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まず初めに、誓約書の定義を確認していきます。あわせて誓約書の法的な効力はどのくらいあるのかについてもみていきましょう。
誓約書とは、契約などに際して守るべき約束事項を記載した文書のことを指します。雇用側と就業者など、立場が異なる当事者間で交わされることの多い文書で、作成者が相手側に約束を守る意思表示を求める内容が一般的です。誓約する側は記名・押印することで提示された約束を遵守する「義務」を負うことになります。
誓約書が交わされるのは、ビジネスにおいては、サプライヤーとの調達・購買時だけでなく、入社時や退職時の従業員との約束、事業者間の業務依頼、資金調達時などの約束事が必要となる場面です。ビジネスで馴染みがある「秘密保持誓約書」も代表的な用途のひとつです。誓約を求める場合には状況に応じた雛型を参考に、記載漏れのない書面作成をすることが求められます。
約束事を取り交わす誓約書には、ある程度の法的効力があります。たとえば誓約者が約束を反故にし損害賠償請求などをする場合にも、証拠として使用することが可能です。しかし、基本的には誓約書のみでは証明する効力はないため、契約書など他の書類の保管証拠として提出するのが一般的であるといえます。そのため、取り消しや無効書類とならないよう決まりを把握したうえで作成・運用することが重要なポイントです。
民法や労基法違反などに抵触している場合は、誓約書が無効や取り消しとなる場合もあります。作成・運用前には必ず確認し、必要があれば専門機関などにてチェックを依頼すると安心です。
◇無効・取り消し例
◎作成者の意思能力がない場合に作成した書面
◎書面の内容が不明確である場合
◎詐欺や脅迫に絡めた書面である場合
◎未成年者が作成者である宣誓書で、法的代理人の同意のない書面
◎公序良俗に反した誓約書の内容である場合
誓約書と混同しやすい書類として「契約書」や「念書」があります。活用される場面もほぼ同じですので、間違いのないようそれぞれの違いを整理して覚えて置くことが大切です。
誓約者は書面を介して当事者であるAとBのうち、AがBに対して誓約を求めるものですが、契約書は双方の合意が必要となる点が大きく異なります。そのため、誓約書は「誓約者」のみの記名・捺印が必要ですが、契約書の場合は「双方」の記名・捺印が必要。双方が合意すれば、お互いに何らかの義務を負うこととなります。
また、書面の形式としては契約書内に誓約内容を記載し、1つの書類にまとめることも可能です。誓約事項が少ない場合や書面をできるだけ整理して取り交わしたい場合は、誓約書を兼ねる形式の契約書として問題はありません。書面を活用する状況などにあわせて、誓約者にもわかりやすい形式で提示すると良いでしょう。
誓約書は主にビジネスで用いられる書面であるのに対し、念書は主に個人間で用いられる点が異なる点です。念書は、金銭の貸し借りや消費貸借契約の補助的な役割で使用されることが一般的で、誓約書と同じく一定の法的な効力を保持しています。
また、誓約書は誓約者側のみに約束を求める内容であるのに対し、念書は提出する側も多少の義務を負う旨を記載する場合があります。しかし、基本的には誓約書も念書もほぼ同様、同等のものと言える内容です。場面などにあわせて使い分ける程度の意識で、問題はないといえるでしょう。
誓約書はルールに基づいて作成をすれば、法的効力をもつ書類となります。正しく運用し不要なトラブルを避けるためにも、正しい誓約書の作成方法と注意点を把握しておくことが大切です。
誓約書作成の際には、下記5つのポイントを最低限押さえておきたいものです。項目ごとに確認していきましょう。
・内容はわかりやすく明確に記載する
誓約内容が曖昧でないか、解釈の方法が複数ないかに注意して、わかりやすい文章で作成することが大前提となります。「いつまでの期間」に「どのような約束をするのか」の部分は、なかでも特に重要な部分。作成者と誓約者の双方が同じ認識で書面を取り交わせるよう、推敲を繰り返して間違いのない書類作成を心掛けます。
・法令を確認したうえで作成する
「無効や取り消しとなるケースの例」でもご紹介した通り、労基法や民法に抵触した文書である場合は、無効となる場合もあります。入社時を例にとれば「ミスをした場合は日当の支払いは受けません」などと言う誓約は、明らかに労働基準法に抵触したものです。仮に誓約者が誓約したとしても、法的には無効となりますので、法令などを充分に確認したうえで作成を進めることが大切です。
・経済産業省の文書例を参考に
作成の内容に困った場合は、経済産業省が提示している文書例などを参考にすることも良策です。入社時および退社時のほか、秘密保持契約についての書面など、様々な場面で活用できる文書例を閲覧することができます。基本の文書は例に沿って作成し、必要な文章を肉付けすると間違いが少なく読みやすいものになるはずです。
・作成者の署名と捺印も忘れずに
作成者の署名と捺印を忘れずに行います。理由は、作成者自身の意図で作成し、誓約者へ提示していることを示すためです。文書の最後に署名を入れるのが一般的ですが、文書内であればバランスをみて記載する形式で問題はありません。
・ルールを順守すれば自由に書き加えてOK
法令や労基法に抵触していないことなど、基本的なルールを守っていれば状況にあわせた内容の記載が可能です。約束が必要な場面にあわせて適切な内容を記入し、事実に即した誓約書となるように作成を進めることが大切です。
誓約書に記載が必要な項目は下記の内容です。
・誓約者の記名、捺印欄
・誓約書作成することとなった要件
・守るべき誓約や義務の記載
・誓約書作成の日付
・誓約違反時の罰則など
最後に、誓約書作成における注意点を整理していきます。
・第三者視点でも合理的な内容にする
相手が納得して交わした誓約書であったとしても、第三者からみて明らかに合理的でない場合は無効となる場合があります。必要に応じてリーガルチェックを通すなど、当事者以外の第三者の視点でも事前に内容確認をしておくことが必要です。
・電子署名を使用する場合は信頼性にも注意
近年ではサービスの種類も増えてきたことから、電子署名を活用する組織も増えてきました。電子署名は手軽で簡単ですが、信頼性を失えばまったくの無効になる場合もあります。そのため、サービスの信用度なども充分にチェックしたうえで運用することが鉄則です。
ちなみに法律上「電子署名」と認められるためには、最低でも「本人性」「非改ざん性」を満たす必要があります。簡単に言えば、本人が作成したものであり、改ざんされていないことを証明できるということ。必要条件を手軽に満たせるよう様々なサービスが開発されていますので、サービス自体の信頼性を充分に検証したうえで活用するとよいでしょう。
誓約書の本来の定義や、契約書との違いをおわかりいただけたでしょうか。念書なども含めて多くの書類が必要になるビジネスシーンでは、定義を理解し、ルールを守った書類作成が大前提となります。双方が納得のうえ約束できるよう、書面だけでなく、意思を交わすことも忘れずに誓約書をご活用ください。