脱炭素戦略に向けた購買業務、購買システムの役割とは

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目次


地球温暖化は地球の平均気温が上昇する地球規模の環境問題であり、政府や企業が様々な取り組みを開始しています。

この記事では、企業の調達・購買領域での役割や背景、必要な知識について探ります。

地球温暖化への対応として、脱炭素の取り組みやグリーントランスフォーメーション(GX)、脱炭素経営への移行が重要であり、これらのプロセスで購買管理業務が果たす役割と、購買管理システムに求められる機能を深掘りします。

地球温暖化とは

地球温暖化は、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガス(GHG)が大気中に放出され、その濃度が増加することによって引き起こされます。

これらのガスは、太陽からの熱エネルギーを地表近くで保持し、地球の平均気温を上昇させます。

現在、地球の平均気温は産業革命前に比べて約1.1℃上昇しており、さまざまな気候変動の影響が観測されています。

科学者たちは、現在の排出トレンドが続く場合、2100年までに気温が5℃近く上昇する可能性があると警告しています。

このような気温の上昇は、極端な気象現象の増加、海面上昇、海洋の酸性化、生態系の破壊など、地球上の生命にとって深刻な脅威となります。

極端な気象現象には、大雨、干ばつ、熱帯低気圧の増加、海氷や永久凍土の縮小が含まれ、これらは自然環境だけでなく、農業、水資源、人間の健康にも影響を及ぼします。特に、海面上昇は低地や沿岸地域のコミュニティに深刻な影響を与え、大規模な人口移動を引き起こす可能性があります。

1.5℃の気温上昇でも、サンゴ礁は7090%が死滅すると予測されており、これは海洋生態系とそこに依存する人間社会にとって大きな打撃です。

さらに、21世紀中に気温が2℃を超えることが予測されており、このような温暖化のペースでは、自然環境と人類の適応能力を超えた影響が出ることが懸念されています。

脱炭素の取り組み

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2050年までにカーボンニュートラルを実現することが可能であると報告しています。

カーボンニュートラルの実現は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減し、残る排出量を森林植樹やカーボンオフセットによって相殺することを意味します。

しかし、2050年にカーボンゼロを達成しても、気温は既に1.5℃上昇すると予測されており、これは気候変動の影響を最小限に抑えるために必要な迅速かつ大規模な行動を強調しています。

(参考)IPCC6次評価報告書


カーボンニュートラル(Carbon Neutral)とは、
ある組織、活動、製品、サービス、または個人が原因となる温室効果ガスの排出量を計算し、それを削減または相殺することによって、実質的に大気中に新たな温室効果ガスを追加しない状態を指します。エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの使用増加、森林植樹などによるCO2吸収の促進、およびカーボンオフセットの購入によって行われます。
カーボンニュートラルの目的は、気候変動を抑制し、地球温暖化を産業革命前の水準よりも2度未満、できれば1.5度に抑えることを国際社会が合意したパリ協定の目標に貢献することです。カーボンニュートラルの達成は、気候変動対策の重要なステップであり、個人、企業、国々が環境への影響を認識し、持続可能な未来に向けた行動を促すことを目的としています。

ゼロエミッション(Zero Emission)は、
そもそも温室効果ガスを排出しない、または排出を極限まで減らすことを指します。
このアプローチでは、化石燃料の使用を避け、再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力など)を利用することで、エネルギー生産や消費におけるCO2排出をゼロに近づけることを目指します。ゼロエミッションは、相殺に頼ることなく、直接的に排出を削減する方法です。

グリーントランスフォーメーション(GX)

グリーントランスフォーメーション(GX)は、2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、従来の経済社会システムから環境に配慮された社会システムへの大幅な変革を意味します。

この変革には、エネルギー価格の高騰や化石燃料依存の脱却など、日本が直面する様々な課題への対応が含まれます。

エネルギーの安定供給を大前提とし、再生可能エネルギーの利用拡大、原子力発電の最大限活用などが推進されています​​。

日本政府は「GX実現に向けた基本方針」を通じて、再生可能エネルギーを主力電源とする方針を打ち出し、エネルギー政策や産業構造の変革に関するロードマップを明確にしています。

具体的には、2030年までに電源構成の3638%を再生可能エネルギーで賄う目標や、次世代革新炉の開発、火力発電のゼロカーボン化などが挙げられます​​。

また、政府が掲げている「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では、GXを重要投資分野に位置づけ、今後10年間で官民協調による150兆円規模の投資を目指しています。

この戦略は、気候変動対策と経済成長の両立を目指し、洋上風力、太陽光、地熱産業、水素・燃料アンモニア産業など14の重点分野での挑戦を支援します​​。

GXリーグという取り組みも紹介されており、2050年カーボンニュートラル実現に向けた企業群の協働と、官・学との共同作業を促進する役割を担っています。これにより、自社の排出削減やサプライチェーンでの炭素中立に向けた取り組みなどが奨励されています​​。

GXの推進は、国際的にも重要な動きとなっており、カーボンニュートラルを宣言する国のGDP総計が世界全体の約90%を占めるほどの関心が寄せられています。このような背景から、GXは企業や国家の成長、競争力向上に不可欠な要素と認識されています​​。

経済産業省が設立を発表した「GXリーグ」は、2050年のカーボンニュートラル実現と社会変革を見据え、「GXヘの挑戦を行い、現在および未来社会における持続的な成長実現を目指す企業」が、同様の取り組みを行う企業群と連携し、官・学と共に協働する場、とされています。

GXリーグがどのような世界観を目指し、どのような企業群と一緒に取り組んでいくか基本方針を示したものが「GX リーグ基本構想」です。

GXリーグに参画する企業には、

1.
自らの排出削減への取り組み
2.サプライチェーンでの炭素中立に向けた取り組み
3.市場のグリーン化を牽引する

ことを求めています。

脱炭素経営

脱炭素経営とは、気候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営のことです。

日本では、東京証券取引所の株式市場が再燃されたことに伴い、上場企業にはTCFDへの対応が求められるようになりました。

TCFDは「気候関連財務情報開示タスクフォース」(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略称で、企業が気候変動に関連するリスクと機会をどのように理解し、評価し、公表するかについてのガイドラインを提供しています。

TCFDの目的は、投資家、貸し手、保険契約者、その他の利害関係者が、気候変動が金融市場や企業に与える影響をよりよく理解できるようにすることです。

TCFDは、リスク管理、戦略、ガバナンス、メトリクスとターゲットの4つの主要な領域にわたる推奨事項を提案しています。

  1. ガバナンス
    ガバナンスに関する推奨事項は、組織の気候変動リスクと機会に対するガバナンス構造に焦点を当てています。具体的には、組織の取締役会が気候変動リスクと機会をどのように監督しているか、そして経営陣がこれらのリスクと機会を評価し、管理するためにどのような役割を果たしているかについての情報開示が求められます。
  2. 戦略
    戦略の領域では、気候変動が組織のビジネスモデル、戦略、財務計画にどのように影響を与え得るかについての洞察を提供することが推奨されます。これには、短期的、中期的、長期的な視点から、気候関連リスクと機会の影響を評価し、それらが経営戦略や財務計画にどのように組み込まれているかを明らかにすることが含まれます。

  3. リスク管理
    リスク管理の推奨事項は、企業が気候変動に関連するリスクをどのように特定、評価、管理し、これらのリスクを全体のリスク管理プランにどのように統合しているかについての情報開示を促します。具体的なプロセスや、リスク評価の方法論、リスク軽減戦略についての開示が求められます。

  4. メトリクスとターゲット
    メトリクスとターゲットに関する推奨事項では、組織が気候関連リスクと機会を評価し、管理するために使用しているメトリクス(指標)と、設定したターゲットに焦点を当てます。これには、温室効果ガス排出量、リスク管理の進捗状況、気候関連目標達成に向けた具体的な行動計画など、定量的な指標の開示が含まれます。


TCFD
の推奨事項に従うことで、企業は気候変動がもたらすリスクと機会をより明確に把握し、関係者に対して透明性の高い情報を提供することができます。

 

CDPCarbon Disclosure Project)は、
企業や都市が気候変動、森林破壊、水資源管理に関する情報を開示する際に用いるグローバルなプラットフォームです。

CDPによる評価システムは、企業の環境に対する取り組みの透明性と実効性を測定するためのもので、開示、認識、管理、リーダーシップの各段階を含む8段階のスコアリングシステムに基づいています。

この評価は、企業が気候変動にどの程度効果的に対応しているかを示す指標として機能します。


CDPの8段階評価システム

開示(Disclosure)

企業が環境に関するデータをどの程度開示しているかを評価します。この段階では、情報の量と質が主な焦点となります。

認識(Awareness)

企業が環境リスクと機会を認識している程度を評価します。リスク管理プロセスや環境への影響の認識に関する質問が含まれます。

管理(Management)

企業が環境リスクを管理し、機会を活用するために取っている措置を評価します。リスク管理戦略や目標設定、パフォーマンスの監視がこの段階で重要となります。

リーダーシップ(Leadership)

企業が環境保全の分野でリーダーシップを発揮しているかを評価します。革新的な取り組み、高い目標設定、業界内でのベストプラクティスの実施などが評価されます。

 

スコアレンジ

A/A-
非常に高い水準の環境管理とリーダーシップを示しています。企業は透明性が高く、リスクを効果的に管理し、業界内でリーダーシップを発揮しています。

B/B-
良好な管理と透明性を示していますが、Aスコアを得るためにはさらなる改善が必要です。

C/C-
管理と透明性において基本的なレベルを満たしていますが、多くの改善の余地があります。

D/D-
環境リスクと機会に対する基本的な認識があるものの、管理と透明性が不足しています。

F
情報がほとんどまたは全く開示されていない、またはCDPの要求に応答していない企業に与えられます。

CDPのこの評価システムは、企業が自身の環境パフォーマンスを定量的に評価し、改善のための具体的なアクションを特定するのに役立ちます。

また、投資家や顧客に対して、企業が気候変動にどのように取り組んでいるかを明確に伝える重要な手段となります。

グリーン・バリューチェーンプラットフォーム

環境省、経済産業省、農林水産省が運営する「脱炭素経営」を支援するための総合情報プラットフォームです。

このプラットフォームでは、2050年カーボンニュートラル達成に向けた動向理解、脱炭素経営の方向性検討、CO2排出量の算定、削減ターゲットの特定、削減計画の策定と実行など、企業が脱炭素化を進めるために必要な情報が提供されています。

 

(参考)「脱炭素経営」の総合情報プラットフォーム

 

脱炭素に向けた購買管理業務

脱炭素に向けた購買管理業務で求められる機能や取り組みには、次のようなものが考えられます。

  1. サプライチェーン排出量の算定
    企業は、自社の製品やサービスに関連するサプライチェーン全体の炭素足跡を正確に把握し、報告する必要があります。これには、原材料の調達から製造、運輸、使用、最終的な廃棄までのすべての段階でのCO2排出量の計算と監視が含まれます。

  2. 低炭素製品やサービスの優先的な購入
    購買管理システムは、炭素排出量が少ない製品やサービスを識別し、優先して購入する機能を持つべきです。これにより、企業は脱炭素化への取り組みを促進し、環境に対する自社の影響を減らすことができます。

  3. サプライヤーの環境パフォーマンスの評価
    サプライヤー選定の際には、その環境パフォーマンスや持続可能性に対する取り組みを評価する機能が求められます。カーボンプライシングや炭素税などの制度を考慮に入れ、炭素排出量が少ない、または環境に対する取り組みが優れたサプライヤーとの取引を優先することが重要です。

  4. 炭素価格情報の統合
    炭素価格の変動に応じて、購入コストをリアルタイムで調整できる機能も重要になります。これにより、カーボンプライシングの影響を価格に反映させ、より持続可能な購入決定を支援します。

  5. データ管理と透明性の向上
    サプライチェーン全体でのCO2排出量のデータを管理し、関連するステークホルダーへの報告を簡易化する機能が必要です。これにより、企業は自社の環境パフォーマンスを透明にし、顧客や投資家からの信頼を獲得することができます。

  6. 再生可能エネルギーや循環経済へのシフトを支援
    再生可能エネルギーの使用やリサイクル可能な材料の購入を奨励する機能を備えることで、企業の循環経済への移行を支援します。

これらの機能や取り組みは、企業が脱炭素化を進める上で不可欠です。持続可能なサプライチェーンの構築を通じて、企業は環境への負担を減らし、社会全体の脱炭素化に貢献することができます。

 

排出量の算定

温室効果ガスは、化石燃料の燃焼、工業プロセスにおける化学反応、あるいは温室効果ガスの使用・漏洩などに伴い、大気中に排出されます。

サプライチェーン排出量は、自社内における直接的な排出だけでなく、自社事業に伴う間接的な排出も対象とし、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量を指します。

つまり、原材料調達・製造・物流・販売・廃棄など、一連の流れ全体から発生する温室効果ガス排出量のことです。


出所:グリーンバリューチェーンプラットフォーム


Scope1
:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) 


サプライチェーン排出量 = Scope1排出量 + Scope2排出量 + Scope3排出量

 

Scope3排出量とは

Scope1Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)です。

区分

該当する排出活動(例)

1

購入した製品・サービス

原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達

排出源単位データベース

積み上げベースの排出原単位

産業連関表ベースの排出原単位

国内排出原単位DB

海外排出原単位DB

2

資本財

生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上)

3

Scope1、2に含まれない

調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)

燃料及びエネルギー活動

調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)

4

輸送、配送(上流)

調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)

5

事業から出る廃棄物

廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送(※1)、処理

6

出張

従業員の出張

7

雇用者の通勤

従業員の通勤

8

リース資産(上流)

自社が賃借しているリース資産の稼働

(算定・報告・公表制度では、Scope12 に計上するため、該当なしのケースが大半)

9

輸送、配送(下流)

出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売

10

販売した製品の加工

事業者による中間製品の加工

11

販売した製品の使用

使用者による製品の使用

12

販売した製品の廃棄

使用者による製品の廃棄時の輸送(※2)、処理

13

リース資産(下流)

自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働

14

フランチャイズ

自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope12 に該当する活動

15

投資

株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用

その他(任意)

従業員や消費者の日常生活

 

算定方法

活動量

自社が購入・取得した製品またはサービスの物量・金額データ

取引先から排出量の提供については現実的に難しい可能性があるため②「排出量 = 活動量× 排出原単位」について詳しく説明します。

排出量算定は、段階的に取り組んでいくことが必要とされています。

 

初期 目的に適ったサプライチェーン排出量の算定範囲のカバー

目的に合わせて、継続的に把握できる算定範囲を設定し、サプライチェーン排出量を簡易的でも把握できる体制を整備統計値、仕様、カタログ値からの推定、金額からの換算等入手できる多様なデータを活用

中長期 活動実態に即したより精度の高い算定の実現

経年変化により削減努力の評価が可能となるような、活動実態に即した算定方法を採用排出量の大きさ、削減ポテンシャル等に応じて適切な算定方法を選択、組み合わせ

中長期 継続的な改善効果の把握

サプライチェーン排出量の削減取組みを継続的に実施し、経年変化により排出量の削減効果を把握

 

(参考)サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する 基本ガイドライン

 

GHGプロトコルは、
企業や政府が温室効果ガス(GHG)排出量を計算し、報告するための国際標準です。

このプロトコルは、排出量の透明性を高め、削減目標の設定と達成に役立つよう設計されています。

GHGプロトコルは、直接排出(Scope 1)、間接排出(Scope 2)、およびサプライチェーンを通じた間接排出(Scope 3)を含む、排出の全範囲をカバーしています。

企業や組織が自らの環境への影響を正確に理解し、環境責任を果たすための枠組みを提供しています。
 

カーボンフットプリントは、
製品や活動、組織が直接的または間接的に引き起こす二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガス(GHG)の総排出量を測定することです。

これにより、気候変動への影響を定量的に評価し、削減目標の設定や環境パフォーマンスの改善に役立てることができます。

カーボンフットプリントの算出には、原料の調達、製造、運搬、使用、廃棄といったライフサイクル全体を考慮に入れることが一般的です。

環境省の温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度

環境省の温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度は、企業や組織が自身の温室効果ガス排出量を算定し、これを環境省に報告、公表することを義務付ける制度です。この制度の目的は、温室効果ガスの排出削減を促進し、気候変動対策に貢献することにあります。具体的な排出量の算定方法、報告期間、報告対象となる企業や組織の基準など、詳細なガイドラインが提供されています。

温室効果ガス排出量算定方法

温室効果ガス排出量 = ①活動量 × ②排出係数

①活動量

生産量、使用量、焼却量など、排出活動の規模を表す指標のことを言います

②排出係数

活動量当たりの排出量のことを言います。

算定方法・排出係数一覧


省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)

「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(通称:EEGS(イーグス))」は、省エネ法・温対法・フロン法の同時報告、及び、温室効果ガス排出に関する情報の統合管理を可能とする新システムです

 

購買管理システムに求められる機能

脱炭素とカーボンプライシングの動向に関連して、企業の購買管理システムに求められる機能は、環境負荷の低減とコスト効率の向上を同時に追求するために重要となります。以下に、企業の購買管理システムで求められる機能をいくつか挙げます。

  1. 排出量算定機能
    購入した商品やサービスの排出量を計算し、可視化する機能。これにより、企業はより環境に優しい購買選択が可能になります。

    関係する取引先から排出量の提供を受ける方法
    サプライヤー側の排出量[t-CO2]登録機能

    「排出量 = 活動量× 排出原単位」という算定式を用いて算定する方法
    排出原単位管理機能
    SCOPE3の排出量計算機能
  2. サプライヤー評価システム
    サプライヤーの環境配慮度、特にCO2排出量削減への取り組みを評価し、ランク付けする機能。脱炭素に積極的なサプライヤーとの取引を優先することで、企業全体のカーボンフットプリントを低減できます。
  3. 環境関連法規制の管理機能
    カーボンプライスや炭素税などの環境関連法規制に対応し、これらのコストを購買コストに反映させる機能。法規制の変更に迅速に対応し、予期せぬコスト増を避けることが可能です。
  4. 持続可能な購買ポリシーの統合
    企業の環境方針や持続可能性目標に基づく購買ポリシーをシステムに統合し、自動で適用する機能。これにより、ポリシーに沿った購入が容易になります。
  5. エネルギー効率と再生可能エネルギーの選択支援
    エネルギー効率が高い製品やサービス、再生可能エネルギーを使用しているサプライヤーを優先的に選択するためのサポート機能。コスト削減と環境負荷の低減を両立させます。
  6. データ分析とレポーティング
    購買データからCO2排出量の傾向を分析し、脱炭素化に向けた戦略的な意思決定を支援するレポーティング機能。また、外部ステークホルダーへの報告にも利用できます。

これらの機能を持つ購買管理システムを導入することで、企業は脱炭素化への対応を強化し、持続可能な供給チェーンの構築を進めることができます。

また、カーボンプライスの導入や炭素税の増税など、外部環境の変化にも柔軟に対応することが可能になります。

まとめ

企業が地球温暖化対策に効果的に取り組むため、脱炭素経営を本格的に進めることが欠かせません。

この取り組みの第一歩として、調達・購買プロセスにおける炭素排出量の可視化が重要です。

これにより、企業は自社のサプライチェーン全体にわたる排出量を把握し、それを基に排出削減のための具体的な戦略を立てることが可能になります。

サプライチェーンを通じた炭素排出量の削減を目指すことは、持続可能な経営を実現する上で不可欠なステップとなります。




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