購買管理業務でも知っておくべき、契約書をPDFでやり取りする際の注意点

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購買管理業務では、取引先(サプライヤー)との秘密保持契約(NDA)、基本契約、個別契約、購買契約、注文書、注文請書など様々な契約の締結を行うことがあります。
契約の締結時、PDFデータとしてメール等で契約書の授受を行う場面や購買システムを利用したEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)、データベースに電子取引データとして保存されるケースがあるかと思います。
日々の発注(注文書・注文請書)業務では、EDIやデータベース上のデータでやり取りするケースが多いですが、基本契約や購買契約など文書で定める場合は、紙又はPDF化した契約書が利用されます。
この記事では、PDF化した契約書の法的効力や、電子サインについて解説します。
PDFデータについては、電子サインとしてデータ上で完結するケースや、一旦印刷して印鑑で捺印してから再びPDF化してから送付するケースがあります。

法的に有効な契約書とは

契約書とは、契約が締結されたことを証明した文書のことです。 法令上、書面を作成することが義務付けられている場合には、契約書を作成しないと契約そのものが無効になってしまう可能性があります。 ただし、契約書の作成が義務付けられていない契約に関しては、契約書を作成しなくても契約は成立します。 民法522条2項により、口頭でも契約を成立させることが可能であると規定されているためです。
また、国税庁によると、「法に規定する「契約書」とは、契約当事者の間において、契約(その予約を含む。)の成立、更改又は内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」という。)を証明する目的で作成される文書をいい、契約の消滅の事実を証明する目的で作成される文書は含まない。」とされています。
上述したように、契約書を作成しなくても契約は成立しますが、大部分の企業においては、発注書・注文請書なども含めて、とても多くの契約書が日々作成されています。 そして、企業の法務部では、毎日、契約書に目を通して、法的なリスクの有無をチェックしたり、必要に応じて、契約書を作成したりしているのです。

契約書には、以下のように大きく3つの機能があります。ひとつめは確認機能です。契約書の作成は、契約内容を理解し、取引の可否を熟慮できるチャンスでもあります。事業においては、利益を獲得することが主要な目的になりますが、利益を得るためには、場合によってはリスクを負う必要が考えられます。 取引には、こうした潜在的なリスクが存在しているケースもあるので、リスクの有無や程度などを慎重に見極めることが重要です。

ふたつめは紛争予防機能です。契約書を作成することによって契約内容が明確になって、「言った、言わない」という不毛な紛争をあらかじめ防止することが可能です。口頭では曖昧になってしまうような場合でも、契約書に記載すれば、相手の認識の相違や 誤解の有無をお互いに確認することができます。締結後相手とトラブルが発生した場合には、契約書に記載されている内容に依拠して交渉することが可能になります。

最後は証拠機能です。契約書は、訴訟における最重要の証拠の一つです。一般的に、契約書には署名あるいは押印がなされます。こうした署名あるいは押印がなされた契約書は、民事訴訟法228条4項によると、 真正に成立したものと推定されます。したがって、契約書に定められていることは、訴訟においても重視されるのです。

契約書における署名・捺印の意味

上述した民事訴訟法228条4項には、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と定められています。したがって、契約書において署名・捺印は法的な効力を有しているということができるのです。また、署名や捺印は、その組み合わせによって、法的な効力を発揮するケースがあります。法的な効力が高い順は、署名+捺印>署名>記名+押印、となっています。
上述した民事訴訟228条4項の条文上は、「署名又は押印」とされているため、法律上は、署名捺印、署名、記名押印、にはすべて同じ効果があると考えてもよいとしたいところですが、一般的には、本人が手書きした署名に押印を加えたものが、署名だけのものよりも法的効力が高くなるとされています。

また、署名だけのケースと記名+押印の場合も、一般的には記名+押印よりも署名のほうが法的な効力が高いと考えられています。ちなみに、記名だけの場合は民事訴訟法228条4項に基づく法的な効力はないとされています。

つまり、真正な契約書とするためには署名あるいは押印が必要になるということです。

契約書をPDFとして授受する際の注意点

ペーパーレス化が進んでいる昨今においては契約書をPDFデータでやり取りしたり保管・格納することも多いでしょう。しかし、一部のデータ(国税関係など)は紙ベースでの保管が義務付けられています。契約書をPDFデータで授受する際にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。

電子帳簿保存法では、電磁的記録(電子データ)による保存は、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引データ保存、の3種類に区分されています。どれかを選択的に選定するのではなく、実務に合わせて3つの保存方法を使い分けなければなりません。
電子帳簿等保存とは、帳簿や書類を手書きではなく電子的に作成した場合に、それらを電子データのままの形式で保存することをいいます。スキャナ保存とは、紙で受領した、もしくは作成された書類を画像データとして保存することをいいます。最後の電子取引データ保存とは、データで受領した情報をそのままの状態で保存することをいいます。

契約書をデータ化しPDF保管する場合には、あらかじめ税務署による承認が必要になります。また、使用するスキャナの設定条件は「200dpi以上の解像度、RGB256階調以上」と定められています。画像補正機能のあるスキャナの場合は、特に画像の階調性が失われないように注意しなければいけません。
したがって、契約書をPDFでやり取りするためにはスキャナ保管か電子取引データ保管による方法を利用する必要があります。

契約書をスキャンしてPDF保管する際の注意点は、原本と変わらないようにスキャンすることです。また、タイムスタンプを電子データごとに付与して、改ざん・修正が行われていないことを証明する必要があります。
さらに、検索システムを導入して日付・取引金額などで即座に見つけたい契約書がすぐに検索できるような検索性を構築・維持することも重要です。電子データとして保管することによって、容易に検索が可能になり保管スペースも不要になります。

これまでは電子データ化する条件として電子署名を付与する必要がありましたが、制度改正によってこの条件は撤廃されています。ただし、取引先との間にトラブルが発生した場合は、電子署名がない契約書の証拠力は万全とは言えないでしょう。
電子契約を導入しデジタル文書として保管する場合の注意点は、電子契約書に法的な証拠力を保有させるために、電子署名とタイムスタンプの付与が必要になります。

ペーパーベースの文書は、法的な証拠力を持たせるために、当事者の署名と押印が必要です。電子契約書の場合には、一般的には電子署名とタイムスタンプが付与されることになるので、証拠力が万全となるため、安心してPDF保管をすることができます。

まとめ

契約書には署名や印鑑が必要なわけではありませんが、法的な証拠能力を持たせるためには署名・捺印が必要とされています。現時点では、証拠機能だけでなく、確認機能や紛争予防機能を考えると、リスクが高く重要なビジネス上の契約には署名・押印をしておくことも有効な手段です。
また、PDF化した契約書を利用する場合には電子署名やタイムスタンプ機能が必要になることも忘れてはいけません、電子署名で真実性を担保しつつオンラインで契約締結が可能な契約管理システムの導入をぜひご検討ください。
なお、電帳法においては、電子署名を付与する必要がありましたが、制度改正によってこの条件は撤廃されています。
改ざん防止のための措置をとる 「タイムスタンプ付与」や「履歴が残るシステムでの授受・保存」といった方法以外にも「改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて守る」でも構わないとされています。
将来的に、証拠機能、紛争予防機能についてもDX(デジタルトランスフォーメーション)されることを期待したいところです。


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