intra-mart Procurement Cloud
新製品の開発により売上・利益を得る場合は、開発購買が欠かせません。
開発購買は企画段階から参画することでコストダウンを目指す目的がありますが、上流段階で参画できなければ失敗することもあるでしょう。
そこで本記事では、開発購買とはなにかを解説したうえで機能と役割、開発購買におけるコストダウンを図る発注方式と手法をご紹介します。
うまくいかない場合の理由についても解説しているため、開発購買がうまくいかず困っている方はぜひ参考にしてください。
開発購買とは、開発段階での購買活動のことです。
新製品の開発段階から、購買・調達部門が戦略的に関わる取り組みを行います。
開発購買は新製品を作る際にコストダウンを図れるため、購買コストを削減する取り組みとして注目されています。
原価企画とは、製品開発の企画段階においてあらかじめ原価を管理して見積もる仕組みのことです。
「開発購買」と呼ばれる前から存在している単語であり、同じ意味で扱われることも多い傾向があります。
特に長年「原価企画」として社内で根付いている場合は、開発購買ではなく原価企画と呼んでいることも多いです。
しかし、原価企画は製品の企画段階での見積もりであるため、開発購買の役割の1つであるともいえるでしょう。
試作購買とは、調達の仕事の1つです。
調達業務は試作購買と量産購買に大きく分けられます。
試作購買は商品開発段階から複数の部品メーカーと交渉を進め、パートナーとなる仕入先を決定します。
一方、量産購買は実際の製造に応じて仕入れる部品の数量や納期などについて、パートナー企業と交渉する役割です。
どちらも開発購買に大きな関わりのある業務です。
開発購買におけるコストダウンを目的とした交渉とは離れている印象もありますが、企業によっては試作購買も量産購買も開発購買部門の1つとしてまとめられていることもあります。
上流購買とは、開発計画確定前の購買活動のことです。
最近では電力会社で推進されることが多く、東京電力や中国電力、北陸電力でも推進と定着が進められています。
開発購買では上流段階での購買活動も役割の1つであるため、上流購買とは開発購買過程の1つであると言えるでしょう。
開発購買の機能と役割は、主に以下の4つです。
それぞれ別の段階において、機能と役割を発揮する必要があります。
・原価企画の段階での提言
・取引先候補の情報提供
・価格交渉とサプライヤー・マネジメント
・品質の確認
商品企画段階においては、原価企画に対して提言します。
原価企画とは、先ほど説明したように製品開発の企画段階においてあらかじめ原価を管理して見積もる仕組みのことです。
商品企画段階において提言が必要な理由は、製造業におけるコストは企画・開発段階で決まる傾向が高いためです。
そのため、開発購買としてはこの時点からの参画が必須となります。
この段階で原価企画に対して適切な提言を行うことにより、コストダウンを実現しやすくできるでしょう。
また、営業部門や技術開発部門とコミュニケーションを取ることも重要です。
コミュニケーションを密に取ることで各部門の要求を確認しやすくなるほか、市場における新製品情報・新工法・原材料に対応可能な取引先などの情報を収集できます。
新製品の構想設計段階では、原材料部品の調達・製造可能な取引先をリストアップします。
さらに、取引先として採用予定の原材料部品に関する情報を将来の見通しも含めて提供するのもこの段階です。
また、この時点で未開発の新技術であれば、共同開発も検討する必要があるでしょう。
そうなると何らかのパートナーシップ契約が必要になるため、そのことを見越したうえで情報提供しなければなりません。
そのほか、見積原価の作成も必要です。
明確になった原材料の構成から原材料費を想定して、既存の原材料と新原材料の割り振りを行います。
設計段階では価格交渉をするほか、進捗管理とサプライヤー・マネジメントも必要です。
サプライヤー・マネジメントとは、提携するサプライヤーの情報を基に評価を行い、自社の購買活動に活かすことです。
つまり、コストダウンによって目標原価を達成するためには、サプライヤー・マネジメントの強化が必要になります。
サプライヤー・マネジメントには、コミュニケーションスキルが必須です。
もし強化できていない場合、量産段階においてサプライヤー側の要因による不良・スケジュールの遅延が発生する恐れがあります。
試作段階においては、材料全体の納期や品質に対する問題の有無を確認するため、入手したサンプルのテストを依頼して品質を確認します。
品質が確認できたら製品の構成に必要なすべての原材料価格を確定し、見積原価の総額が予算内に収まるか確認することも必要です。
もし予算を超える場合は、単価の高い原材料を中心にコストダウンを検討して価格交渉を行います。
開発購買においてコストダウンを図る発注方式や手法には、以下の5つがあります。
開発購買以外でも活用できる手法もあるため、ぜひ覚えてください。
・まとめ発注
・相見積もり
・VE発注
・分割発注
・パートナーシップ契約
まとめ発注とは、1回分の発注量をまとめることで値下げする手法のことです。
一度で大量に仕入れる場合、生産に必要な資材の原価や輸送費の削減が可能になります。
取引先にそのようなメリットがあるため、価格交渉がしやすくなる可能性は高くなるでしょう。
ただし、数量の見極めが重要です。
価格が安くなるからといって必要な数量以上を発注すれば、不要な在庫を抱えてしまうことになります。
そうならないためにも、設計段階・試作段階で必要な数量を決定したうえで交渉に進みましょう。
相見積もりとは「あいみつ」とも呼ばれ、複数の業者から見積もりを集める手法のことです。
開発購買に限らず、価格交渉の場面においては基本中の基本の手法といえます。
相見積もりをするメリットは、相場を把握したうえで価格とサービスを比較し、その中からよりよい取引先を選べることです。
利益を出すには高品質・低価格の資材が必要になるため、相見積もりをすれば安い仕入先を簡単に見つけられます。
また、新製品の開発においてこれまで扱ったことのない資材を仕入れる際は、相場の把握が難しいこともあるでしょう。
しかし、相見積もりをすればおおよその相場が把握できるため、交渉がしやすくなります。
ただし、品質を維持するためには低価格を提示した取引先と安易に契約するのではなく、品質や納期についても検討したうえで決めることが大切です。
そのため、価格だけではなくほかの要素もしっかりと比較する必要があります。
VEとは、バリューエンジニアリングの略です。
品質を維持したままコストダウンすることを指します。
この方法で発注することを「VE発注」、提案をすることを「VE提案」といいます。
大手企業でもVE発注の採用でコストダウンを図った例がいくつかあります。
例えば中国電力の場合、VE発注方式の採用と仕様変更や技術提案により、効率価額8億円を実現しました。
具体的には発電所に石炭貯蔵設置・石炭受入・払出設備基礎などの設置工事において、埋戻し材のスリム化や屋根仕上げ材の仕様変更などさまざまな技術提案を行ったようです。
分割発注とは、大規模工事を複数の部分に分割して発注する方式のことです。
公共工事では、工区や工程を細分化し複数の業者に分割発注することが一般的ですが、中小建設業者においてもよく採用されます。
分割発注は、複数の企業から見積もりを受け入れることで、よりよい条件で発注できることがメリットです。
相見積もりとも似ていますが、複数の業者と契約することが大きな違いになります。
ただし、複数の業者が取り掛かるため、工期が長引く可能性やコストの増加・品質の低下も懸念されます。
そのため、取引先の選定は慎重にするべきでしょう。
パートナー契約とは、企業間や個人同士で共同事業を展開する際に締結する契約のことです。
目的に応じてさまざまな種類があり、技術提携・業務提携・販売提携などがあります。
・技術提携…特定の目的を達成するため複数の企業が技術面で協力関係を結ぶための契約。技術を得るために合併や企業買収をしなくてもよいことがメリット。
・業務提携…自社にない経営資源を持つ他社と協力し、特定の業務を遂行してパートナー企業と良好な関係を築くための契約。他社の技術やノウハウを活用し、低コストで事業を行えることがメリット。
・販売提携…自社製品を開発・販売する企業が多くの売り場を確保して多数の製品の販売を目指す際に結ばれる契約。迅速な販路の拡大と直営店の展開におけるリスクを回避できることがメリット。
開発購買においては、技術提携や業務提携により技術を得るためのコストが下げられます。
提携終了後は、自社の新製品開発に技術を応用することも可能です。
そのほか、パートナー契約のメリットとして以下の4つが挙げられます。
・リソースやノウハウの共有による効率化
・リスクの分散
・新市場への参入や顧客獲得
・競合他社との差別化
ご紹介した手法や発注方法でも、開発購買がうまくいかないことがあります。
その理由として、以下の4つが考えられます。
・製品の採算性の悪化
・上流段階での未参画
・購買に関するデータの不可視化
・継続した業務効率化が困難
製品の採算性の悪化により、開発購買が上手くいかないことがあります。
事業や商品が開発・生産コストを取り返すほどの利益や売り上げを生み出せない場合、もちろん開発購買もうまくいきません。
製品の生産性が悪化する原因としては、以下の3つが挙げられます。
開発・生産コストを上回る利益や売り上げが生み出せない場合は、この3点に着目して分析・改善してはいかがでしょうか。
・他製品との差別化を図れていない
・価格競争が激しい
・従来のコストダウン方法では限界がある
開発購買においては、上流工程である開発段階からの参画が重要です。
購買に関する情報を随時共有することで、コストダウンにつなげます。
しかし、この段階で未参画の場合、QCD(品質・費用・納期)の高い調達部品と、サプライヤーに関する情報を十分に共有できません。
そのため、開発購買はうまくいかなくなるでしょう。
コストダウンを図るには全体像の把握が最も重要になるため、開発段階からの参画は必須です。
また、開発部門・製造部門・購買部門において「よい製品」の定義が異なる場合があります。
他部門が追求する製品の理想を満たす仕入先を選定するためにも、開発段階から参画しましょう。
購買に関するデータが可視化されていない場合、属人化によってノウハウが蓄積できていないパターンがあります。
属人化とは、特定の業務における詳細な内容・進め方・注意点を担当者しか把握していない状況のことです。
属人化しているケースでは、アナログ的な管理をしておりベテランの購買担当者のみが把握している状態が多く見られます。
そのため、担当者不在の場合や引継ぎ後の情報の共有が難しくなるでしょう。
また、属人化してしまうと顧客対応の遅延や品質の低下、組織力の低下などのデメリットもあります。
そのようなデメリットが発生すれば顧客の信頼を失うリスクもあるため、属人化は避けるべきです。
開発購買では、発注実績以外にもサプライヤーの選定方針や比較結果などの情報が必要です。
そのため、属人化を防止して購買に関するデータを可視化し、有効なデータの蓄積を促すことが重要になります。
これまでご紹介した原因に当てはまらない場合は、業務負荷が大きくないか確認してください。
もしかすると、担当者の許容範囲を超えて業務を担当させているかもしれません。
開発購買においては仕様書の作成や発注手続きの業務負荷が大きく、継続した業務効率化が困難なこともあるでしょう。
特に、サプライヤーとのやり取りをアナログ的に行っている場合、通常の購買業務に追われて開発購買に割くことができないことも考えられます。
また、開発購買には製造部やサプライヤーとの連携も必要ですが、連携が取れていない場合は交渉が難しいこともあるでしょう。
そのような場合は、コミュニケーションが取れるような改善が必要です。
先ほどご紹介した理由により、開発購買が上手くいかないことがあります。
そのようなときは、業務効率を向上させるために購買管理システムの導入がおすすめです。
購買管理システムでは開発購買で便利に使える機能が多いため、さまざまな業務の効率化が目指せます。
例えば、開発購買において便利に活用できる機能としては以下の5つがあります。
・購買計画
・仕入先管理
・取引契約管理
・価格・品質管理
・納期管理
開発購買の推進や業務効率化を図る目的で購買管理システムを導入する場合は、これらの機能が搭載されているものを選ぶとよいでしょう。
「購買計画」は、製品の生産計画にしたがって必要な材料と部品をどの企業から仕入れるのか、納期と数量・価格について決める機能です。
情報が可視化されるためわかりやすく、属人化も防げます。
また、システム上でデータを管理することで、製品生産計画に対し材料や部品を漏れなく発注できているかも確認可能です。
「仕入れ先管理」は、過去の実績や今後の購買予定を含めた情報の記録・管理ができる機能です。
いつ何をどのくらいの数量仕入れたかわかるほか、購買管理全体のコストの最適化にもつながります。
システムによっては最低価格を比較したうえで新規購入先を提案する機能もあります。
追加すれば、新規取引先の開拓に対する手間も軽減できるでしょう。
「取引契約管理」は、取引契約内容の情報を管理する機能です。
いつどんな取引を行ったか、詳しい内容をデータ化してシステム上で管理できることがメリットです。
また、過去の取引も電子化して管理できるため、属人化の防止にもなります。
開発購買においては、価格と品質が重要になります。
そのため、購買管理システムの「価格と品質管理」の機能が便利です。
価格管理:過去の取引価格を管理できるため、次回仕入れる際にすることができます
品質管理に:事前に指定した品質で納品されるか否かを管理できます
品質が悪い場合においては個数と状態を把握することで、以後の生産工程の調整がすぐにできます。
「納期管理」は、発注した材料や部品が納期までに納品されるかどうか、現在のステータスをわかりやすく可視化する機能です。
万が一納期が遅れる場合は情報を素早くシステム上で共有できるため、生産工程の延期や生産計画の見直しに素早く移れます。
開発購買とは、開発段階での購買活動であることがわかりました。
新製品を開発する際にコストダウンを図れるため、購買コストを削減できるメリットがあります。
開発購買において、コストダウンを図る発注方式と手法についても解説しました。
しかし、ご紹介した発注方式と手法を使ってもうまくいかないこともあるでしょう。
そこで便利なのが購買管理システムです。
購買管理システムの機能を活用することにより、業務の効率化と属人化・ミスの防止につながります。
「購買管理システムってどれを選べばよいかわからない」
このようにお悩みであれば、「intra-mart Procurement Cloud」がおすすめです。
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