intra-mart Procurement Cloud
近年、企業の競争力強化において、業務効率化とコスト削減は重要な課題となっています。
その解決策の一つとして注目されているのが「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」です。
しかし、BPOについて理解が浅いまま導入を検討すると、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性もあります。
そこで今回は、購買業務におけるBPOの定義から導入事例まで幅広く解説します。
BPOのメリットやデメリット、導入手順などを理解し、自社にとって最適なBPO活用方法を見つけましょう。
BPO(Business Process Outsourcing)とは、企業が自社の業務プロセスの一部または広範囲を外部の専門業者に委託することです。
これにより、企業は自社の強みであるコア業務に集中し、競争力を高めることができます。
BPOの対象となる業務は人事・経理・カスタマーサポートなどが一般的ですが、近年では購買業務においてもBPOが注目されています。
購買BPOでの具体的な機能は以下のとおりです。
・サプライヤー選定
・見積取得
・発注
・請求書処理
これらの業務に対してBPOを活用することで効率化を図ることができます。
購買業務にはさまざまな課題があります。
特にBPO未導入の場合には、自社の状況と照らし合わせて参考にしてください。
購買部は、見積依頼・価格交渉・納品確認・請求書処理など多岐にわたるタスクを抱えている一方で、限られた人員で対応しなくてはなりません。
結果的に業務負荷が高くなり、さまざまな影響が生じます。
・担当者の疲弊とモチベーション低下
・ミスの増加による納期の遅延や品質の低下
・人材の定着率悪化
・スキルやノウハウのブラックボックス化
購買担当者のノウハウやスキルが属人化していると、担当者不在のときに業務が停滞するリスクにつながります。
業務の属人化によるリスクは以下のとおりです。
・担当者の休暇や退職時などの業務の停滞
・引き継ぎ時間の長時間化
・生産性の低下
・担当者ごとの業務のバラツキ
紙媒体やFAXでのやり取り、手作業によるデータ入力など、アナログな業務フローは非効率であり、ミスの温床になります。
また、情報共有が遅れ、迅速な意思決定を妨げる要因にもなります。
具体的な影響例は、以下のとおりです。
・紛失や誤送信
・データ入力ミスによるトラブルの発生
・情報共有の遅れによる納期遅延や機会損失
業務プロセスが統一化・可視化されていないと、非効率な作業やミスが発生しやすくなります。
具体的な課題は、以下のとおりです。
・作業のムダや重複による非効率な作業の発生
・担当者ごとの作業手順や判断基準の違いによるミスの発生
・業務プロセスが可視化されていないことによる問題点の発見・改善の遅れ
この章では、購買業務におけるBPO導入のメリットを解説します。
企業の規模や業種に関わらず、多くの会社がBPOによって業務の効率化や競争力の強化が可能です。
実例においては、BPOの導入により月間でスタッフ4名分(約646時間)のリソースを削減して、コア業務に集中させている企業もあります。
この章では4つの観点からBPO導入のメリットをご紹介します。
購買BPOを取り入れると、作業にかかる費用を大きく削減できる可能性があります。
専門業者の豊富な経験と知識を活かし、効率的な方法でコストを抑えられるためです。
例えば、まとめ買いによる単価引き下げや、取引先との交渉力アップなどが実現できます。
また、固定費だった人件費を変動費に変更できるので、景気の波にも柔軟に対応できるようになります。
その結果、財務面での安定性が高まり、経営の自由度が増します。
BPOを活用すれば、自社のリソースをかけずに専門業者のノウハウやシステムを活用した効率的な業務フローを構築できます。
例えば、見積もり依頼は、BPO業者が複数のサプライヤーに見積もりを一括依頼し、比較検討した上で最適なサプライヤーを選定します。
システム化を併用して自動化を推進することにより、大幅な時間短縮とミスの削減も可能です。
結果的に、購買担当者は、サプライヤーとの関係構築やコスト削減交渉などの戦略的な業務に集中できるようになり、会社全体の生産性向上に貢献します。
購買業務に対応したBPO業者は、特化した専門知識と最新技術を持っています。
具体例をいくつか紹介します。
・法規制やコンプライアンスへの対応:購買における製品の安全基準・環境規制・輸出入規制など
・サプライヤー選定と価格交渉:サプライヤーとのネットワークや市場価格・品質に関する豊富な情報に基づいた最適なサプライヤー選定
・リスク管理:国際情勢や為替リスクなどのリスク予測・対策
・最新技術やトレンド:ブロックチェーン技術の活用によるサプライチェーンの透明性向上など、最新のテクノロジーの業務への活用
上記のような専門職ならではのノウハウを活用できます。
BPO導入により、マスター変更の対応など、単純ですが時間のかかる作業に自社のリソースを割く必要がなくなるため、社内の人材を中核業務に集中させることが可能です。
例えば、新しい取引先の開拓や、より有利な条件での契約締結など、会社の競争力を直接高める仕事に力を注げるようになります。
その結果、会社全体の生産性と競争力がアップし、より大きな成果を生み出せる可能性が高まります。
購買BPOは、企業の業種や規模に応じて柔軟に対応します。
この章では、購買BPOにおける具体的な対策について解説します。
BPO業者は、基本業務のフローや購買システムの操作方法だけでなく、企業独自の購買ルールや承認フローを盛り込んだマニュアルの作成が可能です。
例えば、システムへの発注情報入力方法や承認ルートの設定方法などを具体的に解説するマニュアルを作成できます。
また、現在の購買プロセスを分析したうえで、業務フローの改善設計やツール・ドキュメントの整備など、生産性向上につながるマニュアル作成も可能です。
BPO業者は、取引先情報・商品情報・価格情報などの購買に必要なマスタデータを収集・整理して、システムに登録します。
データの正確性を保ち、常に最新の状態に更新することで、スムーズな購買活動を支援します。
また、分析のための情報収集も可能です。
例えば、市場動向や価格変動などの情報を収集して市場動向の把握に役立てることができます。
BPO業者は、企業のニーズに合った購買システムの選定・システム運用・メンテナンスなどを行います。
システムの運用やメンテナンスの具体的な業務は多岐にわたります。
・システムアップデートの対応
・システム障害発生時の原因の追及
・システムの操作方法に関するトレーニング
・他の業務システムと購買システムを連携構築
専門知識のあるBPO業者に依頼した場合、迅速かつ的確な対応が期待できます。
BPO業者は、見積依頼、発注、検収、請求書処理といった一連の購買プロセスを代行します。
特定の品目ジャンルや購入金額レンジなど、ニーズに応じて一定領域の購買業務を担当します。
また、サプライヤー管理・・在庫管理・緊急時の代替調達などの対応も可能です。
煩雑な作業を一括して外注できるため、社内の購買担当者は戦略的な調達活動や新規サプライヤーの開拓など、より付加価値の高い業務に注力できるようになります。
BPO業者は、購買データを多角的に分析し、コスト削減の機会や改善点を可視化するためのデータ分析やレポート作成をします。
最終的にレポート結果に基づいてサプライヤーと価格交渉を行ったり、経営層や購買部門の意思決定のサポートしたりする場合もあります。
購買業務のBPO導入は多くのメリットがありますが、同時にいくつかの注意点も考慮する必要があります。
この章では、主要な注意点について詳しくご紹介します。
購買業務では、取引先情報や価格情報など、機密情報が多く扱われるため、情報セキュリティについては細心の注意を払う必要があります。
具体的に想定されるリスクとその対策は以下のとおりです。
・情報漏えい:秘密保持契約の締結・ISOなどの情報セキュリティ対策基準の確認
・不正アクセス・アクセス権限の厳格な管理やセキュリティシステムの導入
セキュリティリスクは、甚大な損失や社会的な信用の失墜にもつながりかねないため、契約前の体制の確認など慎重な対応が求められます。
BPO導入することにより、自社に専門知識をもった人材を育成する機会を奪う可能性があります。
自社人材の育成を妨げないためには、BPO業者との連携を通じて自社の人材育成につなげる仕組み作りが必要です。
・定期的な情報共有:定例会議や報告会の実施など
・人材交流:社員をBPO業者に派遣したり、BPO業者から講師を招いて研修を実施したりするなど
・一部業務の社内実施:戦略的な購買業務などの専門性の高い業務を自社スタッフが対応
スタッフ育成を意識して、短期的な視点だけでなく長期的視野をもつように意識しましょう。
BPO導入の効果を最大化するためには、具体的なKPIを設定し、定期的に効果測定を行う必要があります。
KPI設定は定量的な指標と定性的な指標の両方が必要です。
定量的な指標:コスト削減額、処理時間短縮率、エラー率など
定性的な指標:業務品質向上、従業員満足度向上など
KPIは、月次・四半期ごとなど、項目に応じて定期的にモニタリングを実施し、目標達成度合いを確認しましょう。
KPI設定を行うことで、BPO導入のリスクを最小限に抑え、最大限の効果を引き出すことができるでしょう。
実際に導入する際は綿密に計画を立て、段階的に進める必要があります。
この章では、BPO導入ステップを説明します。
BPO導入の際には、目的と目標を明確化します。
・現状分析:現在の購買業務の課題や問題点の洗い出し・BPO導入によって解決したいこと(購買担当者の業務負担軽減など)の明確化
・目標設定:BPO導入によって達成したい目標を具体的に(購買コスト10%削減など)を設定
・予算とスケジュール:BPO導入にかかる費用とスケジュールの設定
自社に最適なBPO業者を選定します。
選定のステップは、以下のとおりです。
・情報収集:複数のBPO業者を比較検討(専門性・実績・セキュリティ対策などを元に選定)
・RFP(提案依頼書作成):導入の背景・対象業務と期待する成果・予算・スケジュールなど
・提案評価:BPO業者からの提案を評価して最適な業者を選定
選定のポイントは、単にコストだけでなく、業務の質・柔軟・技術力・文化的適合性・セキュリティ対策への対応なども考慮することです。
選定したBPO業者と契約を締結します。
契約締結にあたって、重要なポイントは、契約内容の確認とSLAです。
・詳細な業務範囲の確定:アウトソーシングする業務の詳細を明確化
・SLA(Service Level Agreement)の策定:サービスレベルに関する同意書。主な記載項目(サービス提供時間・障害発生時の対応・レポート出力頻度・ペナルティ規制)
契約内容は法務部門や専門家のチェックを受け、両者にとって公平で持続可能な内容であることを確認する方が後々のトラブルを避けることができます。
BPO業者に業務を移管します。
引き継ぎのステップは以下のとおりです。
・移行計画の作成:業務移管のスケジュール・担当者・必要な資料などを明確にした移行計画を作成
・業務引き継ぎ:既存の業務プロセスやノウハウをBPO業者に引き継ぎ
・システム連携:必要に応じて、自社のシステムとBPO業者のシステムを連携
・テスト運用:本格的な業務移管前に、テスト運用
BPO導入後にも、継続的な運用と改善が必須です。
具体的には、設定したKPIに基づいた定期的なモニタリング・定期的な会議などによるコミュニケーション維持・モニタリング結果をふまえた業務プロセスやサービス内容の改善などです。
BPOを導入したのちにこれらの改善を繰り返すことにより、よりクオリティの高いBPOへと改善が見込めます。
導入する際には押さえておくべきポイントがあります。効果的にBPO導入を行い、その利点を十分に活かすためには、次のポイントをチェックしてください。
BPO導入の基盤となるのが、明確な契約内容です。契約時には以下の点を詳細に確認し、文書化しましょう。
将来的なトラブルを避けるため、契約書は法務部門や専門家のチェックを受けておくと確実です。
チェックポイント |
具体的な確認内容 |
サービス範囲 |
委託する業務の具体的な内容と範囲 |
品質基準 |
期待されるサービスの質的水準(SLA) |
価格 |
サービスの対価と支払い条件 |
納期 |
各業務の完了期限や定期的な報告のタイミング |
責任の所在 |
問題発生時の対応や責任の範囲 |
業務委託に伴う情報漏洩は、BPO導入時の最大のリスクの1つです。
BPO業者のセキュリティ体制の確認(ISO27001などの認証取得状況)や、データの取り扱い・保管方法、アクセス権限の設定と管理方法を確認しましょう。
また、契約書には秘密保持条項を盛り込み、違反時のペナルティも明記するのが賢明です。
BPOの成否は、適切な業者選定にかかっているといっても過言ではありません。
BPO業者を見極める際には、以下の項目を見極めましょう。
・質に関する項目:技術力・専門性・ニーズの理解度・柔軟な対応力
・実績に関する項目:自社の業界における実績の有無やその内容・評判
・企業の風土に関する項目:取引先としての雰囲気や風土
・信頼性に関する項目:企業としての安心感・セキュリティ面
BPO業者を選定する際には、複数の候補を比較して、Webサイトやカタログなどの情報だけでなく、打ち合わせ時の対応なども含めて確認しましょう。
可能であれば、最初は小規模なプロジェクトでスタートすると、リスクを最小限に抑えられます。
BPO導入において、円滑なコミュニケーションは必要不可欠です。
コミュニケーションの円滑化のためには、打ち合わせ時のやり取りのスムーズさに加えて、以下の内容を確認しておきましょう。
・報告体制:定期的なミーティングの報告頻度・方法・報告内容
・連絡手段:日常的な連絡手段や緊急時の連絡体制
・担当者間の連携:BPO業者側と自社側の役割分担の明確化とそれぞれの連携の方法
これらのポイントをふまえて、BPO業者との間で円滑なコミュニケーション体制を構築することで、業務委託後にスムーズに取引を進められます。
BPO導入は、ゴールではなくスタート地点です。
導入効果を最大化して、成果を得るためには、定期的な経過の管理と評価をして、改善を繰り返す必要があります。
具体的には、以下の3つのステップを設定すべきです。
・KPIの設定とモニタリング:コスト削減額・処理時間短縮率・エラー率などの定量的なKPIを設定。BPO業者からの定期的なレポートにより目標との差を判断
・定例会議の実施:BPO業者との間で定例会議を実施して、進捗状況や課題を確認・共有
・評価と改善:BPO業者のパフォーマンスを評価して、改善点があればフィードバック
KPIや定例報告の内容、先に定めた評価の内容、提示された改善・対応策など、委託した業務が自社で行うより効率化しているか、コスト削減や生産性向上に寄与しているかを定期的にチェックしましょう。
購買業務のBPOは、コスト削減、業務効率化、専門知識の活用など、多くのメリットをもたらします。
しかし、情報セキュリティやノウハウ蓄積、KPI設定など、注意点も存在します。
導入を成功させるためには、綿密な計画と適切な業者選定、継続的な運用・改善が不可欠です。
自社の課題やニーズに合わせてBPOを効果的に活用し、競争力強化につなげましょう。
なお、(株)NTTデータイントラマートは、BPOサービスをご提供しているパートナーと一緒に「intra-mart Procurement Cloud」を活用したBPOの提案を行っています。
「intra-mart Procurement Cloud」はクラウド型の購買管理システムで、ソーシングから支払いまでをワンストップで管理できるシステムです。