発注業務の自動化の方法|期待できる効果や問題点とは
アナログで処理していた発注業務は、自動化システムの導入により効率化が期待できます。
人件費の削減や受注機会の増加も期待できるため、導入後は利益が上がる可能性もあります。
しかし、発注業務の自動化の方法がわからない方やどれほどの効果が期待できるのか、導入後に考えられるリスクなど問題点はないか気になる方も多いでしょう。
そこで本記事では、発注業務の自動化方法を5つご紹介するとともに、導入後に期待できる効果や問題点について解説します。
また、発注自動化システムを選ぶ際のチェックポイントも解説しています。
どのシステムを選ぶべきか迷っている方はぜひ参考にしてください。自動化されていない発注業務においてよくみられる課題
発注の業務にて、一般的に起こりうるリスクは主に以下の4つです。
これらについて理解を深め、発注業務の自動化のメリットや目的を再認識しましょう。
・人手が足りない
・頻繁に発注ミスが生じる
・属人化によって効率が悪くなる
・データ管理が煩雑になる
人手が足りない
1つの製品に対して多くの部品や工程を必要としたり、確認作業を要したりすることから、手動による発注においては、人手が足りなくなるケースがみられます。
人手が足りなくなると残業や休日出勤の発生・担当者の集中力低下・顧客満足度の低下などの二次的なデメリットも生じかねません。
ミスやトラブルが生じると、仕事にかかる負荷が増すため、より一層労力を要することになるでしょう。
頻繁に発注ミスが生じる
発注業務を自動化していない場合、アナログ的な処理となるため頻繁に発注ミスが生じる場合があります。
例えば数量や商品番号などの誤入力、未申請などです。
人的ミスが生じると、不良在庫が生まれたり欠品による機会損失が生じたりして、経済的に大きなダメージを被る場合があります。
また、ミスのフォローが必要とされることから、業務効率にも悪影響が生じるケースが大半です。
発注業務においては、やるべき業務が大量にあるため、担当スタッフ一人ひとりの意識やチェック体制の強化による対策では限界を感じられるケースもあるでしょう。
属人化によって効率が悪くなる
属人化とは、業務の遂行・進捗管理を特定の社員に依存している状態を指します。
発注業務を特定の1人しか対応できないなどの「属人化」が生じると、以下のリスクにつながります。
・担当者不在時に対応が遅れやすくなる
・ノウハウを引き継げない
・部署の仕事が担当者の独断に委ねられる
属人化が生じると、結果的に効率が悪くなる可能性が高いです。
データ管理が煩雑になる
発注業務が自動化されていない場合は、データの管理が煩雑になりがちです。
自動化されていれば自ずと情報が一元管理され、数値の共有やフォーマットの統一化がおこなわれます。
しかし、自動化されていない場合には、おのおのの場面で個別に情報を管理することになりがちであるためです。
データの煩雑化は、結果的には情報を探す時間や負荷が重くなってしまったり、効果的な分析が難しくなってしまったりするなどのデメリットにもつながります。
発注自動化システムで利用できる機能
受発注を自動化できるシステムで利用できる機能は、大まかに分けて以下の3つです。
・自動発注機能
・検収・請求・支払いの自動化
・そのほかの業務
自動化システムを選ぶときは、どのような機能が搭載されているかが大きな判断ポイントになります。
自社に合ったシステムを導入するためにも、まずは機能について理解を深めましょう。
自動発注機能
自動発注機能は、購買計画・生産計画・販売計画・購買予測にもとづいて、発注データを自動作成する機能です。
過去の実績から立てた売り上げ予測に沿って発注数が定められるため、過剰在庫や過小在庫を回避し、効率的に発注数量を管理できます。
また、発注先(サプライヤー)とのデータ自動連携(EDI、WEB-EDIを利用)できるものもあります。
自動発注機能ではこれらの機能により、発注業務の手間を大幅に削減し、効率化を実現可能です。
検収・請求・支払いの自動化
検収業務以降の請求書受取や支払いについても、発注自動化システムで利用可能です。
このほかにも、電帳法やインボイス制度に対応した検収・請求・支払いの自動化もできます。
検収以降の業務を自動化することで、さらなる業務効率化・ミスの低減・人件費削減・情報漏えいリスク対策などの効果を得られるでしょう。
さらに業務を自動化することで、購買データの分析や可視化にフォーカスし、管理体制を強化することも可能です。
頻繁に変化する法令への対策や複雑な計算など、検収・請求・支払い業務の自動化は大きなメリットをもたらすでしょう。
そのほかの業務
発注自動化システムは、購買先情報の管理や発注履歴の管理、外部データとの連携などを搭載しているものもあります。
これらの機能を効果的に活用することで、情報の一元管理やサプライチェーン全体での効率化をはかることができます。
さらには、取引先を業種ごと・地域ごと・取引頻度などの条件によって分類して、購買先の評価に活用することも可能です。
会計システム・在庫管理システム・顧客関係管理・コミュニケーションツールなどと連携をさせることで、さらに細やかかつスピーディな連携が可能です。
外部データとの連携に関しては、導入する発注自動化システムだけでなく、既存のシステムとの相性についても確認する必要があります。
発注業務を自動化する方法
発注業務を自動化する方法としておすすめなのは、以下の2つです。
・iPaaSやEAIなどのプラットフォームとEDIを連携させる
・調達・購買システムを導入する
マクロ・VBAの活用によって計算式を自動化することもできますが、プログラミング言語の習得が必要になるため実際に使い始めるまでに時間がかかる可能性があります。
そのため、すでに完成されているシステムの活用がおすすめです。
iPaaSやEAIなどのプラットフォームとEDIを連携させる
1つ目は、iPaaS(Integration Platform as a Service)やEAI(Enterprise Application Integration)などのプラットフォームとEDI(企業間取引における情報を電子データで自動的にやりとりする仕組み)を連動させて、既存のシステムと発注自動化システムを連携する方法です。
従来は、EDIにより自動化するためには、高度の専門知識が必要とされたため、導入コストが高額でした。
iPaaSやEAIと連携させることで、プログラミングの技術者がいなくても、ドラッグ&ドロップなどの比較的シンプルな操作で、発注業務を自動化できます。
調達・購買システムを導入する
2つ目は、調達・購買システムを導入する方法です。
すでに完成されているパッケージタイプもあれば、必要な機能を加えたり消したりできるカスタマイズ性の高いものもあります。
その中でもS2Pシステムは、見積、契約(Sourcing)~発注、検収、支払い(Pay)までの調達購買プロセス全体を網羅したシステムです。
発注自動化機能に加えて、サプライヤー管理、購買分析、契約管理などの機能も提供しているため、受発注業務にかかる負担が軽減できるでしょう。
発注自動化システム導入後に期待できるメリット
発注自動化システムの導入におけるメリットは、従業員の負担軽減だけではありません。
コスト削減や収益性向上が図れるほか、業務効率化・データ管理の改善も期待できます。
コスト削減・収益性向上
1つ目のメリットは、コスト削減・収益性向上です。
発注自動化システムの導入でこのようなメリットが得られる理由は、損失を軽減するほか従業員の負担が減ることで受注機会の増加が期待されるからです。
また、適切なタイミングでの発注により機会損失の低減も考えられます。
在庫の過剰・不足の削減
発注を自動化するために在庫管理の機能を使用すれば、適切な在庫管理ができます。
在庫が適切に管理されていない場合の問題は以下のとおりです。
○在庫が過剰な場合に生じる問題
・資金の圧迫
・倉庫スペースの占有
・不良在庫の発生
・在庫の長期保管による商品の劣化
・在庫管理コストの増大化
○在庫が少なすぎる場合に生じる問題
・出荷遅延
・在庫不足による顧客の損失
・顧客満足度の低下
自動化することにより、常に在庫が適正な状態になるよう管理できます。
機会損失の低減
発注の漏れ・在庫の見誤り・急な大口の注文の直後などに欠品が生じた場合に、在庫を用意できずに機会損失が生じる場合があります。
さらに、そのまま顧客を競合他社に奪われるケースも考えられます。
発注の自動化により、在庫が一定数を下回った際に自動的に補充される仕組みを設定すれば、過剰在庫を持つことなくリスクを抑えることが可能です。
購買コストの最適化
発注業務を自動化することにより、購買コストを最適化できる場合もあります。
・定期的な仕入れや大量仕入れによるボリュームディスカウントの結果、コスト削減につなげる
・発注数量の偏りをなくすことで、毎月のコストを一定化させる
・発注業務における手間を軽減して、人件費などの間接コストを削減する
上記により、コストの最適化を期待できます。
顧客満足度の向上
発注の自動化は、顧客満足度向上にもつながります。
自動化させることで、データ入力の間違いや発注漏れなどをカバーできるためです。
さらに、発注業務の負担が軽減されることにより、自社のスタッフは顧客対応などに注力し、サービスの向上に努めることが可能です。
一方で、在庫切れによる出荷の遅延や発注ミスによるご配送などは、顧客に損失を与えかねません。
また、発注ミスを繰り返していると、顧客からの信頼を失う結果にもつながります。
このように発注の自動化を顧客満足の向上につなげることが可能です。
受注機会の増加
発注業務をアナログで行っている場合、どうしても人員が足りず発注数が限られてしまうことがあります。
あるいは、発注前後の工程での作業負担の面で、発注数量を絞らざるを得ないケースもあります。
しかし、自動化システムを導入すれば作業時間が増やせるため、その分受注数を増やすことができるでしょう。
また、1回で注文できる許容量が増えれば大ロットでの受注も可能になるため、受注機会の増加が期待できます。
業務効率化
2つ目のメリットは、業務効率化です。
これまで人間が行っていた作業を自動化することによって、作業効率が向上します。
そのため、業務時間の短縮や人員の削減につながります。
リードタイム短縮
リードタイムとは、製品の開発から納品までにかかる時間のことです。
多くの部品・工程を要する製品の場合は、そのうちの一つでも欠品・在庫不足が生じると、全体に影響が生じます。
また、担当スタッフが発注業務をおこなう場合は、スタッフの処理待ちにより納期がずれ込むケースもあるでしょう。
自動化することにより、工程全体の納期が最適化され、リードタイムを短縮化できます。
情報の全体共有
システムを活用することで、社内や取引先と発注・購買関連のデータを一元化できます。
一元化することでスタッフ一人ひとりが状況を正確に把握し、前後の工程を意識した仕事を進めることが可能です。
また、ある部署の担当者が不在であっても、全体が見える化されていれば業務を滞りなく進められます。
結果的に、生産工程全体をスムーズに管理できます。
業務の標準化・属人化防止
アナログ的に処理している場合、発注業務が属人化しやすくなります。
属人化のデメリットは、以下のとおりです。
・担当者が不在の場合に、発注業務が滞る
・情報共有が不十分になり、ミス発生の原因になる
・人員配置の際に制限が生じる
・発注担当者が不正などのコンプライアンス違反をしたときにチェック機能が働きにくくなる
自動化システムを導入すればだれでも業務内容や進め方を把握できるため、属人化を防止できるでしょう。
また、業務の標準化も可能になるため効率も向上するはずです。
ほかのシステムとのデータ連携
すでにほかのシステムを使っており、業務の効率化を図っていることもあるでしょう。
その場合でも、自動化システムにデータを連携できます。
もしお使いのシステムがあれば、それと連携可能か導入前に確認しましょう。
データ管理の改善
3つ目のメリットは、データ管理の改善です。
システム上でデータを管理することによりセキュリティ面が強化されるほか、情報を必要なときにすぐ確認できるようになります。
そのほか、データ管理の改善で得られるメリットは以下の3点です。
これらは収益性の向上や業務効率の向上に役立ちます。
・収集したデータを販促に役立てられる
・購買部門と他の部署とを連携させられる
・データの透明性が高まる
発注自動化システム導入後に懸念されるデメリット
発注業務を自動化した場合、懸念されるリスクは主に以下の3点です。
・システム導入の難易度が高い
・導入にコストがかかる
・システム障害やセキュリティ関連のリスクがある。
システム導入の難易度が高い
発注自動化システムの導入は「難易度が高い」ことが懸念されることもあります。
なぜなら、自社に合ったシステムを選ぶのに時間がかかってしまうからです。
また、導入後に従業員がすぐシステムに慣れてスムーズな発注業務ができるとは限りません。
あまりに操作が複雑すぎると、かえって業務効率が落ちることも考えられます。
導入にコストがかかる
発注自動化システムを導入する場合、初期費用と月額使用料がかかります。
企業規模や利用する機能によっても価格は異なりますが、スタンダードなタイプでも毎月数万円単位でのコストが発生します。
すでに完成しているパッケージソフトの場合は、4,000,000円以上かかることもあるようです。
そのため、導入コストに見合う収益が出せるかどうかをシミュレーションしたうえで検討すると、結果的に満足できるシステムを導入できるでしょう。
システム障害やセキュリティ関連のリスクがある
クラウドタイプの発注自動システムの場合、システム障害やセキュリティ関連のリスクは捨てきれません。
パッケージソフトであっても、インターネットに接続していれば通信障害の影響を受けることもあるでしょう。
システム障害やセキュリティ関連のリスクが気になる場合は、すぐに対応可能なベンダーであるかを導入前に確認しておく必要があります。
公式サイトはもちろん、同業者からの口コミなども参考にしたうえで検討しましょう。
発注自動化システム導入の手順
発注自動化システムを選ぶ際の手順とチェックポイントについて解説します。
「どのようなシステムを選べばよいかわからない」
「システムを導入するのになにから始めたらよいかわからない」
このようにお悩みの方は、これからご紹介する手順に沿って導入を進めてください。
導入手順の明確化
発注自動化システムを導入していつから本格稼働させるのか、本格稼働までにどのように従業員に操作を学ばせるかなど、導入時期や本格稼働までの手順を明確化します。
特に、本格稼働するタイミングは重要です。
それは、業種によって繁忙期や閑散期が異なるためです。
また、毎年多くの新入社員が入社する企業であれば、4月に導入すると新人への指導も必要になり従業員に大きな負担がかかってしまうことでしょう。
そのため、本格稼働するまでの手順を明確化しておくことが初めに必要になります。
予算の確定
次に、予算を確定します。
先ほど「発注自動化システム導入後に懸念されるデメリット」で解説したように、システム導入時はコストがかかることがデメリットです。
そのため、導入にかかったコストを利益が上回るようなシステムを選ぶ必要があります。
まずは、発注自動化システムの導入によりどのくらいの利益向上が見込めるかを試算しましょう。
そうすれば、予算を決めやすくなるかもしれません。
既存システムとの連携
発注自動化システムには、他のシステムと連携できるものもあります。
そのため、すでに何らかのシステムを発注業務で使用している場合は、それらと連携が可能であるシステムを選びましょう。
具体的にどのシステムと連携できるかは、発注自動化システムを提供する会社にお問い合わせください。
業務フローの開発
新しいシステムを導入すれば、当然これまでの業務フローとは異なる流れになります。
システム導入後からスムーズに業務を行うためにも、導入後から実施する新しい業務フローを開発しましょう。
また、新しい業務フローを開発した後は従業員への周知も必要です。
紙媒体で周知させるのか、社内メールなどで周知するのか、周知の方法も同時に検討するとよいでしょう。
サプライヤーを含めた運用体制の構築
発注業務を自動化する際には、サプライヤーを含めた運用体制の構築が必要です。
サプライヤーを含めて考える必要がある理由は、製品の部品などを製造する供給業者であるからです。
例えば電話やFAXを使って発注していた場合、システム導入後から電話とFAXではなくメールなど別の媒体から発注することになります。
この時点で従来の運用体制とは異なるものになっています。
そのため、サプライヤーと発注担当者とのトラブルや混乱を避けるためにも新しい運用体制の構築が必要です。
発注システムは購買管理システムとの自動連携でさらなる業務効率化へ
発注業務の自動化を検討している場合、購買管理システムとの自動連携がおすすめです。
購買管理システムは、見積り依頼や購買カタログの管理・契約管理などの購買管理をするだけではなく、納期管理や品質管理、検収支払い管理などの機能が搭載されています。
そのため全体の工程が把握しやすく、生産管理が容易です。
発注業務以外の業務負担を軽減できるため、発注自動化システム導入時には自動連携できる購買システムも同時に検討してはいかがでしょうか。
まとめ
発注業務を自動化することにより、自社スタッフの手間・負担を軽減しながら在庫を適正化できます。
さらに他のシステムと連携し、サプライチェーン全体を自動化させることにより、多くのメリットを実感できるでしょう。
発注を自動化するには、iPaaSなどのプラットフォームとEDIを連携させるか調達・購買管理システムを導入する方法が一般的です。
いずれにしても、自動化に関しては導入の敷居がやや高く、誤った知識に沿って導入すると逆に効率が悪化したりミスの要因になったりすることがあります。
自動連携させる購買管理システム選びに迷ったら、クラウド型調達・購買管理システムの「intra-mart Procurement Cloudがおすすめです。
導入のサポートについても対応しているので、BtoBのデジタル化を目指している企業は、ぜひご検討ください。