【建設業向け】購買管理システム選定のポイント4選!業界の課題と建設工事案件のシステム要件

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目次


建設業界の課題と建設業法

近年、建設業界は少子高齢化による労働力不足と就業者の高齢化といった構造的な問題に直面しています。

一方的な代金の差し引きや不適切な下請取引、支払保留などの問題などにより適切な賃金水準の確保などに影響を与え、建設産業の発展を阻害している原因となっています。

このような問題を解決するため政府は、バイヤー、サプライヤーの企業間取引の適正化に注力しており、建設業法の法令を順守するためのガイドラインを公表しました。

今回は、
建設業界(建設業法の対象となる建設工事案件)の調達、購買業務(見積、契約、注文等)を建設業法を順守していくために必要な調達・購買領域の業務・システムの要件
について解説します。

・建設業(建設業法2条2項)
「建設業」は、元請・下請などいかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う事業者です。

・建設業法
建設業法とは、建設業者の資質向上や、建設工事請負契約の適正化等を図るための規制を定めた法律です。
住宅やビルの施工に関する契約などに適用され、施工業者は建設業法のルールを遵守しなければなりません。

建設業法の目的は、法規制によって建設工事の適正な施工を確保してサプライヤーを保護することです。
1.建設業者の資質向上建設業者の許可制や行為規制を定め、財務基盤やガバナンス体制の整備を促す。
2.建設工事請負契約の適正化建設工事請負契約に定めるべき事項や、契約条件に関する規制などを定め、不合理な内容の契約が締結されることを防ぐ。

・建設業法に違反した場合の罰則(ペナルティ)
1.国土交通大臣・都道府県知事による指示・営業停止処分建設業法に違反するなど、不適正な業務を行っている建設業者に対し、国土交通大臣または都道府県知事は、是正のための必要な指示をすることができます
(建設業法28条1項・2項・4項)。
2.建設業者の許可取り消し建設業法違反の情状が特に重い場合や、営業停止処分に違反した場合には、国土交通大臣または都道府県知事により、建設業の許可を取り消される可能性があります(建設業法29条1項8号)。
3.刑事罰建設業法に違反する行為には、刑事罰の対象となるものもあります。

建設業法法令順守ガイドライン
建設業法令順守ガイドラインは、建設業の下請け取引における取引の流れに沿った形で、見積条件の提示、契約締結といった13の項目について、留意すべき建設業法の規定を解説し、建設業法に違反する又は違反する恐れのある行為事例を示すものです。

見積依頼(RFQ)機能要件

バイヤーからサプライヤーに見積依頼書(RFQ)を出し、サプライヤーに見積書を作成してもらい、比較検討をする機能です。

工事内容(最低限明示すべき事項)

バイヤーがサプライヤーに対して最低限明示すべき事項としては、以下の8項目です。
①工事名称
②施工場所
③設計図書(数量等を含む)
④下請工事の責任施工範囲
⑤下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体工程
⑥見積条件及び他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
⑦施工環境、施工制約に関する事項
⑧材料費、労働災害防止対策、建設副産物(建設発生土等の再生資源及び産業廃棄物)の運搬及び処理に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項 

バイヤーは、当該下請工事に関し、
①地盤の沈下、地下埋設物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象 
②騒音、振動その他の周辺の環境に配慮が必要な事象 が発生するおそれがあることを知っているときは、請負契約を締結するまでに、サプライヤーに対して、必要な情報を提供しなければなりません。

見積条件として提示しなければならない法定14項目

建設工事請負契約書に記載しなければならない15項目のうち「請負契約金額」を除く14項目が提示すべき項目として定められています。(建設業法第20条4項、第20条の2)

14項目の一つである「工事内容」に当てはまる内容として以下の項目があげられます。
バイヤーはサプライヤーに最低限これらの項目を最低限提示しなければなりません。

確定していない項目がある場合にはその理由を明確にする必要があります。
①工事内容
②工事着手の時期及び工事完成の時期
③工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
④請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑤当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
⑥天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
⑦価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑧工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑨注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
⑩注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑪工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑫工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑬各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金⑭契約に関する紛争の解決方法

施工条件・範囲リスト

見積時点における価格を決定する事項について書面により明確にするため、見積協議の際に活用する標準モデルとして作成したリスト(16工種)です。
施工条件・範囲リスト(一般財団法人建設業振興基金)

見積依頼の期間

建設業法では、サプライヤーが見積書を提出するため、一定の期間を設けなければなりません。
バイヤーが適正な見積を行うために必要な期間で、工事1件の予定価格によって必要な見積期間は異なります。

見積期間
・予定価格500万円未満の場合、1日以上
・予定価格500万円以上5,000万円未満の場合、10日以上
・予定価格5,000万円以上の場合、15日以上

サプライヤー向けの見積作成機能

令和3年には「デジタル改革関連法」が公布されました。これに伴い建設業法が一部改正され、見積書の電子化が認められました。

契約締結、受発注機能要件

基本契約書の締結、受発注(注文書送付、注文請書受領、受領・検査・検収)に関する要件です。

契約書項目

契約書面に記載しなければならない事項は、以下の①~⑮の事項です。

注文書・注文請書の項目
①工事内容
②請負代金の額
③工事着手の時期及び工事完成の時期
④工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容 

基本契約書を締結している場合、 取引の都度発生する注文書の項目は上記4項目で良いとされています。
ただし、基本契約書を締結していない場合は以下基本契約の項目についても都度記載しなければなりません。

受領(検収)について
バイヤーは、サプライヤーから建設工事完成の通知を受けた日から20日以内に、その工事の完成を確認するための検査を行うことが義務付けられています。また、検査完了後は、目的物を受領しなければなりません。
そのため、サプライヤーの出荷通知後から検査期限まで定期的に受領依頼(検収)を行う旨の通知メールを送付する機能があるとよいでしょう。

基本契約の項目
⑤請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑥当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
⑦天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
⑧価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑨工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑩注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
⑪注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑫工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑬工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑭各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
⑮契約に関する紛争の解決方法 下請契約の締結に際しては、下請負人が交付した見積書において、建設業法第20条第1項の規定により、工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数が明らかである場合には、その見積内容を考慮すること。 

電子契約

平成13年4月に施行された「IT 書面一括法」により、書面の交付、書面による手続等が義務付けられている規定について、一定の技術的要件(以下、電子契約の技術的基準)の下で、相手方の承諾を得たうえであれば書面に記載すべき事項を電磁的措置によって行えるようになりました。

また、建設業界については、国土交通省によりCI-NET(*)による電子契約も認められています。

CI-NET
とは、建設産業全体の生産性向上を図るため、建設生産に関わる様々な企業間の情報をネットワークを利用して交換するための仕組みです。

建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン

建設工事の電子契約についての解説

国土交通省グレーゾーン解消制度
事業者が新規事業の計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を照会し、躊躇なく事業を実施できるよう後押しする制度です。

  備考
平成30年度 建設業における電子契約サービスの取扱いについて 概要 公表内容 公表内容2
令和元年度 電子契約サービスに係る建設業法の取扱いについて 公表内容
令和元年度 電子契約サービスに係る建設業法の取扱いについて 公表内容 公表内容2
令和2年度 電子契約サービスに係る建設業法の取扱いについて 公表内容
令和3年度 電子契約サービスに係る建設業法の取扱いについて 公表内容 公表内容2
令和3年度 電子契約サービスに係る建設業法の取扱いについて 公表内容
令和4年度 建設業界への電子契約サービスの提供 公表内容
令和4年度 建設業界への電子契約サービスの提供 公表内容 公表内容2
令和5年度 電子契約サービスに係る建設業法の取扱いについて 公表内容
令和5年度 電子契約サービスに係る建設業法の取扱いについて 公表内容1-1 公表内容1-2

 

電子契約の技術的基準

建設業法施行規則第13条の4第2項に「技術的基準」として以下3つの要件が定められています。

見読性

当該契約の相手方がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものであること。

非改ざん性

ファイルに記録された契約事項等について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること。

(1)公開鍵暗号方式による電子署名 公開鍵暗号方式による電子署名を採用する必要がある
(2)電子的な証明書の添付 信頼される第三者機関が発行する電子的な証明書を添付して相手方に渡す必要がある
(3)電磁的記録等の保存 契約事項等の電磁的記録等を適切に保存しておく必要があること、その際、保管されている電磁的記録等が改ざんされていないことを自ら証明できるシステムを整備しておく必要がある

タイムスタンプについて
タイムスタンプは、「存在証明」と「非改ざん証明」の2つの役割があります。
「存在証明」は、記録された時刻以前に電子データが存在したことを指します。
一方で「非改ざん証明」は、記録された時刻以降にデータの変更がなかったことの証明です。
タイムスタンプ発行の仕組みは、下記の①要求 ②発行 ③検証 の3ステップがあります

出典:総務省|電子署名・認証・タイムスタンプ その役割と活用

電子帳簿保存法との相違について
電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿と国税関係書類を電子保存するためのルールを定めた法律です。
電子帳簿保存法で認められている保存方法には、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの方法があります。 電子データは簡単に改ざんができてしまうため、国税関係帳簿書類の電子データ保存には、本物だと確認できる「真実性の確保」と、誰でも視認できる「可視性の確保」のためタイムスタンプが求められてきました。

しかし、電帳法改正により「訂正削除履歴が残る又は訂正削除ができないシステムを利用する」ことでタイムスタンプを利用しなくてもよい方法が認められることになり「建設業法」よりは要件が緩和されています。

建設業法においても緩和される日が来るかもしれません。

本人性

当該契約の相手方が本人であることを確認することができる措置を講じていること。

グレーゾーンの回答 では下記4つの方式について明記されています。

方式1.当事者署名型電子署名

ID、パスワードを用いたログイン認証(1要素認証)を行い、認証局が本人確認を行い発行する電子証明書、タイムスタンプにて署名する電子署名

方式2.事業者署名型電子署名(2要素認証)

ID、パスワードを用いたログイン認証、及びSMSでのパスコード入力(2要素認証)を行い、事業者の証明書、タイムスタンプにて署名する電子署名

方式3.事業者署名型電子署名(1要素認証)

ID、パスワードを用いたログイン認証(1要素認証)を行い、事業者の証明書、タイムスタンプにて署名する電子署名

方式4.電子捺印

ID、パスワードを用いたログイン認証(1要素認証)を行い、印影イメージ(名前、会社名、スキャン画像など選択可)、タイムスタンプを付与する方式

経済産業省および国土交通省が主務官庁として、「第三者である認証事業者ではなく『契約当事者』、メールアドレス等で本人同士が本人確認措置を行った上でクラウド上で電子契約を行なっているのであればそれで足り、クラウド事業者が第三者として本人確認を行うことは要件ではない」との見解を示されました。

支払機能要件

特定建設業者の下請代金の支払期限については、注文者から出来高払又は竣工払を受けた日から1月を経過する日か、下請負人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で定めた支払期日のいずれか早い期日となります。 

なお、「建設工事」以外の取引については、「建設業法」ではなく、「下請法」の対応が求められるため留意が必要です。

①一般建設業
 特定建設業に該当しない建設業をいいます(建設業法3条6項・1項1号)

②特定建設業
 建設業のうち、発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、その工事の全部または一部を、下請代金が4500万円以下(建設工事業の場合は7000万円以下)の下請契約を締結して施工しようとするものをいいます。
(同法3条6項・1項2号、建設業法施行令2条)

支払手段について
下請代金の支払いはできる限り現金によるものとし、少なくとも下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をすることが必要です。

また、下請代金を手形で支払う際には、現金化にかかる割引料等のコストや手形サイトに配慮をすることも求められています。

帳簿の保存機能要件

建設業者は営業所ごとに、営業に関する事項を記録した帳簿を備え、5年間(平成21年10月1日以降については、発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものにあっては、10年間。)保存しなければならないとされています。

また、電子帳簿等保存における対象書類として、取引関係書類(注文書、見積書、請求書、契約書、領収書など)は
電子帳簿保存法の対象となり、データの「真実性」と「可視性」を確保するための要件が求められています。

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(以下:JIIMA)が認証する「電子取引ソフト法的要件認証※」を取得しているシステムであれば要件を満たしているため参考にしたはいかがでしょうか。

※電子取引ソフト法的要件認証は、国税関係書類をコンピュータで作成し電子的にやり取りする場合の当該取引情報の保存を行う市販ソフトウェア及びソフトウェアサービスが、改正電子帳簿保存法第7条の要件を満たしているかをチェックし、法的要件を満足していると判断したものを認証するものです。

まとめ
建設業界で利用する調達・購買システムを利用する場合でも、すべての機能要件が網羅的に組み込まれている必要はありません。
本来の目的である使いやすく業務が効率化され、利用を徹底することで支出の最適化が期待できるシステムを選定していくことが重要です。
ただし、建設業法や建設業法法令順守ガイドライン、「技術的基準」に係るガイドラインを考慮した運用を想定しているシステムを選定することでガバナンス強化、法令への対応などのメリットも享受できるため下記の4つのポイントについてシステムベンダーに確認をしてみましょう。

購買管理システム選定のポイント4選

①見積依頼(RFQ)機能要件
 ・見積依頼時に最低限明示すべき事項や条件の提示ができること
 ・施工条件・範囲リストを提示できること
 ・予定価格に対して見積依頼の期間が十分であること

②契約締結、受発注機能要件
 ・基本契約の項目、注文書・注文請書の項目が記載できること
 ・建設工事完成の通知を受けた日から20日以内に工事完成検査(検収)を行うこと
 ・「技術的基準」に係るガイドライン、国土交通省グレーゾーン解消制度に対応していること

③支払機能要件
 ・「建設工事」であれば、「建設業法」そうでなければ「下請法」の対応に基づき支払期日に対応すること
 ・支払手段はできる限り現金とすること

④帳簿の保存機能要件
 ・「建設業法」に基づく保存期間に対応すること
 ・「電子帳簿保存法」に対応していること

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