購買管理規定とは?構成する7つの要素と必要性について解説

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購買管理規定は、購買管理における不正を防止するためのルールです。

さらに、ルールを決めることで業務の効率化も期待できます。

 

しかし、ルールが増えれば増えるほど管理する品目が多くなり、業務に負担がかかるものです。

購買管理規定の構築・改訂を検討しつつも、業務負担を懸念する方もいるでしょう。

 

そこで本記事では、購買管理規定とはなにかを説明したうえで、その必要性について解説します。

購買管理規定を構築する7つの要素についてもご紹介しているため、構築を検討している方はぜひ参考にしてください。

 

また、購買管理規定を満たしながら業務を効率化させるため、購買管理システムの便利な機能もご紹介します。


購買管理とは?

購買管理とは、その名の通り購買情報を管理することを指します。

プロセスを体系化することで、複雑な購買業務を適切に管理することが可能です。

購買管理の業務内容

購買管理の業務内容は、主に以下の5つです。

 

・発注と受け取り

・納品

・検収と支払い

・保管

・棚卸管理と購買計画の見直し

 

単に購買情報を管理するだけではなく、納品・検収から保管のほか、棚卸管理と購買計画の見直しも担当します。

 

棚卸(たなおろし)とは、会社・工場・商店などで保有する商品・原材料の在庫を数えて数量と品質などを確認する作業です。

つまり、購買管理には正確な在庫管理も業務の1つになります。

購買管理の5原則

購買管理には、5原則と呼ばれるものがあります。

この5原則に沿ってプロセスを管理することにより、管理全体の業務をスムーズに行うことが可能です。

 

・適切な取引先の選定

・適切な品質の確保

・商品の適正な数量設定

・適正な納期設定

・適正な価格の設定

 

購買管理の5原則についてさらに詳しく知りたい方は、「購買管理の5原則とは?効果的な購買にするために必要な準備も」をご覧ください。

 

購買管理と調達管理・生産管理の違い

購買管理とよく混同されがちな言葉に「調達管理」と「生産管理」の2つがあります。

 

調達管理とは、購買に加えて購入したものが届くまでを管理することです。

購入だけでなく、借りることも含まれる点が購買との違いといえます。

 

一方、生産管理とは生産活動全体を統制する管理業務全般のことです。

 

品質・原価・数量・納期の4つの観点で管理しています。

つまり、購買管理とは生産管理の一環であるため、生産管理の中に購買管理が設けられていることになります。

購買管理規定とISO9001

購買管理規定(規定)とは、購買における不正やミスを防止するためのルールのことです。

明確な基準や規則を文書化して内部統制を行うため、企業内の不正やミスなどのリスクが抑えられます。

 

また、購買管理規定を構築する際にISO9001の取得を目指す企業も多いようです。

 

ISO9001とは、商品やサービスの品質に関わるISO規格の1つです。

企業の商品・サービスが国際基準レベルで品質管理されている証であるため、認証を取得すれば取引先や顧客から信頼を得られて取引に活かすことが期待できます。

 

つまり、ISO9001を満たす購買管理規定ができれば、取引先や顧客の信頼を得ることにつながるため、売り上げアップが期待できるでしょう。

購買管理規定の必要性とは?

購買管理規定を設けることによって得られるメリットは、不正の防止のほか属人化の防止、業務の効率化などです。

購買業務におけるリスクを避けられるほか、業務を進めやすくなります。

不正の防止

購買管理規定の最も大きなメリットは、不正の防止といえるでしょう。

購買業務において規定がない、つまりルールがない状態の場合は不正が行われてもそれに気づけないこともあります。

 

しかし、購買管理規定においてだれがどんな業務を請け負い、だれが承諾するか明確にすれば、購買における不正を回避できるでしょう。

属人化の防止

属人化とは、特定の業務において詳細な内容・進め方・注意点などを担当者しか把握していない状況のことです。

 

このように属人化しており、特に規定もなく特定の人物が購買管理を担当している場合は、引継ぎが難しくなったりほかの人では対応できなくなったりしてしまいます。

 

しかし、購買管理規定を設ければ規定(ルール)を社内に浸透できるため、属人化を防ぐことができるでしょう。

業務の効率化

規定がない場合は、購買管理担当者の裁量によって業務内容が決められてしまいます。

その場合さまざまなムダがあることも多く、かえって業務が滞る可能性もあるでしょう。

 

しかし、規定を設ければ業務内容について自分で考えて決めることがなくなるため、業務の効率化につながります。

購買管理規定を構成する7つの要素

購買管理規定は、主に次の7つの要素から構成されることが一般的です。

・総則
・購買
・取引先
・発注
・検収
・仕入計上
・支払い

「総則」以外については、別の章で要素を組み込んでいることもあります。

そのため、章の書く順番や書く内容について厳密に定められているわけではありません。

 

なお、購買管理規定のひな形はインターネット上で提供されていますが、そのまま使うのではなく、必要に応じて要素を足したり引いたりするのがおすすめです。

総則

総則においては、以下のことを定めることが多いです。

ただし、目的や定義以外についてはほかの章で定めていることもあります。

 

専門用語が多い場合、単語に対する定義を設けていることもあるため、業種に応じて設けるとよいでしょう。

 

目的

規定を定める目的。
購買業務の管理運営の円滑化・経営の合理化の推進など。

適用範囲

規定をなんの製品・サービスに対して適用するかその範囲。

定義

購買定義や用語の定義など。
購買に関してはどのような行為を購買とするかを定義する。

業務分担

総括責任者などの決定。
購買計画の立案をどの部署が担当するか書くこともある。

職務権限

だれにどんな権限があるのかを明記。
例えば規定を改廃する際は立案者・協議者・決済者を明確に決める。
決裁権限を定める際は「職務権限規定による」と定めることもある。

購買の基本原則

購買業務に従事する際に従うべきルールを定める。
例えば常に計画的かつ合理的に行うこと、優良な購買先との取引関係の維持増進を図ること、同一資材の購入先は常に複数の相手先を確保すること、一時的・投機的な購買取引をしないこと、など。

 

購買

購買については、第2章や第3章に購買原理や計画について定めることが多いです。

また、購買管理における職務権限についてこの章で定めることもあります。

 

購買方針

購買業務における方針。
公正な取引や安全・環境・人権などに配慮すること、取引サイトのパートナーシップ・機密情報や資産などの適正管理などについて定める。

購買計画

購買担当部署がどのように購買計画を立案するかなどを定める。
例えば「購買品について年次および月次に購買計画を立案し、計画的・合理的な運用を図る」など。

購買予算

購買担当部署がいつ購買予算の編成を行うか定める。
例えば毎期期初に期中の購買予算を編成、毎期末に次期の見込所要量を明示する、など。

 

取引先

取引先については、第2章もしくは第3章に設けられることが多い要素です。

取引先の選定契約の締結などに関する規定を設けます。

 

取引先の選定

だれが取引先の選定を行うか定める。
例えば、購買担当部署の所属長が調査結果に基づき、関係部署と協議のうえで選定するなど。

取引先の選定基準

取引先の選定基準について明記する。
取引先名簿に登録している業者に限定する場合はその旨を記載したうえで、登録業者からの購入が困難な場合はどのように対処するかについても定める。

また、登録業者以外を選定する場合や新規取引先を選定する基準についても記載する。

契約書の締結

だれが契約書の締結業務を担うのか定める。
例えば購買担当部署が「取引基本契約書」を締結する、など。

取引先情報の登録と管理

取引開始の際は取引業者の登録を行うものとして定めたうえで、登録の際にどのような書類を作成してだれから承認を受け、どこで保存するか記載する。
また、登録業者の廃止についてもこの項目で同時に定めるとよい。

新規取引先候補の評価・監査

新規取引先候補の評価・監査においてどのような情報を入手するか定める。
また、定めた結果に対してどのように評価するのかも記載。
評価した取引先に対して監査を実施する場合は、実施時期や監査におけるポイントなども明記する。

 

発注

「発注」は、発注手続き納期管理などに関する規定です。

単独で章を設けられることもありますが、購買計画や取引先などと同じ章で設けられることが多い要素です。

 

発注手続き

だれがどのように発注手続きを行うのか、発注金額や数量の決済方法について記載する。
手続きに関しては「購買管理マニュアル」、発注金額と数量の決済は「職務権限規定」に従うよう定めることもできる。

注文書

注文書に原則として明瞭に記載するべき項目について定める。
例えば以下の項目。
・注文番号と発注日
・購入品目と規格
・数量
・単価と金額
・納期と納入場所
・支払い条件

見積照会と比較

見積時に原則として何社以上に対して見積りを行うか、比較の際はどの項目を重視して注文先を選定するか定める。
例えば見積照会の場合は仕様書・図面・納期・取引条件などを明示したうえでの複数社を比較する、見積比較の際は価格の高低や品質・納期・支払い条件・信頼性など比較する際のポイントについて明記する。

納入場所と納期

購買品の受け渡しにおいて、だれが指定する場所で行うか、納入日はいつとして定めるのかを決定する。
例えば「原則として当社の指定する場所にて行い、受け渡し場所に橈尺した日を納入日とする」など。

 

検収

「検収」においては、受け入れ検収返品に関する規定を設けます。

「購買」とまとめて、1つの章に記載することもあります。

 

検収

検収において、だれがどのように確認し、検査の合否を納品書に明示するか定める。
例えば、受入担当者が数量・品質・単価が納品書の記載内容と一致しているか確認する、など。
また、数量不足や品質不良が確認されたときの処理方法についても記載する。

立会検査

立会検査をだれが担当するか定める。

不良品処理

不良品が発見された場合に誰が折衝して処理と対策を講じるか記載する。
また、手直し費用が発生した場合は請求の有無も明記する。

 

仕入計上

仕入計上においては、仕入計上基準などに関する規定について記載します。

仕入計上には2つの計上基準があるため、「購買管理」「検収」などほかの要素と同じ章に記載されることもあります。

 

仕入計上基準

仕入計上基準には一般的に「入荷基準」と「検収基準」が設けられている。
このうちどちらを採用するかについて明記する。
・入荷基準商品入荷時に仕入れを計上
・検収基準検収時に仕入れを計上

 

支払

支払いに関しては、支払い条件や仕入れ債務の管理などに関する規定を定めます。

また、購買に関わる債務における書類の作成・管理者を決めます。

 

支払い業務

支払い手続きにおいてどのような要領や規定に沿って行うべきかを記載。
例えば請求書を確認のうえ「商品仕入れ実施要領」「一般購買実施要領」「経理規定」による支払い手続きを行う、など。

支払い条件

支払い条件を原則として取引先または自社のどちらの条件に従うものかなどについて定める。
また、例外についてもどのように対応するか明記する。
例えば登録された条件以外での支払いはだれの承認を受けるべきか、どのような取引を原則として行わないか。
やむを得ず行う場合は、だれの承認を得て行うべきか明記。

仕入債務の管理

購買に関わる債務に関して、だれが書類を作成して管理するか定める。

 

購買管理規定を構築する際の注意点

購買管理規定を構築する際は、以下の3つに注意してください。

もし見落としがあれば、不正やミスなどに対するリスクが高くなります。

 

・兼任の排除

・チェック機能の設定

・職務長期化の防止

兼任を排除する

不正を防止するために、発注者と支払い担当者は兼任させないようにしましょう。

発注者と支払い担当者を兼任させた場合、仕入先から営業を持ちかけられ不正につながる可能性があります。

 

また、職務を分担することで業務の効率化も期待できるでしょう。

通常業務で手がいっぱいな場合、1人を複数の担当につけるよりも2人に分けた方が負担は減ります。

 

チェック機能を設ける

納品書・検収報告書・請求書の内容をチェックする仕組みを設けてください。

書類のチェック者を複数配置することで、不正やミスを防げます

 

また、不正対象になりがちなリベートについても、妥当性をチェックできるようにしましょう。

 

※リベート…流通業者の取引高に応じてメーカーが仕入れ代金の一部を払い戻すこと。「売上割戻」や「キックバック」とも呼ばれる。

職務の長期化を防ぐ

取引先との癒着を防止するため、担当者は一定期間で移動する規定を設けます。

不正を防止するためにも、同じ担当者が長く購買を管理しないよう注意してください。

業務の負担が減る購買管理システムの機能

購買管理規定にはさまざまな項目があります。

項目数や内容によっては業務が滞ってしまうことや、従業員に負担がかかることもあるでしょう。

 

そこで、業務の負担を減らせる購買管理システムの機能についてご紹介します。

見積依頼・発注

「見積依頼・発注」は、複数のサプライヤーに一括で見積もりを依頼できる機能です。

複数の取引先に見積もり依頼して比較することが購買規定によって決まっている場合、この機能があれば発注が一括でできるため効率化につながります。

 

また、ペーパーレス化も促進できるため、経費削減につながるでしょう。

カタログ購買

「カタログ購買」は、購入頻度の高い物品をシステムに登録することで、オリジナルのカタログを作成できる機能です。

商品の検索から支払いをワンストップで行えます。

 

購買管理規定により資材などを指定のカタログから購入することが定められている場合は、この機能があると便利です。

仕入先管理

「仕入先管理」は、仕入先の管理ができる機能です。

直接材や間接材などの購入実績と、今後の購買予定を含めた情報を記録・管理できます。

 

購買管理規定に仕入先管理を設ける際は、購買システムを利用して管理することを記載すれば管理が簡単です。

また、情報をデータ化することで業務効率の向上も期待できます。

契約管理

「契約管理」は、契約内容を電子化してシステム上で管理する機能です。

いつどんな取引がされたか管理できるほか、現在進行中の取引も管理できます。

 

購買管理規定には、契約している取引先を管理する項目が設けることもあるでしょう。

アナログ的な管理をしていると情報共有が難しいため、契約管理をデータ化して管理する機能があると便利です。

検収支払管理

「検収支払い管理」は、納品から検収・支払いまでの流れを管理する機能です。

案件ごとに状況が一目で把握できるようになるため、流れがわかりやすいなどのメリットがあります。

 

また、検収書の作成や納品書の管理もできるため、業務の負担が軽減されるでしょう。

まとめ

購買管理規定とは、購買における不正やミスを防止するために設けるルールであることがわかりました。

また、不正やミスの防止だけでなく属人化の防止と業務の効率化にもつながります。

 

ただし、購買管理規定を設けたからといって完全に不正やミスを防げるわけではありません。

人員配置や管理体制によっては、不正やミスが発生することもあります。

 

そのため、購買管理規定を構成する際は、「兼任の排除」「チェック機能」「職務の長期化の防止」の3つに注意して構成してください。

これらに注意することで、不正やミスを防止できます。

 

購買管理規定の遵守と適切な人員配置・管理体制を構築すれば、不正やミスを防げるでしょう。

しかし、通常業務に購買管理業務がプラスされるため、従業員に負荷がかかってしまうことも考えられます。

 

そこで便利なのが購買管理システムです。

購買に関する情報をデータ化してシステム上で管理することにより、記録・管理・情報共有などが簡単にできます。

 

「購買管理システムを導入したいけれどどれを選べばいいの?」

「使いやすい購買管理システムを導入したい」

 

このようにお悩みであれば、「intra-mart Procurement Cloud」を検討してはいかがでしょうか?

 

購買管理に必要な機能が標準搭載されており、短期・簡単ステップで導入できます。

また、ご希望であれば1部署からのスモールスタートなど無理のない導入も可能です。

 

マニュアルがなくても使いやすいUIも魅力の1つです。

だれでも簡単に使えるデザインを意識しているため、操作が簡単で社内に浸透しやすいでしょう。

 

そのほか、金融EDIにも対応しています。

金融EDIは売掛金の消込業務を効率化させるため、手作業で照合する手間も減らせるでしょう。

 

詳しく知りたい方は、公式サイトより資料をご請求いただくか、お気軽にお問い合わせください。

 


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