得られます。

 

EDI連携によりサプライヤーとのコミュニケーションも円滑化され、信頼関係構築にもつながるでしょう。

IDocとの連携によるSAPシステム間の連携強化

IDocは、SAPシステム内でデータをやり取りするためのフォーマットです。

 

SAP COと他のSAPモジュール(在庫管理や販売管理など)をiDocで連携することで、それぞれのシステムに登録されているデータを共有できます。

 

例えば、在庫管理システムで更新された最新の在庫情報をSAP COに自動で取り込んで、原価計算に反映させるなどの活用法が可能です。

 

また、データの二重登録防止や転記ミスなどの効果によってデータの正確性も向上します。

BAPI/APIによるデータ連携の柔軟性の強化

BAPI/APIは、SAPシステムの機能を外部プログラムから利用するためのインターフェースです。

 

SAP COと他のシステムをBAP/APIで連携することで、SAP COのデータを他のシステムで活用したり、反対に他のシステムに登録したデータをSAP COに取り込んだりできます。

 

具体例として、CRM(顧客関係管理)システムとの連携の例をご紹介します。

SAP COの原価情報とCRMシステムの顧客情報を連携させることで、顧客ごとの原価や収益性を分析することが可能です。

 

BAPI/APIは、特定のシステムやフォーマットに縛られずにさまざまなシステムのデータを連携させられます。

ETL/EAIによる異なる機種・システム間による連携の強化

ETL/EAIは、異なるシステム間でデータを連携するための技術です。

 

ETLとの連携の場合は、さまざまなシステムからデータを抽出・変換して、SAP COに読み込ませてデータを一元管理します。

 

EAIは、異なるシステム間でデータ連携を行うことで業務プロセスの自動化や効率化を促進します。

 

ETIやEAIの活用により、長年使用し続けている古いシステムに登録されたデータをSPA COに取り込んで利用することが可能です。

まとめ

SAPの管理会計モジュール(SAP CO)を導入した際、コスト削減・業務効率化・リスク管理・経営貢献などのメリットがあります。

 

記事内ではSAP COとほかのシステムが連携可能であることをご紹介しましたが、購買管理システムと連携させることも可能です。

 

購買管理システムはSAP COと機能が重なる部分もあります。

しかし、傾向としては購買管理システムのほうが短期間・小規模の導入にも対応していたり、独自の機能を搭載していたりするなど、より柔軟に活用できるケースが想定されます。

購買管理システム intra-mart Procurement Cloudは、SAP ERPとスムーズな連携が可能です。

ニーズに応じてさまざまな設計が可能ですが、とくに業務効率向上・データ正確性向上・リアルタイムの情報共有・コスト削減に課題を感じられている場合は、メリットを感じていただけるでしょう。

 

1部署・1アイテムからの導入や無償でのトライアルにも対応しているので、気になる方はぜひご相談ください。download-img01.jpg

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