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購買・調達に関連する業務は、メーカーにおいて非常に重要な意味合いを持ちます。
原材料や部品の仕入れ先を決めたり仕入れ値を交渉したりすることで、企業としての支出・利益率を左右するためです。
とくに製造規模の大きなメーカーになるほど、購買・調達部門の担う役割も大きくなるといえるでしょう。
この記事では、メーカーにおける購買・調達の仕事内容や、購買・調達が重視される3つの理由、向いている人物像などについてご紹介します。
購買(Purchasing)と調達(Procurement)は、企業が必要とする直接材・間接材を購入する取り組みをいいます。
直接材には製造に必要な原材料や部品が、間接材には製造業務以外で使う消耗品などが該当します。
<直接材・間接材の例>
メーカーにおいて、購買・調達部門が重要な位置づけにあることは想像に難くないのではないでしょうか。
効果的に業務を進めるなら、購買職と調達職の違いや基本となる指針について、基本的な情報をおさえておくことが大切です。
購買と調達は、いずれも「物品を購入すること」という意味合いに変わりはありません。
ただし、細かな意味合いとしては下記の違いがあり、調達は購買よりも広い意味合いを持つといえます。
<購買と調達の細かな違い>
それぞれ上記のような意味合いがあるものの、企業によって「購買調達」としていたり、とくに使い分けがされていなかったりもします。
購買職と調達職に分かれている場合以外は、「必要なものを購入する職種」と認識しておいて問題ないケースが多いといえるでしょう。
メーカー・製造業では、「QCD」(品質・コスト・納期)の3つが重視されます。
QCDに基づき製造し、顧客に対して製品の品質と納期を保証することが重要なミッションです。
購買に際しては、QCDに取引先・数量に関する項目を加えた「購買管理の5原則」を意識し、各部署に対して物品の品質・納期・信頼性などを保証することも重要になります。
<購買管理の5原則>
購買に際しては、与信管理の実施、調達ルートの確認、リスク管理体制の状況、担当者とのコミュニケーションなどを通じて取引先を選定します。
取引先が提供する物品に違法性がなく、かつ品質基準を満たし、安定供給ができるかを確認しておきましょう。
取引先の信用性について確認ができたら、取引先が無理なく供給し続けられ、かつ自社で必要とする量を見つけ、確保します。
イレギュラー時の対応方法も含め、無理のない納期設定をし、市場相場にあった価格で取引を決めましょう。
購買管理の5原則について、より詳しく内容を把握したい場合は、あわせて「購買管理の5原則とは?効果的な購買にするために必要な準備も」もご確認ください。
メーカーでは、ほかの業種と比較して、購買・調達業務がとくに重視される傾向にあります。
購買・調達部門は企業の支出を決めるため、事業戦略の核を握る職種ともいえます。
そのため、生産規模の大きい会社ほど、購買・調達の重要度や影響度は高くなるのです。
とはいえ、重視される理由が具体的なイメージとして湧かない場合もあるかもしれません。
ここでは、利益・品質・製造体制の3つの観点から、購買・調達業務が重視される理由をご紹介します。
購買・調達業務の質が企業全体の利益に直結することが、理由のひとつに挙げられます。
経済産業省の公表した「2023年企業活動基本調査速報ー2022年度実績ー」では、製造業における売上原価率は81.1%でした。
売上原価率は、商品の仕入れと製造においてかかった費用が、売上に対してどれくらいの割合を占めるかを示すものです。
購買費用・購買費は、物品やサービスの仕入れにかかった費用を指し、売上原価率に直接的に影響します。
購買費が下がれば売上原価率が下がり、利益として確保できる金額が増えるでしょう。
一方で購買費が上がれば売上原価率も上がり、利益になる額が少なくなるため、経営悪化の一因となります。
このように、購買・調達部門がどれくらい購買費用を抑えられたかが、企業全体の利益を決めることになるのです。
購買・調達部門の業務は、製品の品質も左右します。
購買・調達の業務では、取引先を選ぶところから、製造で実際に使用するところまで関わります。
数ある取引先候補のなかから、物品の品質と価格のバランスを見極め、調達するのは購買・調達の部署です。
たとえば下記のようなミスがあると、製品の質が劣化してしまうことにもつながるでしょう。
<購買・調達業務におけるミスの例>
また取引先の物品をより安く仕入れられるかは、購買担当者の交渉力にも影響されます。
同じコストでよりよい品質のものを購入できれば、自社製品の品質や経営状況の改善を見込めるでしょう。
購買・調達に関わる部署が、取引先とどう話をしてどのような契約を結ぶかによって、リードタイムが変わる場合があります。
リードタイムとは、発注してから納品されるまで、納品されてから使用されるまでなど、生じてしまう時間差のことです。
原材料となる直接材のリードタイムがどれくらいあるのかによって、製造予定や発注予定などが変わります。
製造における全体の流れを決める、重要な要素のひとつを担当する部署といえるでしょう。
メーカーにおける、購買・調達部門の主な仕事内容は、下記の5つにまとめられます。
<購買・調達部門の主な仕事内容>
それぞれどのような仕事内容になるのか、簡単な例を交えてご紹介します。
物品を仕入れるにあたり、なにが必要か、他部署の要望をくみ取って購買計画を立案します。
よりよい品質の物品をより安く購入できるよう、市場相場や製品の特徴など、さまざまな情報をもとに判断します。
たとえば、メーカーでは下記のような内容が該当するでしょう。
新商品のパンを作るため、同品質の小麦粉を提供するA社とB社を比較。 A社は2営業日納品だったが、B社は翌日配達が可能。 リードタイムが1日短いB社のほうが、在庫把握がしやすく製造がスムーズに進むとし、前向きに検討をすることにした。 |
エコイベントに出展するため、使い捨てスプーンを扱うC社とD社を比較。 どちらも同様の木製スプーンを提供しており、価格も同水準。 企画部からの要望もあり、イベントのテーマやサステナビリティの取り組みを鑑み、FSC認証製品を扱っているC社を前向きに検討することにした。 |
原材料の国産茶葉粉末を扱うE社とF社を比較。 どちらも2日で納品できる点は同じだが、F社は数量割引を利用できるため、E社よりも前向きに検討することにした。 |
取引先候補となる企業を絞り込めたら、実際に見積もりを依頼し、比較・検討したうえで最終決定をします。
見積もり情報や割引情報をもとに取引先の担当者と交渉し、仕入れ金額を下げられるか試みましょう。
見積もりでは市場価格相当の金額を提示してきたA社とB社。 うち、A社は一定数の仕入れで値引きが適用されることを伝え、B社とも交渉。 A社よりもより大きく値引き対応をしてくれることに決まったため、B社と契約をした。 |
見積もりでは、C社のほうが、D社よりも100グラムあたりの単価が1~2円程度高かった。 双方の品質に大きな差はなかったが、海外情勢の影響を受ける輸入品を扱うD社より、国内の複数拠点から供給があるC社のほうに安定性があると判断し、契約した。 |
取引先が決定したら、契約書・基本契約書・秘密保持契約書などを取り交わす必要があります。
書類に不備がないよう、チェック体制を整えたうえで作成しましょう。
取引先が決まったら、実際に物品を発注します。
その際は、部署ごとに発注するのではなく、購買・調達部門でとりまとめておくと効果的です。
部署ごとに発注すると、リードタイムの認識漏れや部署間の共有漏れによる重複発注、発注方法の属人化・独自化、ディスカウント機会の喪失などのリスクを招く可能性が高まります。
たとえば、下記のようなミスが生じる場合もあるでしょう。
現場担当者が、納品リードタイムを失念したまま発注書類を作成。 一週間に5ケースあればよい材料を重複して発注してしまうところを、購買・調達部署によるチェックで阻止できた。 |
A工場で材料を10ケース、B工場で25ケース必要なため、社内でとりまとめて35ケースを発注。 30ケース以上で5%のディスカウントが適用され、原価率を抑えることに成功した。 |
拠点や部署が多い場合には、発注情報をとりまとめるのも大変です。
その際にスムーズに情報を集めてチェックできるよう、クラウド型のシステムで情報を一元化しておくと効率が上がるでしょう。
物品が納品されたら、検収と支払いを進めます。
検収はできるだけ早くに済ませ、不良品があった場合は早急に対応してもらえるよう、連絡しましょう。
また検収で見つかった不良品の例や割合・数を把握し、取引先を再検討する際に役立てられるよう、情報を蓄積しておくことも大切です。
検収時、破損している部品が複数見つかったため、納品当日に取引先へ連絡。 製造スケジュールに変更が生じずに済んだ。 |
価格の安さと納品リードタイムの短さから新規開拓したA社だったが、不良品の発生率が高かった。 検収後のやりとりや製造スケジュール調整などに手間がかかったため、取引先の選定をしなおす必要があった。 |
納品・検収が終わったら、契約で規定している方法で支払いをします。
都度支払う方法と月末締めなど期間で区切った支払い方法があるため、購入する物品に応じて使い分けましょう。
物品の納品が終わったあとも、必要とする部署が実際に使うまで、管理を徹底する必要があります。
温度・湿度・日射・振動など、物品の性質に合わせた方法で保管しましょう。
性質にそぐわない保管をした場合は廃棄が生じてしまうため、必要な部署に必要なものが届かないだけでなく、売上原価率の上昇・利益率圧迫につながってしまいます。
冷凍保存しておかなくてはならない原材料だったため、早急に冷凍の保管室へ納入した。 |
ビタミンを含有する液剤を保管するため、通常の保管室ではなく、暗所を確保した。 |
また物品を保管場所へ移したら、入出庫の管理を徹底する必要があります。
在庫数がずれたり正確な数がわからなくなったりすると、購買・調達すべき数ともズレが生じてしまうためです。
入出庫の情報を記録する、社内統一のフォーマットを用意しておきましょう。
メーカーにおける購買・調達の主な仕事内容は、購買計画立案から保管・移動までの5つです。
購買・調達の仕事の流れに関しては「購買とは?業務内容・必要なスキルなどの基本をチェック!」や「購買業務の流れとは?5つの基本ステップとポイントを解説!」でもご紹介しているため、気になる方はあわせてご確認ください。
購買・調達部門の仕事内容は、多岐にわたります。
担当者に求められるスキルとしては下記の5つが挙げられます。
担当者が取引先や社内・他部署の意見をくみ取り、円滑にコミュニケーションができるスキルは重要です。
高く売りたい取引先と安く買いたい自社の交渉をうまくまとめる力も欠かせないため、日ごろの業務でコミュニケーション能力や交渉力を発揮できている人物を担当に選任しましょう。
さらに、思わぬ外的要因による物価変動に動じない気質、取引先・社内双方のスケジュールを把握して対応できるスキルも重要です。
海外の取引先とやりとりしたり、海外に工場があったりする場合は、語学力も求められます。
冷静に物事にあたれる人物、語学力のある人物を選任しましょう。
購買・調達の業務は、下記のようなさまざまな情報を扱うこともあり、煩雑になりやすい傾向にあります。
それゆえに「きつい」「難しい」と言われる場合も多い業務ですが、業務をスムーズに進める方法が2つあります。
「購買システムの導入」「人員を増やす」のそれぞれを確認しておきましょう。
購買システム・購買管理システムとは、購買・調達にかかる業務をスムーズに進める機能を搭載したシステムをいいます。
基本的な機能は下記の8つです。
ただし、購買システムにはオンプレミス型とクラウド型、スポット購買型とカタログ購買型など、複数のタイプがあります。
たとえばオンプレミス型は自由度が高いものの、費用もかさむ傾向にあります。
一方クラウド型は、スムーズかつ比較的安く導入できるものの自由度は低いのが特徴です。
搭載している機能を確認するのはもちろんですが、想定している使い方ができるシステムを選ぶことも大切です。
また購買システムを導入するメリットが大きいケースとして、取引先が多いメーカーや、拠点が複数あるメーカーが挙げられます。
オンラインで情報共有してスムーズに購買・調達ができるようになるため、購買・調達をよりスムーズに進められるようになるでしょう。
購買システムについて詳しくは「購買管理システムとは?購買の悩みを解決する4つのメリット」で解説しているため、あわせてご確認ください。
購買・調達の業務に携わる人員を増やすのも、業務を円滑に進める方法のひとつです。
十分な人数がいれば、データの分析や取引先の再検討、市場動向のチェックなど、それぞれの業務を手厚くできます。
また人数が増えれば、担当者を細分化でき、トラブル発生を防ぐ「ガバナンス強化」の効果も狙えるでしょう。
「購買システムを導入したいが、予算の問題で厳しい」「システムを導入しても使えるか不安」という場合におすすめの方法です。
購買管理のシステムを導入したい場合は、ぜひ「intra-mart Procurement Cloud」をご検討ください。
「intra-mart Procurement Cloud」は、ソーシングから支払いまでをワンストップでできる、クラウド型の購買システムです。
支出の最適化や、購買・調達業務の効率化に役立つ下記の機能を備えています。
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またデモンストレーションの利用もできるため、ぜひ「intra-mart Procurement Cloud」からお試しください。
メーカーにおいて、購買・調達の業務は非常に重要です。
仕入れ先と仕入れ価格の決定権を持つため、会社全体の利益率に関わります。
購買管理の5原則や仕事内容、必要なスキルなどをあらためて確認し、日々の業務を見直してみましょう。