コスト削減の必要性とは?どう進めればいいの?メリットや方法について解説

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コスト削減の必要性とは?どう進めればいいの?メリットや方法について解説
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長らく続く経済の停滞に加えた昨今の物価高騰により、あらゆる企業で経費の削減は喫緊の課題となっています。しかしながら、まずは何から手を付けてよいか頭を悩ませる方々も多いかと思います。この記事では、コスト削減の必要性や進め方、注意点などについて解説します。


コスト削減の必要性

コスト削減の効果は誰もが理解していますが、その明確な必要性についてはあまり知られていません。まずは、コスト削減が必要な理由について確認していきましょう。

経費活用により「収益増加」が見込める

コスト削減前のムダを見直し、必要な業務や部門に資金を投入することで、売り上げの増加を期待することができます。例えば固定費を削減し営業経費を増やすことで、営業効率を高めて顧客拡大を後押しする手法も、収益増加に繋がる取組みのひとつ。資金活用の最適化による戦略です。

また、業務に必要なツールやシステムの導入に費用を当て、組織全体の業務効率化を図ることも収益増加を画策するうえで大変有効な手段。時代の変化に伴い働き方が大きく変わりつつあるなかで、コスト削減を足掛かりとした利益拡大を考える組織が増え始めています。

売上換算した際の効果が非常に大きい

コスト削減した金額を売上に換算した場合、財務へのインパクトが非常に大きくなることをご存じでしょうか。例えば、営業利益10%の企業が年間100万円の経費削減を行った場合、単純計算でも1,000万円の売上に相当する価値があるのです。(100万円÷10%=1,000万円)

不安定な社会情勢が続く昨今、組織として純粋な売上を増加させることが困難な状況がありますが、そのような状況下でも、組織を後押しすることができるのが経費削減のメリットです。さらに固定費の削減であれば効果は一度きりではなく、今後も継続されるものになります。毎年100万円の経費削減が続くと考えれば、バックオフィスのみならず社内一丸となって取り組む価値のあるタスクだと言えるでしょう。

コスト削減の方法

コスト削減の方法には実際にどのようなものがあるのでしょうか。コスト削減に取り組む企業で行われることの多い、一般的な手法をここでは確認します。

固定費の削減

人件費や福利厚生費のほか、家賃・通信費・光熱費など大きな変動が無い、固定費の削減が最もポピュラーな方法です。毎月、あるいは一定の期間で発生する費用の削減は、難しい部分もありますが効果は絶大。一度実行すれば、継続した費用圧縮となることが大きな特徴です。

多くの組織でも一番初めに着手するのが、この固定費の削減。なかでも最も検討しやすいのは、通信費や光熱費、広告宣伝費の部分。社員の通信手段や社内固定電話のプランの見直しをはじめ、地域によっては新電力会社との料金比較をしてみることも有効です。現状の広告宣伝の効果も含め、見直し・検討を実施しやすいカテゴリとなっています。

変動費の削減

売上原価や材料費、移動運送費や消耗品費など、売上の増減によって変動することのある費用が固定費に当たります。誤った経費削減をしてしまうと業務上の非効率を生むカテゴリでもあり、売り上げに大きく影響がでる場合もありますので注意が必要です。

順序としては固定費から着手し、その後にさらにコスト削減をおこなう場合は変動費をチェックしていく流れが良いでしょう。変動費のなかで言うならば、日々の営業活動などで必要となるツールなどの消耗品費や移動費は、比較的見直しやすいポイントです。売上に影響がでにくいものから検討をし、慎重に削減を進める必要があります。

製造原価の削減

全社活動への展開
全社や個別事業部のコストダウン活動全体の推進体制と役割分担(目標設定、原価管理、事務局部署など)を明確にし、調達コストダウン活動もその重要な一環として位置づけて取り組むことが重要です。
設計仕様が決まれば調達コストの大半が決まってしまうため、新規開発品の開発段階で、生産技術や調達・購買部門、サプライヤーが参画して企画原価の設定とその達成を図る仕組みを組み込みます。重点サプライヤーについては、固有技術や管理技術の向上支援など、量産段階の原価低減への支援体制も検討する必要があります。

目標の設定
全社および事業部の利益計画(中期・年度)達成に寄与する一環として原低目標を設定します。
目標は中期や年度ごとに組織別、担当別、更にはサプライヤー別に細分化し、実行主体を明確にします。
また、進捗管理責任の所在も明確となっている目標は中期や年度ごとに組織別、担当別、更にはサプライヤー別に細分化し、実行主体や進捗管理責任の所在も明確にします。

施策の実行
①開発構想段階の早期から設計部門と共同して部品や材料の共用化、標準化、小型化、軽量化などの原価低減策に取り組みます。
②サプライヤーからのVE/VA提案の授受・評価・採用の仕組みを構築し、サプライヤーのコストダウンアイデアを効果的に製品開発に活用するようにします。
③全社およびグループ企業も含めて、分散・集中購買に関する方針を周知し、スケールメリットが生かせる原材料や部品に関してはグローバル集中購買による最適サプライヤーへの発注を推進します。
④コスト構造の把握と価格査定への活用するため、コストテーブルの活用や日常的な現地現物調査によりサプライヤーのコストを熟知する活動に取り組みます。
⑤調達品目の特性に応じ、発注先の多角化や選別・集約等の、最適な発注方針を選択します。また、いずれの品目においても、競合見積もりを通じて競争状態を創出し、業界NO1コストの実現を目指します。重点サプライヤーついては、モノづくり面での原価低減活動支援を依頼します。

データの利活用
原低活動事例、原価企画活動事例、折衝履歴などの原低ノウハウを整備し、更新します。
材料、部品のコスト情報の収集蓄積が図り見える化します。
またティアダウン等の取り組みにより競合他社のコスト情報を収集蓄積する取り組みが行われている材料、部品のコスト情報の収集蓄積を行います。

評価・フィードバック
新製品の開発プロセスでは、性能や品質目標などともに企画原価の達成状況をモニターし、タイムリーに活動に反映します。
量産段階の原低目標は、月次で達成状況が評価されて活動の見直しや部品別発注方針へとフィードバックを行います。

DX推進

働き方改革や業務効率化の観点からも注目を浴びている、DX(デジタルトランスフォーメーション)も近年を代表するコスト削減の方法です。例えば、紙で管理してきた契約や見積もり、顧客情報の管理をデジタルに集約することで、これまで必要だった費用を大きく削減できるケースも多くあります。

紙ひとつに注目しても、紙の購入費用や廃棄費用、発注から保管場所に関する費用までを、まとめて削減することが可能です。書類を探す手間やファイリングに掛かる人件費なども不要になることから、DXを推進する企業が増え続けているのです。幅広い業務に対応するクラウドサービスが利用できる昨今では、組織の課題にあわせて活用することでコスト削減を実現することも可能となっています。

コスト削減の注意点

コスト削減は絶大な効果をもたらす場合もありますが、一方でやり方を誤れば逆効果を招くこともあります。やってはいけないことを含めたコスト削減の注意点を、最後に整理します。

社員の意識は経営・管理者層と同じではない

現場で働く社員にとっての「コスト削減」は、メリットを感じなければ実は関与したくない分野です。経営層やバックオフィスを支える管理者層とは、モチベーションや意識が大きく違う点に注意が必要だと言えます。

しかしコスト削減の取り組みは、組織が一丸にならないと大きな成果は上がりにくいもの。そのため、社員を意欲的にするインセンティブや、新たな評価指標の導入なども考えなければいけません。日々現場で働く社員だからこそ気づくムダも意外と多くあります。そのような観点からも現場の社員の意欲を呼び起こし、想いを共にして取り組める環境づくりも非常に大切です。

働く意欲やサービスの低下を招いてはいけない

現場の意欲低下や自社サービスのクオリティの低下を招かないよう、注意することも必要です。比較的大きな割合を占める人件費や原材料費などは、安易に削減すると売上の低下に直結する部分でもあります。最悪の場合、顧客や社員からの信頼を失う部分でもありますので、影響を充分に想定したうえで実行することが大切です。

また、働く環境に関わる費用や福利厚生費の削減も、同様に社員の意欲に関わる部分。見かけ上経費は大きく圧縮できるものの、結果的に売り上げが下がってしまえば逆効果です。クライアントや社員の心の動きも意識しながら、無理のない部分から着手する方が良策と言えるでしょう。

コスト削減を目的にしてはいけない

コストの削減を「目的」にしてしまうと大きなトラブルに繋がりますので注意しましょう。あくまでもコスト削減は、利益を最大化し組織を発展させるための「手段」のひとつ。目的と手段を履き違えることで組織が培ってきたものを失わないよう、目指すべき未来も共有しながら進めることが大切です。

また、むやみにアウトソースして人件費を削減したり、結果が出てないからと言って事業をどんどん減らせば、組織における将来性を失う場合もあります。コスト削減をおこなう目的は何かを明確にしたうえで取組み、未来にも目を向けながら着手することをお薦めします。

まとめ

不安定な情勢と働き方の変化をうけ、コスト削減に取り組む企業が増えてきています。
削減した金額を売り上げ換算した場合の価値は、財務においても非常にインパクトのあるもの。
この部分だけでも、有益な取組みであることが理解できるのではないでしょうか。

まずは、働く意欲やサービスを落とすことのないよう配慮し、無理のない範囲から着手することが良策。
多くの企業が取り組み始めているDXを視野に入れながら、組織発展・利益向上を目的としたコスト削減を進めていくことをお薦めします。

(参考)コストマネジメントの要業績評価指標(KPI)

開発購買実施対象プロジェクト数

特定の期間内に調達部門が開発購買を実施したプロジェクトの数を示します。開発購買とは、新製品の開発や改良に必要な部品や素材の調達を指し、この指標はその実施範囲を把握するのに役立ちます。

 

開発購買実施対象品目数

特定の期間内に調達部門が開発購買を実施した品目の数を示します。開発購買には複数の品目が含まれる場合があり、この指標は調達の多様性や範囲を把握するのに役立ちます。

 

開発購買目標原低額、目標原低率

開発購買における目標原価低減額や率を示します。開発購買では、原価の低減が重要な課題とされることがあり、この指標はその目標を定量化し、追跡するのに役立ちます。

 

VE/VA提案件数(調達部門)

調達部門が行った価値工学(Value Engineering)や価値解析(Value Analysis)の提案件数を示します。VE/VAは製品やプロセスの改善を図るための手法であり、この指標は調達部門の改善活動の実施状況を把握するのに役立ちます。

 

VE/VA採用率(調達部門)

調達部門が行ったVE/VA提案のうち、実際に採用された割合を示します。採用された提案の割合を把握することで、調達部門の改善活動の成果を評価するのに役立ちます。

 

VE/VA提案件数(サプライヤー)

サプライヤーが行ったVE/VAの提案件数を示します。サプライヤーからの提案も重要な改善の源泉となるため、この指標はサプライヤーとの連携や改善活動の進捗を把握するのに役立ちます。

 

VE/VA採用率(サプライヤー)

サプライヤーが行ったVE/VA提案のうち、実際に採用された割合を示します。サプライヤーからの提案がどれだけ採用されているかを把握することで、サプライヤーとの協力関係や改善活動の成果を評価するのに役立ちます。

 

集中購買品目数

特定の期間内に調達部門が集中購買を行った品目の数を示します。集中購買は、特定の品目を選択して効率的な調達を行うことを指し、この指標はその実施範囲を把握するのに役立ちます。

 

集中購買率増減

特定の期間内における集中購買の割合の増減を示します。過去の期間と比較することで、集中購買の進捗や変化を把握するのに役立ちます。

 

コストテーブルカバー率(品目数)

調達部門が管理するコストテーブルに含まれる品目の割合を示します。コストテーブルには通常、重要な品目や購買項目が含まれており、この指標はそのカバレッジの程度を把握するのに役立ちます。

 

コストテーブルカバー率(金額)

調達部門が管理するコストテーブルに含まれる金額の割合を示します。コストテーブルに含まれる金額が全体の調達金額に占める割合を把握することで、予算管理やコスト削減の進捗を把握するのに役立ちます。

 

コストテーブル活用率

調達部門が管理するコストテーブルを活用して調達活動を行う割合を示します。コストテーブルは調達の基準やガイドラインを提供する重要なツールであり、その活用状況を把握することで、効果的な調達プロセスの推進を評価するのに役立ちます。

 

見積取得率

特定の期間内に調達部門が見積もりを取得した割合を示します。見積もりの取得は、競争力のある価格の確保や調達プロセスの透明性を向上させるために重要です。

 

サプライヤー改善指導回数

特定の期間内に調達部門がサプライヤーに対して行った改善指導の回数を示します。改善指導は、品質や納期の改善、原価の削減などを目的とした重要な活動であり、この指標はその実施状況を把握するのに役立ちます。

 

改善指導対象サプライヤー数

特定の期間内に改善指導を受けたサプライヤーの数を示します。調達部門が改善指導を行う対象となるサプライヤーの数を把握することで、改善活動の範囲や対象を把握するのに役立ちます。

 

改善指導対象サプライヤーカバー率

特定の期間内に改善指導を受けたサプライヤーの割合を示します。調達部門が改善指導を行う対象となるサプライヤーの割合を把握することで、改善活動の実施状況や効果を把握するのに役立ちます。

 

原価ノウハウ整備件数

特定の期間内に調達部門が原価に関するノウハウを整備した件数を示します。原価の把握や分析は、効率的な調達活動や原価削減のために重要な要素であり、この指標はその取り組みの進捗を把握するのに役立ちます。

 

原価ノウハウ報告会開催回数

特定の期間内に調達部門が原価ノウハウに関する報告会を開催した回数を示します。原価ノウハウの共有や学習は、調達部門内の意思疎通や能力向上に寄与する重要な活動であり、この指標はその実施状況を把握するのに役立ちます。

 

明細見積取得率

特定の期間内に調達部門が製品やサービスの明細見積もりを取得した割合を示します。明細見積もりの取得は、調達の透明性や競争力の向上に寄与する重要な活動であり、この指標はその実施状況を把握するのに役立ちます。

 

ティアダウン実施回数

特定の期間内に調達部門がティアダウンを実施した回数を示します。ティアダウンとは、製品やサービスの原価構造を分析して原価を削減する活動であり、この指標はその実施状況を把握するのに役立ちます。

開発購買実績原低額

特定の期間内に開発購買で実績のある原価低減額の合計金額を示します。開発購買プロジェクトにおいて原価低減が実現されることは、コスト削減や効率改善に寄与します。

 

VE/VA原低金額(調達部門)

特定の期間内に調達部門が提案した価値工学/価格価値分析(VE/VA)によって実現した原価低減額の合計金額を示します。VE/VA活動は、製品やプロセスの改善を通じてコストの削減を促進します。

 

VE/VA原低金額(サプライヤー)

特定の期間内にサプライヤーが提案した価値工学/価格価値分析(VE/VA)によって実現した原価低減額の合計金額を示します。サプライヤーが積極的にVE/VA活動に取り組むことは、両者の共同目標であるコスト削減に貢献します。

 

集中購買原低金額

特定の期間内に集中購買戦略に基づいて実現した原価低減額の合計金額を示します。集中購買は、大量購買や戦略的なサプライヤー選定を通じてコストを削減することを目指します。

 

査定原低金額

特定の期間内に品質査定に基づいて実現した原価低減額の合計金額を示します。品質査定によって品質改善が実現され、コストが低減されることが期待されます。

 

改善指導原低金額

特定の期間内に改善指導活動に基づいて実現した原価低減額の合計金額を示します。改善指導によってサプライヤーのプロセスや品質管理の改善が促進され、コスト削減が実現されます。

 

企画原価達成率

特定の期間内に予定されていた企画原価に対する実際の原価達成率を示します。企画原価の達成率が高いほど、製品の設計や生産プロセスが効率的であり、コスト削減が達成されていることを示します。


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