購買管理の5原則とは?効果的な購買にするために必要な準備も
日々の購買業務に課題を感じ、購買管理の体制を整えたいとお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
購買管理の仕組みを整え、購買業務の効果を高めるためには「購買管理の5原則」について把握しておく必要があります。
基本的なルールともいえる購買管理の5原則について把握しておけば、自社の取り組みにおいてどこを変更すればよいかを見つけやすくなるでしょう。
この記事では、購買管理の5原則とはなにか、購買管理の5原則に着手するまえにしておくべき準備、膨大なデータを扱う購買業務を効率的に進めるために役立つシステムについてなどを解説します。
購買管理の5原則とは
購買管理の5原則とは、日々の購買管理業務において、意識しておきたい基本ルールをいいます。
製造業で重視されている「QCD」(Quality、Cost、Delivery)に取引先・数量に関する項目をくわえたもので、下記の5項目があります。
それぞれ網羅的に取り組むことが大切です。
- 適切な取引先の選定
- 適切な品質の確保
- 適切な数量の決定・確保
- 適切な納期の決定・確保
- 適切な価格の決定
購買管理は、企業の必要とする直接材(原材料や部品など)や間接材(事務用品や消耗品など)を、適切な価格・品質・量で購入するためのマネジメント方法です。
企業の業務に欠かせない物品の購入費用を抑えることで、経営状況を改善する効果が期待できます。
ここでは、購買管理の5原則について、それぞれをご紹介します。
また購買管理に関しては「購買管理とは?原則や課題となるポイントを押さえて経営改善を狙おう」で詳しくご紹介しているため、業務内容から再確認したい場合はあわせてご確認ください。
適切な取引先の選定
直接材や間接材を扱う取引先として、リスクの少ない企業・団体を選ぶことを指します。
例えば取引先を選ぶ際に下記の調査を実施し、自社業務を円滑に進めていけるかを判断する必要があるでしょう。
- 取引先に対して与信管理(経営状況)の調査をする
- 購入する物品について、取引先の調達方法を確認する
- 取引先の担当者と、良好かつ円滑なコミュニケーションを取れるか確認する
取引先に対して与信管理をするのは、仮に経営不振によって突然倒産した場合、その影響で自社業務も大きな影響を受ける可能性があるためです。
トラブルによる自社業務の停滞を起こさないためには、長く付き合っていける取引先を選ぶ必要があります。
また物品の調達方法に関しては、違法性のある調達ルート・購入方法をしていないかをチェックしておきましょう。
例えば、下請法(下請代金支払遅延等防止法)に違反していわゆる「買いたたき」がされた物品を購入・使用した場合、ブランドイメージの低下を引き起こす懸念があります。
このような観点を通じて、取引先にリスクマネジメント能力があるかを確認しておくことが大切です。
適切な品質の確保
取引先が提供する物品の品質が、下記の条件を満たすかを確認しておきましょう。
- 自社の求める品質基準を満たしているか
- 提供される物品の価格と品質が釣りあっているか
- 提供される物品の品質管理体制に問題がないか
また、直接材の製造を委託する場合は「必要な技術力を備えているか」「製造の管理体制に問題がないか」もあわせて確認しておく必要があります。
安く物品を購入できても、品質が悪ければ自社製品の評価も落ちてしまうでしょう。
価格に釣りあわない品質だった場合は、取引先の再選定や部品の取り替えなど、余分な手間と費用が生じる可能性があります。
取引先を決めるまえに品質について確認し、十分な品質を担保できる取引先を探すことが重要です。
適切な数量の決定・確保
購買業務では、物品の数が多すぎても少なすぎても問題となってしまいます。
物品が多すぎると、保管場所とその分の使用料を確保する必要があるだけでなく、劣化した物品は手間とコストをかけて処分する必要性が生じるでしょう。
反対に物品が少なかった場合は、業務が停滞したり、生産計画が変更され混乱が生じたりする可能性が高まります。
取引先企業に対しては、主に「希望する品質で、過不足ない量の物品を提供し続けられる体制があるか」を確認しましょう。
品質は問題ないものの量をカバーしきれない場合は、二社購買を検討する必要性も生じます。
また自社内に対しては「購入した物品の保管・管理体制が整っているか」をチェックしておくことが大切です。
ただし、必要な物品を過不足なく、コストを抑えて購入するためには、深いマーケティング知識が求められます。
マーケティングに役立つツールやシステムを用いて、データ分析業務を補助してもらうのもおすすめです。
適切な納期の決定・確保
必要な物品が必要なときに届くかを把握するため、取引先には発注のリードタイム(発注してから届くまでの時間)の確認を、自社内では生産リードタイム(届いてから使うまでの時間)の確認をしておく必要があります。
購買してから使用までのリードタイムを把握していなければ、重複して購買したり足りなくなったりする可能性が高まります。
物品の保管場所・倉庫のスペースを確保し、効率的に場所を活用するためにも重要な確認事項です。
くわえて、下記の確認もしておくとよいでしょう。
無理なく継続して取引し続けられる適切な納期を設定するとともに、あらかじめイレギュラーに対する対応方法を取り決めておくと、リスク回避に効果的です。
- イレギュラー時に短納期発注が可能か、その場合最短どれくらいで届くか
- 取引先の都合で納期遅れが生じた場合の連絡フローや、その際の対応方法の取り決め
- 納期遅れを生じさせないために、自社から取引先に対する進捗管理ができるか
適切な価格の決定
購入する物品について、品質や市場相場に合った適切な価格設定がされているかを確認する必要があります。
市場価格について把握しておき、必要な場合はデータをもとにした価格交渉をすることもあるでしょう。
ただし交渉を成功させるためには、肌感覚の相場ではなく、信憑性のあるデータをもとにする必要があります。
くわえて、部品をはじめとした直接材の製造を依頼している場合は、下請法の知識も欠かせません。
適切な価格・相場を把握し、一般的な価格よりも高い費用を投じて購入してしまったり買いたたきになってしまったりしないように注意が必要です。
購買管理の5原則の遵守に必要な準備
購買管理の5原則にのっとって適切に購買管理業務をしていくには、下記の4つを心がける必要があります。
- 購買管理規定を整備して内部統制を強めておく
- 定期的な配置換えによりガバナンス強化を図る
- 業務フローを整備して購買業務の無駄を削減する
- 無理なく購買業務ができる体制づくりをしておく
前もってこうした準備をしておかなければ、スポット的な対応になってしまったり、取り組みが失敗してルールが形骸化(けいがいか)形骸化(けいがいか)してしまったりする可能性があります。
それぞれの内容とポイントを、ひととおり確認しておきましょう。
購買管理規定を整備して内部統制を強めておく
購買管理を成功させるための前提として、内部統制が取れていることが挙げられます。
内部統制とは「信頼性を維持し、法令を遵守し、会社の資産を保全することを目的としてルールや仕組みを整えること」です。
そのルール・仕組みとして機能するのが「購買管理規定」です。
購買管理規定には、購買計画・取引先・購買依頼についてなど、さまざまな決め事を記載しておきます。
例えば、下記のような内容が挙げられるでしょう。
項目 |
主な内容 |
総則 |
購買管理規則の目的、基本項目、適用範囲などに関する取り決め |
購買計画について |
購買計画立案、予算管理における業務フローの取り決め |
取引先選定について |
契約書締結、見積もり取得、与信管理に関する取り決め |
発注・契約について |
発注書・注文請書など書類に関する取り決め、納期・契約・発注に関する取り決め |
納期管理について |
納期確保の業務フロー、納期変更時の周知方法、納期変更時の対応方法に関する取り決め |
検収について |
各部署における検収体制、不良品発見時の業務フロー、返品に関する取り決め |
仕入れ・支払いについて |
支払い処理、買掛金管理に関する取り決め |
ほかにも、必要に応じて「帳簿の書き換えを禁止し、修正が発生した際の業務フローについて記載する」というような内容を盛り込んでおきましょう。
定期的な配置換えによりガバナンス強化を図る
購買管理の5原則にのっとった適切な購買業務を続けていくには、定期的な配置換えを実施して、担当者・取引先間に癒着が起きないようにすることも大切です。
長期的に購買担当として勤務し、同じ取引先と関わっている場合、不正が起きる可能性が高い環境になってしまいます。
定期的な配置換えをするとともに、発注と支払いの担当者を別に設定して、第三者も介入できる仕組みを作っておくことも大切です。
しかし、なかには「膨大なデータを取り扱わなければならないポストなのに、人員異動を頻繁にすると購買担当者が育たなかったり業務に慣れてくれなかったりするのでは」といった懸念が生じる場合もあるでしょう。
その場合は、情報の参照・共有がしやすく、データの一元化がされているようなシステムを活用し、誰が担当になっても判断基準となるデータを確認できるようにしておくことが効果的です。
購買業務を補助してくれるシステムやツールを使うことで、スムーズに購買業務ができるようになるでしょう。
業務フローを整備して購買業務の無駄を削減する
購買業務を適切に遂行するには、必要に応じて、業務フローを見直し再整備することも重要です。
購買管理に携わる部署は、購買に関係する多岐にわたる業務を担うため、業務フローが煩雑になりやすい傾向にあります。
業務フローが複雑になり購買管理がうまく機能しなくなると、発注の重複・割高購入・一括購入機会の喪失など、大きな損失につながる可能性が高まります。
「一見で理解できるフローチャートを作成して次の担当者がわかるようにする」「部署間の連携が取りやすいように環境を整える」「購買管理に役立つシステムを導入する」など、確認作業に費やす時間を削減できる仕組みを作っておくのがおすすめです。
また、その都度書類を持って移動しなくて済むよう、書類の電子化対応やチャットができるツールを導入するのも効果的です。
誰にとってもわかりやすいようなフローになるよう再整備し、すぐに確認できるような仕組みを作っておきましょう。
無理なく購買業務ができる体制づくりをしておく
購買管理業務は、取り扱うデータが多く、大きな負荷のかかる業務です。
そのため、できるだけ無理なく、効率的に業務ができる環境づくりをサポートしていくことが重要です。
例えば、下記のような環境整備ができるでしょう。
- より安く仕入れるために、市場価格や過去の取引情報について比較・検討がしやすい環境を整える
- 発注の手続きや、過去の取引情報の確認ができる環境を整える
- 過去のデータを比較・分析しやすい環境を整える
- 情報を他部署と共有しやすい環境を整える
- 下請法対応に関する情報を周知しておく
業務に関する主な情報だけでも、取引先候補の与信管理結果、相見積もり結果、市場価格のデータ、過去の取引データ、契約書など、さまざまなものがあります。
それらを一括して見られるシステムを整備しておくことで、より精度が高く無駄のない購買業務ができるようになるでしょう。
購買管理の5原則を遵守するのに役立つシステム
購買管理の5原則を遵守し、日々の購買業務に取り組んでいくためには「購買管理システム」を活用するのがおすすめです。
ここからは、購買管理システムについてご紹介します。
購買管理システムは、複雑になりがちな購買業務をより効率的に進めていくことに特化したシステムです。
「購買管理って難しそう」と感じた方は、ぜひチェックしてください。
購買管理システムとは
購買管理システムは、購買におけるプロセスをスムーズに進めたり、より管理しやすくしたりするのに役立つシステムをいいます。
原価高騰や人手不足に悩む企業が、購買管理の5原則にのっとって的確なビジネス展開をしやすくするシステムです。
直接材の購買管理に特化したもの、間接材の購買管理に特化したもの、オールラウンダー的に扱えるものなど種類がありますが、いずれにも搭載されていることの多い機能として下記の8つが挙げられます。
- 購買計画機能…生産計画にのっとり、どこからなにを、いくつ購買するかを計画するのに役立つ機能
- 仕入れ先管理機能…過去の取引記録と今後の予定を管理する機能
- 取引契約機能…契約内容を確認・閲覧する機能
- 発注管理機能…発注情報を管理する機能
- 価格管理機能…過去の取引も含め、購買価格を参照・管理できる機能
- 納期管理機能…納品されるまでのステータスが反映される機能
- 品質管理機能…納品物の品質を確認し、基準に満たなかった納品物の個数や状態を管理する機能
- 検収支払い管理機能…納品後、検収・支払いまでのステータスを管理・把握するための機能
また購買管理システムによっては、カタログ購買機能、外部カタログとの連携機能、データ分析機能などが搭載されている場合もあります。
扱う物品の種類や業界に応じて、適したシステムを選びましょう。
購買管理システムに関しては、詳しくは「購買管理システムとは?購買の悩みを解決する4つのメリット」でご紹介しています。
より詳しい導入メリット・デメリットなどを確認しておきたい場合は、あわせてご確認ください。
購買管理システムの選び方
購買管理システムは、下記の5点に着目して候補を絞っていきましょう。
- 既存システム・部門間の連携ができるか
- 導入方法はオンプレミス型か、クラウド型(SaaS)か
- システム内容は直接材特化・間接材特化・オールラウンド型のどれか
- ベンダーの対応状況はどうか
- 従業員が操作しやすいと感じる設計かどうか
システム設計の自由度が高く、セキュリティ環境の構築も自社でできるものがよい場合はオンプレミス型を選ぶとよいでしょう。
一方、コストを抑えつつ、外出先でも利用できるフレキシブルさを重視したい場合はクラウド型がおすすめです。
ただしオンプレミス型の利用にはまとまったコストが必要、クラウド型は通信環境がベンダーに依存するといった点がデメリットとなります。
また購入する物品の種類や頻度によって、必要になるシステムは異なります。
直接材を購入するため業界特化型のものがよい、間接材だけ購入できればよいためカタログ横断型のものを使いたいなど、イメージに応じて選びましょう。
候補となる購買管理システムを絞り込んだあとは、試用してみて、従業員が扱いやすいと感じるかを確認することも大切です。
操作性が悪く従業員が「使いにくい」と感じる購買管理システムを導入した場合、慣れるまで生産効率が悪化したり、かえってミスが増えたりする可能性が上がってしまいます。
試用できる購買管理システムは少なくないため、時間に余裕をもって、テスト利用しながら選ぶのがよいでしょう。
購買管理の5原則を遵守するなら「intra-mart Procurement Cloud」がおすすめ
「購買管理の5原則を遵守して、より効果的に購買業務をできるようにしたい」とお思いの場合は、ぜひ「intra-mart Procurement Cloud」をご検討ください。
「intra-mart Procurement Cloud」は、見積もりから支払いまで、企業間取引をワンストップでできるクラウド型の購買管理システムです。
東北電力株式会社、太陽化学株式会社、四条畷市、オリックス生命保険株式会社など、これまでに9,500社以上に導入された実績があります。
「intra-mart Procurement Cloud」に搭載されているのは、下記の6機能です。
- 調達管理…見積もり、契約
- 購買管理…発注~検収
- カタログ購買…定期購買
- 支払い管理…請求、決済
- 販売管理…取引先向け、見積書作成など
- 金融EDI…全国銀行協会が定めるZEDIに対応
機能の詳細は「intra-mart Procurement Cloud」で、導入事例は「導入事例」で確認できます。
購買管理をスムーズかつ効果的に進めたい方は、ぜひご確認ください。
まとめ
購買管理の5原則とは、購買管理業務を遂行する際に基本となる5つのルールをいいます。
「適切な取引先の選定」「適切な品質の確保」「適切な数量の決定・確保」「適切な納期の決定・確保」「適切な価格の決定」があり、網羅的に意識することで、より効果的な購買業務が可能になるでしょう。
しかし徹底して購買管理をしようとすると、取り扱う情報量が膨大になるため、適切なシステムを活用しながら取り組むのがおすすめです。
この記事でご紹介した内容をもとに、自社ではどこから意識して取り組めるか、購買管理システムの導入が必要かなど、それぞれ検討してみましょう。