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請求書のデジタル化は電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の施行の影響で、企業に急速に広まっています。さらに政府のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進により、請求書の電子化の流れは加速することでしょう。
従来の紙媒体の請求書を使っていた企業が、新たに請求書の電子化を導入する際に悩むのが、電子請求書システムの選定です。多くのシステムが開発・販売されており、機能や特徴もさまざまなため比較検討に時間がかかる可能性もあります。
またシステムの導入だけでは、業務の効率化は達成できません。そのため、どのようにして効果的に請求書をデジタル化するか、悩む担当者も多くいることでしょう。
あらゆる企業にとって、請求書はビジネスにおいて不可欠な書類です。ここでは、請求書とは何か、また請求書を電子化する意義について説明します。
請求書とは、取引先とのビジネスのやり取りで発生した商品やサービスの料金を、期日までに支払うことを求める書類です。一般的な商取引でも、商品やサービスの納品が完了後に請求書を発行しなければ、代金が支払われないことがあります。
商品やサービスの代金を正しく受け取るためには、請求書を発行することが大切です。請求書を発行することで、取引先との無用なトラブルも回避できます。また請求される側にも、請求書は「税務調査時の支出の証明」として役に立ちます。
なお、請求書は法的な決まりはなく、書式なども決まっていません。
請求書のデジタル化とは「請求書をWeb上で電子データ化して、取引先に届けること」です。
請求書をPDFファイルなどに変換して、請求書ファイルをメールやWebサイト、システムなどで送信します。
最近では、請求書を電子化するクラウドサービスも登場しました。請求書の電子化は、ますます便利に利用しやすくなるでしょう。
請求書の電子化にもっとも関係がある法律は、電子帳簿保存法があります。電子帳簿保存法は、請求書や領収書などの国税関係帳簿書類の電子化を認める法律です。電子帳簿保存法は、電子化を推進するために改正を続けながら運用されています。
2022年の改正電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類の電子化に必須だった税務署長への事前承認制度は廃止になりました。これを転機に、電子帳簿保存法に対応した国税関係帳簿書類を電子データ化するシステムを採用する企業が増えています。
請求書のデジタル化により、従来の請求書業務を効率化できます。従来は「請求書を作成→印刷→押印・署名→郵送」といった請求書業務がありました。請求書の電子化は、これら一連の請求書業務の手間を減らせます。
請求書のデジタル化は、請求書を受け取る取引先にもメリットがあります。請求書を電子データで送付できるため、急ぎで請求書が欲しい場合に便利です。また請求書データがCSVファイル形式ならば、会計システムや経費管理システムなどにデータ移行もできます。
このように、請求書のデジタル化は多くのメリットがあります。ここでは、請求書デジタル化のメリットについて紹介します。
請求書を発行するサプライヤー側では、以下のような請求書電子化のメリットがあります。
・請求書発行業務の効率化
・請求書の再発行や修正に、即時対応できる
・郵送費や資材費などのコスト削減
・請求書発行業務の効率化
紙媒体の請求書発行業務は、以下のような業務の流れになります。
1. 紙と封筒を用意する
2. 紙に印刷をして、請求書を作成
3. 請求書を封筒に入れる(入れ間違いがないように、チェックする)
4. 切手を貼る
5. 郵便局に持ち込む
請求書をデジタル化すれば、これらの請求書発行業務が大幅に効率化できます。請求書を電子化して、請求書管理システムにアップロードすれば、取引先に請求書を発行できます。
・請求書の再発行や修正に、即時対応できる
紙媒体の請求書は、再発行や修正に手間がかかるデメリットがあります。請求書を電子化すれば、このような手間が省けて即時対応できるメリットがあります。
また手間が省けることで、人件費のコスト削減にもつながります。
・郵送費や資材費などのコスト削減
紙媒体の請求書発行業務は、多くの手間がかかります。請求書の量によっては、発行業務に忙殺されてしまうこともありえます。業務量や業務時間が増えることで、追加の人件費も増えてしまいます。また請求書の用紙や封筒などの資材費や印刷代、郵送費などのコストもかかります。
請求書のデジタル化は、これらのコストの問題を解消します。発行する請求書の量が多い企業では、コスト削減のメリットは大きくなることでしょう。
請求書を受け取る側では、以下のような請求書電子化のメリットがあります。
上記メリットを個別に解説します。
・請求書を発行日の当日に受け取れる
請求書の電子化で、受け取り側は請求書をメール形式またはダウンロード形式で受け取ります。そのため、請求書が発行された当日に請求書データを受け取ることができます。
郵送では、都合で請求書を今すぐに欲しいという要望を叶えることは難しいです。その点、電子化された請求書なら即日で受け取り可能です。
・過去の請求書をすぐに参照できる
電子化された請求書は、紙媒体の請求書と違い、保管スペースが不要です。また請求書に付随する書類のデータも、いっしょに保管できるメリットもあります。
過去の請求書もすぐに検索できるため、紙媒体の請求書のようにキャビネットから探すような手間がありません。そのため、業務の効率化が進みます。
・電子帳簿保存法やインボイス制度への対応
電子帳簿保存法では、電子取引で電子データとして受け取った国税関係帳簿書類を印刷して保存することを禁止しています。またインボイス制度では、所定の記載要件を満たした適格請求書(以下、インボイス)の発行と保存を義務化しています。
インボイス制度では、インボイスを発行したあとに保存をしなくてはいけません。この保存の際に、インボイスを電子化して保存もできます。この場合は、電子帳簿保存法に留意する必要があります。
インボイスを電子化することで、データ入力の手間が減ります。さまざまな人為的なミスを減らすことも可能です。インボイスに電子署名をすることで、データの改ざんがないことを証明できます。またインボイスのデータを、会計システムに移行できるメリットもあります。
請求書をデジタル化するにあたって、いくつかの注意点があります。ここでは請求書デジタル化を実施する前に、注意すべきポイントについて説明します。
請求書デジタル化の導入が決まった際には、取引先に請求書のデジタル化をする旨を説明する必要があります。取引先によっては、請求書のデジタル化に対応しておらず、請求書の郵送を希望するケースもあるでしょう。また取引先がデジタル化された請求書に、正しく対応できるか確認も重要です。
取引先の全社が請求書のデジタル化に対応するのは、現実的ではありません。7~8割の取引先がデジタル化するくらいが現実的なラインです。それでも業務の7~8割は効率化するので、請求書デジタル化のメリットはあります。
請求書電子化にあたって、請求書電子化のシステムが電子帳簿保存法に対応しているか、確認をする必要があります。電子帳簿保存法に対応したシステムならば、請求書データの改ざんなどの不正リスクを防げます。また法改正があっても、システム側で対応ができます。
請求書デジタル化の具体的な方法として、以下の2つの方法を紹介します。
WordやExcelで作ったデータをPDFファイル形式に変換することで、請求書の電子化はできます。PDFファイルに変換するには、Adobe社のPDF編集ソフトAcrobatなどを使うといいでしょう。その後はPDFファイル化された請求書を、取引先にメール送付します。
この方法では、PDFファイルに変換するまで工程が多く、手間がかかるデメリットがあります。またセキュリティ対策上もリスクがあるといえます。
調達・購買管理システムのS2Pを使って請求書をデジタル化することが、一般的でありベストな方法といえます。S2Pであれば、サプライヤーは請求書をオンライン上で作成して、バイヤーは請求書ファイルをオンライン上で受領し、ダウンロードする形式になります。
S2Pを利用することで、PDFファイルへの変換などの手間が省けます。そのため、請求書発行業務の効率化が進みます。
取引データのやり取りであれば、電子署名やタイムスタンプ機能なども不要です。
調達・購買管理システムのS2Pを選ぶ際に、注意するポイントがあります。ここでは、システム選定の注意点を紹介します。
導入するシステムが現在社内で使っているシステムと、連携可能か確認することは重要です。連携ができない場合、システム導入のコストをムダにしてしまうリスクがあります。
そのため事前に既存のシステムと連携が可能か、データのファイル形式や連携方法などを選定時に確認しましょう。
S2Pが、どこまで自動化できるかも重要な要素です。そのためには、自社でどの業務を自動化したいかを確認します。自動化したい業務を洗い出すことで、システム導入による業務効率化が進みます。
S2Pを選定する際には、システムが請求書発行の関連業務に対応しているかも調べましょう。請求書発行の業務には、入金管理や経費管理などの関連業務が発生します。これらの関連業務に請求書電子化システムが対応することで、システム導入の追加コストを減らす可能性もあります。
同業他社のS2Pシステムの導入実績を、システムの選定に役立てるのもいいでしょう。導入実績を確認するには、導入検討している調達・購買システム(S2P)の公式Webサイトを見ることがおすすめです。Webサイトには、システムの導入実績が掲載されているケースがあります。自社と同じ業界の企業の導入実績があれば、導入後の運用イメージもしやすくなります。また、重厚長大なERPシステムでは、クラウドに対応しておらず、市場の変化についていけない可能性があるため、小回りの利くクラウド型のS2Pシステムも有効です。
企業が商品・サービスの授受を行った際、代金の請求と決済を行います。大企業ともなるとそのやり取りの量は膨大になります。
企業間決済、または法人間決済とは、企業間で契約・発注したモノやサービス(企業間取引)に対して対価を支払うことです。
たとえば、自動車メーカーA社が、座席シートの部品を発注したB社に対し、対価として代金を支払う場合が考えられます。
特徴は、取引相手が「消費者(BtoC)」ではなく「企業(BtoB)」である点です。たとえばコンビニエンスストアや飲食店は、サービスを提供する相手が消費者となるため、企業間取引にはあたりません。
企業間決済の種類
企業間決済には、おもに下記3種類の支払い方式があります。
それぞれのメリット・デメリットを、請求する側と支払う側の視点からみていきます。
請求書払い
まずは「請求書払い」です。下の表をご覧ください。
請求書払い |
支払う側 |
請求する側 |
特徴 |
ある期日に複数の取引をまとめて決済する |
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メリット |
振込の手間が少なくて済む |
請求書の発行が少なくて済む |
デメリット |
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株式会社ネットプロテクションズの調査によると、企業間取引で最も利用されているのは現金・請求書払いで、その割合は89.0%でした。 (参考:【ネットプロテクションズ:企業間決済に関する実態調査】企業間決済において最も使用頻度が高いのは「現金・請求書払い」の約90%!|NP掛け払い )
請求書払いでは、個別の取引ごとに請求や支払いが必要ありません。そのため都度払いに比べると、書類のやりとりは大幅に削減されています。
しかし、依然として業務量は非常に多く、請求書受取・支払業務は経理担当にとって負荷の多い業務です。業務内容のほとんどを手入力に頼っており、膨大な時間と手間がかかっているのが理由のひとつです。
口座振替
口座振替の特徴をまとめた表は、下記のとおりです。
口座振替 |
支払う側 |
請求する側 |
特徴 |
定額の決済に向いている |
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メリット |
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デメリット |
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口座振替は、家賃の引き落としをイメージするとわかりやすいでしょう。毎月一定額の取引と決まっている場合に、効果的な決済方法といえます。
口座振替のデメリットは、毎月支払額を変更するのでは余計に手間がかかるため決済が継続的かつ内容が同じ取引に限定される点です。請求書払いの補助としての役割を担うケースもあります。
クレジットカード払い
企業間取引において、クレジットカード払いはどのような特徴があるのでしょうか。
クレジットカード払い |
バイヤー(支払い) |
サプライヤー(請求) |
特徴 |
取引額が少ない、または取引回数が多い決済に向いている |
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メリット |
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デメリット |
カードの利用額に上限がある |
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クレジットカード払いは、ほかの決済方法に比べて額が小さく、回数が多い取引を済ませるのに効果的です。法人カードを導入すれば、社員が利用した金額を会社の口座から引き落とす設定もできます。
ただし、企業間決済においてクレジットカード決済はそこまで広く普及しておらず、対応可能な取引先が限られるのもデメリットといえます。
このように、3つの決済方法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。とくに、最も利用されている請求書払いでは、多くの業務フローをマンパワーで解決しており、経理担当には大きな負担がかかっています。
ここからは、企業間決済を効率化するための方法について解説します。具体的な効率化の方法は、下記の3つです。
それぞれ順番にみていきましょう。
決済代行業者とは、請求する側と支払う側の間に入って、決済業務を代行する業者のことです。賃貸物件と不動産のオーナーの間を取り持つ、管理会社をイメージするとわかりやすいかもしれません。
たとえば、支払う側から集めた代金の一括入金や、期日までに支払いがない場合の催促を代行します。請求書発行業務をはじめとした煩雑な業務が簡略化できるのが、決済代行業者に依頼するメリットです。
一方で、企業間取引のみにサービスが限定される可能性があることがデメリットといえるでしょう。業務委託先の個人と取引するケースのように、すべての決済を代行できるわけではない点に注意が必要です。
自社のシステムをカスタマイズして、効率的な仕組みを構築するのもひとつの方法です。これまで手作業だった処理を少しでも減らせるのであれば、経理担当の負担も軽減するでしょう。会社の存続のために長期的な目線でシステムを入れ替えるのは、企業間決済の効率化に止まらず、システムの老朽化が進む日本企業の課題ともいえます。
ただ、システム自体の改変や保守、運用は技術や費用の面で難易度が高くなります。これまで使っていたシステムが使えなくなると、取引先に迷惑をかけることにつながりかねません。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されるものの、思い切ったシステム改修に取り組めない企業が多いのも実情です。
クラウド型調達・購買システム(S2P)の導入は、支払う側と請求する側の双方に大きなメリットがあります。
たとえば、支払い側が受け取った請求書は、紙や電子データを問わず自動でシステムに登録されます。金融機関と連携することで、振込業務までも自動化できるため、経理担当の手入力は個人・法人に関わらずほとんど必要ありません。
さらに、請求する側は請求書の電子化により印刷や封入、郵送の工程が一切なくなります。データの一元管理はクラウド上で行われており、導入の難易度が低いのも特徴です。企業間決済にかかっていた時間と人件費を考慮すると、コスト削減にもつながるでしょう。
以上の3点を考慮すると、導入の難易度が低く業務効率化が容易な「クラウド型システムの導入」が、とくにおすすめです。
請求書のデジタル化について、具体的な方法と注意すべきポイントについて解説しました。請求書のデジタル化には、請求書発行業務の効率化やコスト削減などのメリットがあります。また電子帳簿保存法やインボイス制度、下請法に対応することも重要です。
企業間決済については、日本企業のおよそ9割がメインとして利用しているのが「請求書払い」です。しかし、請求書払いは業務が煩雑で経理に大きな負担がかかっていました。近年、請求書の発行・受領を行える調達・購買管理システム(S2P)のクラウドサービスも開発されており、普及も進んでいます。この機会にぜひ導入をご検討ください。