調達・購買DXでも必須!電帳法で困ったこと、専門家に聞いてみた。
調達・購買DXと電子帳簿保存法
電子帳簿保存法(以下、電帳法)とは、国税関係の帳簿書類を電子データで保存することを認めた法律です。生産性の向上、テレワークの推進、記帳水準の向上などを目的に、今後は電子での取引情報の授受にシフトしていくべきとの趣旨があります。
電帳法は1998年に施行されて以来、数回にわたって改正が行われてきました。例えば、2005年にはスキャナ保存での書類管理が可能に、2016年にはデジカメやスマホで撮影した書類の電子データ化が可能になりました。2022年1月から適用を開始している今回の改正では、これまで紙にプリントアウトして保管することが認められていた国税関係書類の電子データを、オリジナルのまま電子データで保管することが必須になるなど、大きな変更があったとして注目を浴びています。
電帳法では、保存方法を以下の3つに区分しています。
①電子帳簿等保存
会計ソフトなど、パソコンを使って作成したデータの保存
②スキャナ保存
受領した紙の書類、作成した紙の書類のスキャナデータの保存
③電子取引データ保存
メールやクラウドな電子データで授受した取引情報データの保存
①電子帳簿等保存は自己が最初からPC等で作成した帳簿書類を、②スキャナ保存は紙で発行・受領した書類を、③電子取引データ保存はメール等で受領したデータを対象にしています。それぞれの区分に対応する書類は以下の図のとおりであり、電帳法では請求書や領収書に限らず、請求と直接関係する見積書や納品書、契約書等の関係書類も対応が必要になります。①に関してはあらゆる書類が対象であり、②と③に関しては書類種別ではなく受領方法で区分されます。
(参考)領収書について
一般的に領収書は、現物の原本で保存する義務がありましたが、電子帳簿保存法の要件にもとづいたスキャナ保存によるデータ化が認められています。たとえば、取引先からPDFで領収書を受け取った場合は、従来の紙保存もしくは電子帳簿保存法に従った電子保存のいずれかで保存が可能です。ただし、2024年1月1日以降は、電子データで受け取った領収書は電子保存のみで保管しなければなりません。
領収書の電子化において以下のケースで注意すべきポイントがあります。
1. 紙の領収書を授受した場合
紙の領収書を授受した場合は、受領した日から最長2ヵ月と7日の間にスキャンを行う必要があります。自社の業務サイクルに合わせた締切日に処理しなければなりません。もしスキャンの起源が過ぎた場合は、データと紙の領収書の両方を保存する義務が発生します。また、スキャナ保存を行った画像には、非改ざん性を証明するために、タイムスタンプを付与しなければなりません。ただし、画像データの変更が明らかに不可能な場合は、タイムスタンプの付与は義務付けられていません。しかし、電子帳簿保存法の要件に適していない場合は、紙の領収書が必要になるので、破棄しないように気をつけましょう。
2. データで領収書を授受した場合
データで領収書を授受した場合は、電子取引の要件を満たす必要があります。電子取引において紙による保存が禁止になり、システムを導入しているすべての企業に対して電子データ保存が義務付けられています。電子取引の要件として、システムの取扱説明書の常備、データの確認に必要なディスプレイ、検索機能の確保、タイムスタンプによる真実性を担保があります。特に検索機能の確保では、取引年月日や取引金額など主要な項目を検索条件として設定できる機能、範囲指定で検索できる機能、2つ以上の条件で検索できる機能が必要です。膨大な量のデータを取り扱う際に、必要なデータを速やかに参照できることが求められます。
企業がより簡単に電子データでの保存による調達・購買DX及び電帳法を推進することで以下5つのメリットが挙げられます。
1.業務の効率化
調達・購買領域の国税関係書類(見積書、契約書、発注書、納品書、請求書、支払通知書等)に関して、多くの企業は年度ごとに分けて保管しているかと思います。その場合、たくさんの書類から目当てのものを探すのは労力がかかるでしょう。この書類探しの無駄な時間により、他の業務が滞るため非効率的と言わざるを得ません。電帳法では、検索機能を担保した上で国税関係書類を電子データとして保存することになるため、この無駄な時間が生じることはなく、業務の効率化及び、生産性の向上に繋がります。
2.柔軟な働き方の実現
一般的に、紙の国税関係書類はオフィスのキャビネット等で保管されると思います。電帳法に則って電子データとしてクラウド上に保管すれば、場所や時間に縛られずに書類の閲覧等が可能になります。例えば、出張先などの出先から書類確認のためだけにオフィスに戻るといった手間をなくすことができ、テレワークを推進している企業にとっては後押しとなる法整備と言えます。
3. 書類保管場所の省スペース化
オフィスのキャビネット等で書類を保管している場合、そのスペースだけでもかなりの場所を取ってしまうでしょう。日本の法人は取引記録を帳簿に付け、その事業年度の確定申告書の提出期限翌日から7年間※保存することが義務付けられています。書類をファイルやバインダーで7年以上も保管するとなると、その書類の数は膨大になりオフィスを専有しかねません。これらすべてを電子データとしてクラウド等に保存することで、管理場所の省スペース化に繋がります。
※赤字経営で繰越欠損金が出た場合は、2008年4月1日以後に修了した欠損金の生じた事業年度については9年間、2018年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度については10年間
4.コスト削減
紙での帳簿作成・保管には、用紙やインク、ファイル、バインダーなど、定期的に備品を購入する必要があり、紙で管理をしている以上これらは長期的に調達しなければいけません。長い目で見ると、これらにかかる費用は軽視できませんが、電子データ保存にすることですべて不要になり、コスト削減に繋がります。
5.環境問題への取り組み
昨今、CSR(企業の社会的責任)やサステナビリティ(持続可能性)への取り組みが企業に求められています。これらの活動は多岐にわたりますが、電帳法に則ることにより中でも代表的な環境保全へ寄与できます。紙での書類管理をやめて電子データに代替することで、ペーパーレス化を促進でき、貴重な紙資源の節約で脱炭素社会の実現にも貢献することができます。
下記に、電帳法に関して税理士監修のもと、「確かにそれってどうなるの?」と思ってしまうような質問にわかりやすくお答えします。
立替精算時の書類提出方法は?
改正電帳法への対応において、立替精算時に考えられる懸念点として、以下のようなものが想定されます。
- 黒塗りしてもよいのか
- 明細の内訳が不明瞭でもよいのか
これらについて、例を用いて順に回答していきます。
Q. 経費精算のときに電子データで受領した請求書に一部私的利用のものが入っている場合、今までは紙に印刷して私的利用部分を塗りつぶして提出してもらっていたが、電帳法の改正後はどのように提出すればよいですか?
原則として、電子取引を行った際に受領した電磁的記録の変更は認められません。しかし、事務処理規程で真実性を確保できる場合については、その変更内容等を規程に沿った申請を行い、その変更内容を記録・保存しておくことで、私的利用部分を塗りつぶした電磁的記録を提出することは可能だと考えられます。ただし、実際に業務フローに落とし込むと工数が著しく増加するので、現実的には難しいと思われるため、業務利用と私的利用のものは分けて購入することをおすすめします。
Q.スマホで領収書等を撮影し、クラウドの経費システムを利用して経費申請をしているが、領収書等のサイズが大きく、一部切れた画像で提出されることがあります。領収書等で必要な事項は確認できるようになってはいるものの、請求明細の内訳が見切れている状況です。問題ありますか?
請求明細(内訳)が欠けている場合は、原本と同一の内容とは言えないため、請求明細が欠けていない状態の画像を再提出依頼する必要があります。どうしても見切れてしまう場合は、欠けた画像で申請、承認などを行った後、原本を提出してもらって紙で保存するようにしましょう。
同じ書類が別仕様で2つあるときは?
同じ内容の書類でカラーとモノクロのものが存在してしまったり、PDFで受領したものと郵送で受領したものの2つがあったりと、一体どれを保存するのが電帳法への対応として適切であると言えるのか迷うケースがあると思います。これらについて例を用いてご説明します。
Q.電子データでモノクロの請求書を受領し、その後に紙でカラーの請求書を受領しました。金額など内容が同じものであっても、「同一のものとは言い切れない」と判断されるのでしょうか?また、どちらを保存すればよいですか?
カラーであることが取引情報を補完するものである場合は、それぞれ保存が必要になりますが。取引情報を補完するものでない場合は、どちらかを保存すれば問題ありません。
Q. メールにてPDFの見積書を受領した後、郵送でも同じ内容のものを受領しました。この場合、先に受領したPDFを改正電帳法に対応して保存しなければならないですか?
当事者間で電子データを原本とするとの取り決めがあれば、PDFを電子データとして保存する必要があります。書面と電子データで全く同一のものを受領した場合は、当事者間や業界の慣習や業法などにより、電子データと書面のうち原本として取り扱うことが決まっているものを原本として保存することになります。
参考:2021年11月 国税庁「お問合せの多いご質問」Ⅲ【電子取引関係】電取追1
書類に書き込み等をしたいときは?
電子で受け取った書類への書き込みの是非について、書き込みをした後の流れについても解説します。
Q. PDFの電子取引データにAdobeの機能を使用して書き込みを行って保存してもよいですか?また、承認のための電子印を追加して保存しても電子データの原本として認められますか?
PDFへの書き込みが注釈機能のようなものの場合など、取引内容が変更される恐れのないものであれば保存することも可能であるとも考えられます。しかし、PDFが仮にタイムスタンプを付されたものである場合、書き込み前後でファイルのハッシュ値が異なるため、真実性の要件を満たさなくなります。つまり、授受を行ったファイルに対して変更が行われていることになるので、PDFへの書き込みを行う前のファイルを電子取引に関する電磁的記録として保存する必要があります。なお、PDFへの書き込み行ったものは社内の確認用ファイルとして保存することになります
金額で検索するための保存対応は?
改正電帳法への対応において、「金額」で検索できる保存が可視性の要件としてありますが、その際以下のような書類の保存方法に懸念が想定されます。
- 金額が未確定な取引にかかる書類
- 分割納品の場合の納品書
- ファイル名に金額を入れて保存する書類
これらについて、例を用いて順に回答していきます。
Q.成果報酬や従量課金の契約の場合、金額が定まっていません。電子データの契約書を保存する際、「金額」で検索できる保存要件を満たすには、どのように記載をすればよいですか?
契約書上において契約金額が計算できない場合は、「取引金額なし(空欄)」もしくは0円として登録することになります。また、検索においても「取引金額なし(空欄)」としても検索できるようにする必要があります。
参考:2021年11月 国税庁「お問合せの多いご質問」Ⅲ【電子取引関係】電取追5
Q. 納品書の電子データについて、一括納品でなく分割納品となる場合、電子データの「金額」で検索できる保存要件を満たすには、一括の金額と分割の金額、どちらを記載すればよいですか?
電磁的記録上の納品書に記載されている金額で検索できるようにする必要があります。一括で記載されているのであれば、一括の金額を登録し、納品分の金額が記載されているのであればその納品分の金額で記録することになります。
Q. 電子データを保存する際、「金額」で検索できる保存要件を満たすために、ファイル名に金額を入れて運用しようと考えています。しかし、これだと1万円~2万円といった範囲検索ができないですが、この運用方法で問題ありませんか?
税務調査の際に電磁的記録の提示又は提出の要求に応じる場合は、範囲検索への対応は不要となるため問題ありません。ただし、提示又は提出の要求に応じない場合は、何らかの手段により範囲検索及び二項目以上での検索にも対応する必要があります。
紙とデータのどちらで保存すべきか迷ったときは?
改正電帳法への対応において、紙とデータのどちらで保存すべきか悩む以下のようなケースがあると想定されます。
- 紙の納品書に不備があり、電子で正しいものを受領した
- 契約書の締結は紙で行い、覚書を電子で締結している
これらについて、例を用いて順に回答していきます。
Q.紙の納品書をもらっていたが、商品内容に誤りがあったため再度もらい直した際、電子データで受領しました。その場合、どちらの納品書を保存しておくべきですか?
紙と電子データに記載された取引情報が異なるものになるので、両方とも保存が必要になります。取引先が誤って同じ書類を2通送ってきた場合など、内容が同じものであればどちらかの保存で問題ありません。
参考:2021年11月 国税庁「お問合せの多いご質問」Ⅲ【電子取引関係】 電取追1
Q.紙で契約書を締結しましたが、覚書に関しては電子で締結しました。その場合、覚書を印刷して紙で保管しても良いですか?
電子で締結したものは覚書であっても電子取引に該当しますので、紙出力したものを原本として保存することはできず、電子データとして要件を満たして保存する必要があります。なお、紙の契約書と一緒に保存するために紙出力することは問題ありません。(紙出力を禁じている法律ではありません。)
パスワード付きの書類への対応は?
企業間で書類等をメールで授受するときは、パスワードを付すことが多いです。このパスワード付きの書類についての改正電帳法への対応方法を解説します。
Q. 電子取引にて、取引先からパスワードのついた請求書を受領した場合、パスワードを外して保存した請求書は正式な請求書データとしてみなされますか?
授受した電磁的記録そのものを保存することが理想ですが、保存する上で不適当もしくは保存が困難なファイル形式の場合は、合理的な方法による編集が認められています。
なお、タイムスタンプが付されたものについては、上記の作業を行うとハッシュ値が変更されるため別の手段での保存が必要になります。また、パスワード制限のついたPDFファイルを、印刷機能を利用してPDFにしたことにより取引情報が失われないのであれば、パスワード解除後のPDFファイルでの保存も認められます。
参考:2021年11月 国税庁「お問合せの多いご質問」Ⅲ【電子取引関係】電取追2及び3
データ量が膨大な場合の対応は?
膨大な保存対象データの保有や多店舗展開を理由に複数箇所で保存していて、それらが改正電帳法に反していないか不安になることがあると思います。これらについて例を用いて解説します。
Q. 保存対象となるデータ量が膨大で複数の媒体に保存しています。そのため一課税期間を通じて検索できませんが、問題ありますか?
保存されているデータは、原則として一課税期間を通じて検索できなければならないため、特別な事情がない限り認められません。ただし、半期ごとに帳簿を作成しているなど、合理的な理由がある場合はその期間ごとに検索できれば問題ありません。
参考:2021年12月 国税庁「電子帳簿保存法一問一答」【電子取引関係】問17
Q. 複数の支店や拠点で事業展開している場合、それぞれの支店・拠点で電子データの保管をしていますが、これは検索要件を満たしていますか?
それぞれの支店・拠点での情報量が多いなど合理的な理由がある場合は、それぞれの支店・拠点単位でのExcelファイルでの検索簿でも問題ありません。
書類を修正したいときは?
書類データの期限が切れていたり、受領した書類の内容が誤っていたりと、書類に何かしらの不備があった場合の改正電帳法への対応において、どのように対応すべきか迷うことがあると思います。これらについて例を用いてご説明します。
Q. 電子データで受領していた見積書の期限が切れた後に発注することになったため、再度見積書を提示してもらったが、その場合は上書きして新しい見積書だけを保存すればよいですか?
取引に関して授受を行った書類に該当するため、期限切れの見積書についても保存が必要です。
Q. 受領した納品書の電子データが間違っていましたが、修正していません。こちらはそのままでも問題ありませんか?
間違っている内容が重要(取引日、取引内容、金額等)なものであれば、修正版の送付を依頼し当初のものと修正版の両方を保存してください。間違っている内容が軽微なものであれば、修正していないものであっても問題ありません。修正版の保存が必要な金額が誤っているケースとしては、桁数の誤りや、明細と合計の金額不一致などが想定されます。
印紙ありの書類はスキャナ保存できるの?
電帳法の改正後から、スキャナ保存した書類の原本は破棄して問題なくなります。これについて、対応方法に困ると想定されるケースについて解説します。
Q. スキャナ保存で電子保存後、原本は破棄して問題ないと考えていますが、印紙が貼ってある領収書や請求書などでも電子データがあれば原本の保存は不要ですか?
印紙貼付の有無はスキャナ保存の要件とはなっていないため、印紙が貼付された領収書・契約書等であってもスキャナ保存することは可能です。なお、原本を破棄した場合は、印紙税の過誤納申請ができないこと及び民事訴訟法ではスキャナ保存データは原本とはならないことに留意が必要です。
電子書類に押印したいときは?
今まで紙で授受して押印していたものが電子になると、どう対応したらよいのか不安になる方もいると思います。電子取引で生じる書類への押印に関して、例を用いて解説します。
Q. 請求書等に承認スタンプを押しているため、電子データの場合も承認スタンプを押す予定です。そうすると、PDFにスタンプが追加されるので原本に訂正を加えたという扱いになってしまいますか?
承認スタンプが注釈機能のようなものの場合、取引内容が変更されるおそれがないものとして保存することが可能であると考えられます。ただし、仮に当初データをタイムスタンプの付されたものとした場合、ファイルのハッシュ値が異なることになり、真実性の要件を満たさなくなります。つまり、授受を行ったファイルに対し変更が行われているということになりますので、承認スタンプを押す前のファイルを電子取引に関する電磁的記録として保存する必要があります。その場合、承認スタンプを押したものは社内の確認用ファイルとして保存することになります。
Q. 電子取引で請求書のやり取りをする場合、請求書への押印はどのようにすればよいですか?
請求書への押印は、国税関係の法律において特に定めはありません。したがって、以下3つの対応方法が考えられます。
①押印したものをスキャナで読み取り、その電磁的記録を相手方へ送信する
②押印をせずに送信する
③請求書上に押印画像を付して送信する
罰則はあるの?
法改正が行われることで気になるのは、それを守らなかったときにどのような不利益があるかだと思います。改正電帳法の罰則について解説します。
Q. 「電子取引情報」を電子データで保管していなかった場合の罰則は、どのようなものが考えられますか?
電子取引を行い、その電子取引の電磁的記録(電子データ)を保存していなかった場合は、法人税法等で定められている帳簿書類の保存を適正に行っていないことになるので、青色申告の承認を取り消されることが有り得ます。また、適正に電子データを保存していないことが、偽りその他不正の行為に該当することとされたときは、法人の場合は10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金(法人税法第159条)となることがあります。
対象範囲は?
改正電帳法への対応において、扱っている書類が対象範囲のものか分からなくなるケースとして、以下のようなものが想定されます。
- 売上伝票などの伝票類
- 対応するのは改正後に受け取ったものか、もしくは改正後に取引が発生したものか
- 受注しなかった見積書
- 電子保存をしてはいけない書類はあるのか
- 海外との取引で生じた書類
これらについて、例を用いて順に回答していきます。
Q.売上伝票などの伝票類も電帳法の対象になりますか?
作成用途によって異なります。伝票が国税関係帳簿の記載内容を補充する目的で作成され、その伝票が帳簿の一部を構成する場合は「国税関係帳簿」となり、電帳法の対象となります。一方で、売上伝票などが、企業内での決裁や整理などを目的として作成されている場合は、国税関係書類に該当しないため、電帳法の対象にはなりません。
Q. 改正電帳法に対応すべき書類は、2024年1月1日以降に受け取ったものが対象でしょうか、それとも発生した取引が対象ですか?
改正電帳法の適用は2024年1月まで宥恕措置期間として猶予されているものの、正式には2022年1月から適用開始されています。スキャナ保存は2022年1月1日以降に保存する書類が対象となり、電子取引については2022年1月1日以降に行う電子取引が対象となります。
Q. 受領した見積書は契約に至ったものだけに保存の義務がありますか?
法人税法や電帳法上において「取引に関して」との記載がありますので、原則として取引が行われることを想定して作成又は受領した見積書は、契約の有無に関係なく保存が必要です。例えば、複数社に相見積もりを行い、その中の1社と取引を行った場合は、「取引に関して」受領した見積書になりますので、保存が必要です(契約に至らなかった見積書の保存がなくても税務調査の際に厳しく言われることは少ないと考えられます)。例外を設けて保存対象外とすることも考えられますが、取引に至っていないことを証明することが困難なので、全ての見積書を保存することを推奨します。
Q. 電子保存が認められない国税関係書類はありますか?
電帳法全体としては電子保存が認められない書類はありませんが、電子保存の方法ごとに保存できない書類は存在します。例えば、スキャナ保存の場合は、システムで一貫して作成した国税関係書類についてはスキャナ保存で対応することはできません。
Q. 海外との電子取引に関しても、電帳法の対応が必要ですか?
国内と国外で電帳法の対象に差はありません。海外の企業から受領する書類であっても、海外の企業に対しての発注であっても、電子取引を行っているのであれば電帳法の対象になります
FAXで授受する書類はどうなるの?
FAXで取引した書類に関して、原本とみなされるか否か、紙取引に該当するか否かが分からず、電帳法にどのように対応すべきか不安になる方もいると思います。これらについて、例を用いて回答していきます。
Q.FAXで受信出力された書類は書類原本とみなし、電子取引情報ではないという理解で間違いないですか?
「ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用」した場合は電子取引との記載がありますので、FAXからPDF等でデータ出力している場合は電子データ、紙で出力されるFAXであれば紙の保管という解釈で良いと考えられます。そのFAXがPCとの接続機能等を有しておらず書面でのみ出力できるものの場合は、電子取引には該当しないため、FAXから出力された書面を保存することになります。
Q. FAXで送信したものは紙取引に該当しますか?
送信側も紙を取り込んで送信している場合は、紙取引になります。一方で、複合機を介してPC等から直接PDFを送っている場合などは、電子取引という整理で良いと考えられます。
USBメモリで受け取った書類は?
データ量が膨大なため、USBメモリで書類を受け取ることもあるかと思います。そういったケースでの電帳法への対応について解説します。
Q. 見積書とパンフレットを同時に受領する際、データ量が多いことからUSBメモリで受領しましたが、どのように保存すればよいですか?
保存媒体については電帳法上特に規定はありませんので、検索要件等を満たすことができるのであれば、USBメモリのまま保存しても問題ありません。パンフレットについては、見積書を補完するものでなければ電帳法上の保存対象ではありません。