物流品質の構成と基本要素|改善・品質向上する取り組み


物流品質とは、商品の梱包からお届けまでの品質やサービスを指す言葉です。
品質が低下すると荷主への信頼が失われることがあるため、物流業界においては最も重視すべきポイントであると言えるでしょう。
では、物流品質が低下するとどのようなことが起こるのでしょうか?
本記事では物流品質の重要性や基本要素について詳しく説明した後に、物流品質の改善・向上のためにできる取り組みをいくつかご紹介します。
物流品質を担当する購買部門担当者は、ご紹介した取り組み内容を参考に対策を立ててはいかがでしょうか。
物流品質とは?
物流品質を高めるためには、まず物流品質がどのようなものかを理解する必要があります。
この章では、物流品質の概要とその重要性について解説します。
物流品質とは物流における作業やサービスの品質のこと
物流品質とは、物流における作業やサービスの質のことです。
物流現場では、物流品質を維持するために「PPM」という単位を使用し、誤出荷や誤配送・貨物事故・クレームの防止に努めています。
なぜ物流品質が重要なのか?
物流品質の向上は、コスト削減・リスク低減・納期短縮・顧客満足度向上に直結します。
そのために、物流品質を管理することが非常に重要です。
物流品質の向上がなぜメリットにつながるのかについては、主な理由を解説します。
・コスト削減:在庫の適正化やロスの削減によるムダの削減・物流管理の人員コストの削減・物流効率化による輸送コストの削減
・リスク低減:サプライヤーの管理によるリスクの可視化・トラブル発生の早期発見
・納期短縮:効率的な購買・発注の仕組み・優れたサプライヤーの選定
・顧客満足度向上:納期遅れなどのトラブルの低減・品質の向上
これらのメリットにより、物流品質の向上は自社の売り上げの向上や収益性のアップにもつながると考えられます。
物流品質の基本要素
物流品質では、以下7つの基本要素を整えることで管理を行います。
・納期品質(指定の日時の遵守)
・商品品質(保管環境・賞味期限管理・変形や変質をしない・汚破損がない)
・正確性品質(品質・量・配送先間違えをしない)
・事故防止品質(安全管理の徹底)
・環境への貢献(二酸化炭素削減・廃棄物の削減)
・印象品質(ドライバー・カスタマーセンターのマナー遵守)
・その他(問い合わせへの回答・連絡・報告)
納期品質
1つ目の要素は、納期品質です。
指定された納期を厳守することで、品質を維持します。
さらには、納期短縮を実現することで、顧客満足度の向上や在庫削減などのメリットにつなげることが可能です。
例えば、以下の項目の達成率や実行の有無を管理します。
・契約書に記載された納期と実際の納入日時に差異はないか?
・納期遅延が発生した場合、その原因は何か?
・納期遅延が頻発している場合、サプライヤーの生産体制や輸送体制に問題はないか?
・納期遵守率を定量的に把握し、改善目標を設定しているか?
商品品質
2つ目の要素は、商品品質です。
発注した商品を適切な状態で納品するために、管理を徹底して品質を維持します。
例えば、以下の項目の達成率や実行の有無を管理します。
・商品の破損、汚損、欠陥はないか?
・商品の品質は、自社の基準や顧客の要求を満たしているか?
・商品の保管・輸送方法は適切か?
・サプライヤーの品質管理体制は適切か?
・品質問題発生時の対応は迅速かつ適切か?
正確性品質
3つ目の要素は、正確性品質です。
発注した数量と納品された数量が一致しているか、配送先の間違いはないかを確認し、誤配送や欠品のリスクを回避します。
例えば、以下の項目の達成率や実行の有無を管理します。
・過不足なく、正しい商品が納品されているか?
・誤配送や誤出荷は発生していないか?
・ピッキングや検品作業の精度は十分か?
・誤配送・誤出荷発生時の対応は迅速かつ適切か?
・再発防止策は講じられているか?
事故防止品質
4つ目の要素は、事故防止品質です。
輸送中や倉庫内での事故の発生を防止するため、安全管理を徹底して品質を維持します。
例えば、以下の項目の達成率や実行の有無を管理します。
・輸送中の事故(交通事故、荷崩れなど)は発生していないか?
・倉庫内での事故(落下、破損など)は発生していないか?
・安全対策は十分に講じられているか?
・事故発生時の報告体制は確立されているか?
・事故の原因分析と再発防止策は実施されているか?
環境への貢献
5つ目の要素は、環境への貢献です。
CSR活動を推進するため、環境負荷を低減するための取り組みが行われているかを確認して品質を維持します。
例えば、環境に関する認証の取得の有無も環境への貢献度が左右されるポイントでしょう。
環境に関する認証には、「ISO14001」「B corp認証」「CDP認証」などがあり、取得すれば企業価値の向上にもつながります。
印象品質
6つ目の要素は、印象品質です。
物流品質の維持には商品の状態だけではなく、配送業者や倉庫業者の対応が適切であるかも重要なポイントになります。
例えば、以下の項目の達成率や実行の有無を管理します。
・配送業者や倉庫業者の従業員の対応は丁寧かつ迅速か?
・顧客からの問い合わせやクレームへの対応は適切か?
・配送業者や倉庫業者の従業員教育は徹底されているか?
・顧客満足度調査を実施し、改善に役立てているか?
・配送業者や倉庫業者とのコミュニケーションは円滑か?
物流品質の評価指標「PPM」とは
記事の冒頭で少し触れましたが、物流現場では物流品質を維持するために「PPM」と呼ばれる単位を使います。
「PPM」とは、簡単に説明すると物流品質レベルの数値(目標値)のことです。
誤出荷率や誤出庫率・出荷遅延率など、さまざまな指標において使用され、数値が高くなればなるほど品質が低下しているとみなされます。
目標数値
PPMの目標数値は、業界やシステムによって大幅に変わりますが、一般的に10ppm以下に抑えることが理想とされています。
100,000件に1件間違いが起こると10ppmとなるため、とても基準が高いと感じるでしょう。
しかし、誤出荷や出荷遅延が発生すると、製造工場の稼働がストップしてしまう可能性があります。
稼働がストップすれば生産性の低下や利益率の低下を招くこともあるため、トラブル後の影響を考慮すれば10ppmという基準は高くないかもしれません。
算出方法
PPMを算出するには、ミスやクレームの件数をトータル数で割り、1,000,000を掛けます。
PPM=(ミス・クレームの件数÷トータル数)×1,000,000
なお、ミスやクレームの件数をトータル数で割ったものは「不良率」と呼ばれます。
ミスやクレームの種類に分けて不良率を計算すれば、どのミスやクレームの割合が多いか把握できるため、PPMの数値改善に向けた対策が立てやすくなるでしょう。
物流品質の数値を改善・向上する取り組み
物流品質の数値を改善・向上するための具体的な取り組みとしては、以下の6つが挙げられます。
・サプライヤーとの連携強化
・契約内容の見直し
・リスク管理体制の構築
・情報共有・可視化
・物流品質に対する教育・研修の実施
・物流DXの推進
PPMの数値が高いままで改善が難しい場合は、これらの取り組みを検討してはいかがでしょうか。
1. サプライヤーとの連携強化
1つ目の取り組みは、サプライヤーとの連携強化です。
サプライヤーとのコミュニケーションを密にし、納期遵守・品質基準・情報共有などについて明確な合意を形成します。
定期的なミーティングや情報共有の場を設けることで、問題の早期発見・解決につながるでしょう。
サプライヤーとの連携強化には、購買システムなどに搭載されているチャット機能の利用が便利です。
システムの機能を利用することでだれでも閲覧可能になるため、トラブル発生時に担当者が不在のでもどのようなやりとりをしたか把握でき、担当者以外が対応できるようになります。
2. 契約内容の見直し
2つ目の取り組みは、契約内容の見直しです。
サプライヤーとの契約内容を定期的に見直し、物流品質に関する項目(納期遵守率、不良品率、情報提供の頻度など)を明確化します。
必要に応じて、ペナルティ条項やインセンティブ制度を導入することも検討しましょう。
ペナルティがあればミスや事故の防止につながるほか、インセンティブがあれば品質維持・向上に積極的に取り組めるようになります。
3. リスク管理体制の構築
3つ目の取り組みは、リスク管理体制の構築です。
物流品質の維持・向上には、物流におけるリスク(自然災害、事故、遅延など)を洗い出し、それぞれのリスクに対する対応策を事前に準備しておくことが重要です。
そのため、緊急時の連絡体制や代替輸送手段の確保など、具体的な対策を検討します。
なお、物流におけるリスクには以下のものがあります。
これらのリスクに対して、具体的な対策を検討してください。
【物流におけるリスク】
・災害リスク
・事故リスク
・セキュリティーリスク
・国際物流特有のリスク
4. 情報共有・可視化
4つ目の取り組みは、情報を共有または可視化することです。
情報共有・可視化を実現するために、サプライヤーとの間で物流情報をリアルタイムに共有します。
在庫状況、出荷状況、配送状況などを可視化すれば、問題発生時における迅速な対応が可能です。
問題発生時に迅速な対応ができれば、生産過程への影響を最小限に抑えることはもちろん、顧客からの信頼の維持・向上につながるでしょう。
5. 物流品質に対する教育・研修の実施
5つ目の取り組みは、物流品質に対する教育・研修の実施です。
購買部のスタッフだけでなく、関連部門のスタッフに対しても、物流品質の重要性や改善策についての教育・研修を実施します。
「関連部門だから物流品質の重要性を深く理解する必要はないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、社内での業務は1つの結果に結びつくようになっています。
関連部門のスタッフが物流品質の重要性や改善策への理解度が深まれば、購買部のスタッフへの配慮や、自分がするべきことが考えられるはずです。
つまり、PPMの数値改善のためにスタッフ1人ひとりが何をすべきか考えられるようになれば、PPMの数値が改善できるでしょう。
また、同時に作業や管理体制を標準化し、ブラックボックス化させないことも重要です。
1人ひとりの理解が深められても、作業や管理体制が整っていなければ業務効率の低下はもちろん、モチベーションの維持も難しくなるからです。
そのため、物流品質に対する教育・研修の実施後には、内容に合わせて作業や管理体制を標準化するとよいでしょう。
6. 物流DXの推進
6つ目の取り組みは、物流DXの推進です。
物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進とは、データやデジタル技術・機械などを活用してビジネス全体を変革する活動のことを指します。
物流DXを推進すれば、物流の自動化・機械化による人手不足の解消・労働環境の改善・電子化によるコスト削減・リードタイムの短縮・在庫の適正かなどが可能です。
例えば、倉庫の在庫状況と発注システムとを連携して発注を自動化する仕組みを導入することにより、発注業務を自動化できます。
現在はさまざまな分野で物流DXが普及しており、物流業界では荷役機械の遠隔操作や、自動ピッキングロボットの導入などが実施されています。
【そのほかの物流DXの例】
・サプライヤーと発注・在庫状況をシステム上で共有することによる発注業務の効率化
・物流管理システムの導入によるデータの一元管理
・AI技術を活用した配送ルートの最適化
・電子契約導入による契約手続きのペーパーレス化
まとめ
物流品質の管理は、コストとリスクの削減と、納期短縮のために重要です。
PPMの数値が高く物流品質が低下すれば、顧客からの信頼の失墜、納期の遅延・欠品・顧客満足度の低下による売り上げの減少などのリスクがあります。
物流品質を改善・向上させるためには、記事内でご紹介した取り組みをご検討ください。
特に、取り組みの1つである「サプライヤーとの連携強化」や「情報共有・可視化」は、すぐにでも始められるでしょう。
サプライヤーとの連携強化と情報共有・可視化には、購買管理システムの利用が便利です。
搭載されたチャット機能を利用すれば簡単にコミュニケーションが取れるほか、契約内容や物流の進捗状況を把握できるため、情報の共有・可視化が簡単にできます。
購買管理システムについて気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
お忙しい方は、公式サイトから資料をご請求いただけます。
※購買管理システム「intra-mart Procurement Cloud」で物流品質向上を
購買管理システム「intra-mart Procurement Cloud」には、サプライチェーンにおける物流品質の維持・向上のためのさまざまな機能が搭載されています。
例えば、発注管理・物流管理・カタログ化機能・チャット機能などです。
同じシステム上で発注や配送の状況を双方で確認したり、チャット機能を用いてコミュニケーションを取ったりすることができるため、サプライヤーとの関係性強化に役立ちます。
機能を効果的に活用したり、既存のデータやシステムなどと連携させたりすることにより、物流品質の管理の一部を自動化させることも可能なので、品質の向上と業務効率化の両立を目指す企業様におすすめです。